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【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】
「食事と同じくらい、スイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々美味なるスイーツを探し求める甘いもの好きさんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。
〈第24回〉「ショコラティエ パレドオール 東京」
Bean to Bar(ビーントゥバー)とは、カカオ豆(Bean)を厳選し、仕入れから、焙煎、粉砕、成形、包装までの板チョコレート(Bar)を作る全工程を、一つのメーカー・工房が一貫して行い、大量生産とは異なる、カカオ豆の産地や品種の個性を最大限に引き出した、独自のクラフトチョコレートを提供する製造スタイルのこと。「ショコラティエ パレドオール」は、国内でビーントゥバーを確立した先駆け的存在であり、現在でも理想のショコラを探求し続けるショコラティエ。そんな同ブランドの中核をなす店舗のひとつである東京店で味わうことができる注目の商品を3つ紹介しよう。
【ご褒美スイーツその①】バレンタイン時期だけの特別なボックス「コフレ レザムール」

こちらの商品は、2026年1月23日〜2月14日の期間限定販売となるバレンタインの特別商品(ほかに5個入り、15個入りのボックスがある)。
バレンタインにふさわしい、ハートの「オレンジキャラメル」、甘酸っぱい「あまおうスペシャル」「フランボワ」のほか、フレーバーのペアリングが楽しめる「カフェラテ」、ナッツとチョコレートの相性や食感を楽しめる「ノワ」「プラリーヌ」「ココナッツジャンドゥジャ」など、お店の代表的なショコラを一通り味わえるラインアップとなっている。

下段:ピスタ―シュ、ココナッツジャンドゥジャ、フランボワ、あまおうスペシャル、プラリーヌ
なかでも、心して味わってほしいのは、ハート形のショコラの両脇を固める、雫形の「メランジュミルク」と「メランジュビター」の2つだ。こちらのショコラは、シェフが20年以上追求し続け、ようやく辿り着いたオリジナルの「ハウスブレンド」、すなわち究極のカカオのブレンド比率によるチョコレートで作られているからだ。

現在お店では15種類以上のカカオ豆を使用し、1種の豆から1種のクーベルチュールチョコレートを作る。1種類のカカオ豆だけでは思った味わいを出すのは難しいので、絵の具のように、さまざまな地域や品種のカカオを調合して、ほかのお店にはないオリジナリティー溢れる独自の味わいや香りのチョコレートを創造していく。「ハウスブレンド」のチョコレートは、無限とも思われる組み合わせの中から長年かけて生み出され選び抜かれた、お店の一つの到達点を示すチョコレートとも言える。じっくりと味わいたい。

【ご褒美スイーツその②】完璧なチョコレートによって作られたパフェ「パルフェ ショコラ パフェ」

トップに2枚の木の葉のようにトッピングされているのが「チュイル」だ。フランス語で「瓦」の意味で、一般的には湾曲させた薄焼きクッキーのようなものを指す。
ここでは、奥が「カカオチュイル」で、しっとりとした食感に奥深い苦みとコクが感じられる。手前が「カカオあめのチュイル」で、香ばしくカリカリとした食感。この2つの土台となっているのが、チョコレートソースがかかった「スーパーハイカカオのチョコレートソルベ」。濃厚な味わいかと思いきや、カカオをしっかりと感じさせながらも、あっさりと瑞々しく爽やかな味わい。そのソルベの下には生地が据えられ、全体がビターチョコレートのカップに入れられている。
中央部分は、濃厚でまったりとした味わいの「ビターチョコレートのクリーム」。その周りには、キャラメルのような味わいとコクを感じさせる「ミルクチョコレートのソルベ」、甘さ控えめの大人の味わいの「カカオ風味のタルト生地」、チョコレートを染み込ませたしっとりとしたスポンジのような「チョコレート生地」。思う存分、カカオの味わいの海に身を任せるような気分にさせてくれる。

