音をあげて目の前で揚げられる天ぷらは熱々! 調理の様子を眺めるのも楽しみの一つ
天ぷら店の楽しみの一つは、カウンター内での調理の様子を感じられること。この店でも、カウンターのほぼ真ん中に天ぷら鍋が置かれ、料理人が食材を鍋に入れる様子、揚がり加減を見ながら取り出す様子を眺められる。
コットンシードから抽出する綿実油100%で揚げる天ぷらは、さらっとして油っぽさがない。氷水に冷たい卵と冷凍保存した小麦粉を合わせ、空気を入れるようにしながらサックリ混ぜた衣もポイント。食材をくぐらせる程度に衣をつけ、カラッと揚げる。衣をつけたししゃもを鍋に入れると、じゅわ~っと音がして、泡がパチパチと上がってくる。しばらくすると、かぐわしい香りがただよい、それだけでうれしくなる。
揚げたて熱々の天ぷらが目の前の皿に。「子持ちししゃも」は、プチッとはじけるような卵の食感とほの苦い味わい。思わず「もう一尾」と言いたくなる。お皿に添えられた「きゅうりの塩もみ」がまたおいしい。爽やかな青みが、天ぷらを進ませる呼び水になる。
女将のもてなしと楽しい会話もこの店が人を呼ぶ理由
麗しい和服姿で客をもてなす女将に惹かれ通う客も多い。「どこから来はったんですか」「白身魚を紫蘇で巻いてとか、レンコンを一切れだけ揚げてとか、遠慮なく言うてくださいね」と、はんなりした京ことばで話しかけられると、ついついもう一杯と酒が進む。
〆は、かき揚げの天丼か天茶漬けで