さらに食べ進むと、なんとクリームの底には、ビターチョコレートの「床」が!? スプーンで薄いチョコレートを割ると、下から純白の「ホワイトチョコレートのソルベ」と「ミルクチョコレートのクリーム」の層が出現する。これが、なんとも瑞々しくフルーティー。まるで杏仁豆腐を食べているような滑らかさと爽やかさ、そしてコクが感じられる。メイン部分の濃厚でまったりとした味わいからの、見事な変容だ。
ここで、最上部もビターチョコのカップに入っていたことを思い出す。パフェというのは、ある意味食べる順番が決められた稀有なスイーツだ。ほとんどの人は、上から順番に食べ進むだろう。しかし、食べ進むうちに、上部の素材が下の素材と混じり合ってゆき、それぞれの素材の味わいが分かりにくくなっていくのも事実。もちろん、ベテランの作り手は、その混じり合いも計算しながら構成を考えるのだが、だんだんと味わいが濃く、単一化していくのは否めない。
これらの問題を解決するために、最上部をチョコレートのカップに入れ、次のまとまりの下にはチョコレートの「床」が設置されていたのだ。2層目で濃厚でまったりとした味わいを存分に堪能させた後に、3層目では一気に軽やかで爽やかな味わいに切り替える。たった1枚のチョコレートの仕切りで、これを実現したシェフの手腕は見事というほかない。
味わいの変化は、さらに続く。もう一枚の「床」の下には「ベリーのソルベ」と「フレッシュのいちご」が。底に行き着く頃には、ベリーのソルベが少し溶けて、いちごをベリーソースでマリネしたような味わいに。
1層目から4層目まで、味わいに変化をつけた、至高のパフェであった。
【ご褒美スイーツその③】濃厚なガナッシュとヘーゼルナッツの風味が渾然一体となったケーキ「アルチョコラータ」

シェフがイタリアを訪れた際にインスピレーションを受けて作った、 ヘーゼルナッツの風味豊かな濃厚ガナッシュケーキ。オリジナルのチョコレート生地にお店独自のブレンドの濃厚で奥深い味わいのガナッシュを重ねたものを合わせた6層のプチガトーだ。
上部のデコレーションのチョコレートも、よく見ると両端の2本はミルクチョコレート、中央の1本とリーフ状のチョコレートはビターと、味わいに変化が付けられている。

供されてすぐはショーケースで冷えた状態でやや固いので、しばらく待って常温に戻ってから味わうのがベストな食べ方。舌の上で溶かすように食べると、ガナッシュの複雑で繊細な味わいが広がっていき、カカオの華やかな香りが鼻から抜けていく。軟らかくなったガナッシュにカリッとしたヘーゼルナッツが食感にアクセントを添える。
途中、生地をお皿のソースの上に滑らせて食すると、ベリーの甘酸っぱい味わいが加わり、より一層華やかな味わいに。飲み物は、ブラックコーヒーを合わせるとシャープでシックな味わいに。アッサムのミルクティーを合わせると穏やかで優雅な味わいになる。こちらでは、紅茶はポットで供されて、ミルクも合わせるとたっぷりとした量になるので、友達同士でゆったりとアフタヌーンティーを楽しむのもおすすめ。
理想のショコラを探求し続けるBean to Barのショコラティエ
「ショコラティエ パレドオール」を率いるのは、三枝俊介シェフ。「ホテルプラザ」にて洋菓子界の重鎮、故・安井寿一氏に師事し、大阪・吹田に自身のパティスリーもオープンした一流のパティシエである。そんな三枝シェフにとっての大きな転機は1996年。仏リヨンの名店「ベルナシオン」を訪れた際、カカオ豆から一貫製造する「ビーントゥバー」の圧倒的な香りと哲学に衝撃を受けたことだった。

帰国後、その感動を形にすべく2004年にパティシエからショコラティエへ転向し、同店をオープン。店名とスペシャリテには、師と仰ぐモーリス・ベルナシオン氏への敬意と、ショコラティエとして生きて行くという自らの決意を込めて、氏のスペシャリテである「パレドオール(金の円盤)」の名を冠した。

当初は既存のチョコレート(クーベルチュール)を使用していたが、理想の味を追求するため、2014年には清里に自社工房を設立。特注ロースターを導入し、カカオ豆の選別から焙煎までを自ら手掛ける本格的なビーントゥバーへの挑戦をスタートさせた。

試行錯誤を重ねること20年。2024年には、ブランドの到達点のひとつとも言えるハウスブレンド「レッセンス デュ カカオ メランジュ (ビター・ビターミルク・ハイミルク)」を遂に完成させる。

「チョコレートには国境がなく、一生をかける価値があります」と語る三枝シェフ。カカオの可能性を信じるその挑戦は、今日も続いている。
【バレンタイン期間の営業について】2026年2月12〜13日は、ケーキの種類がアルチョコラータ、マルジョレーヌ、シシリアンの3種限定。また、サロン営業は16時30分LO、17時クローズ。
※価格はすべて税込


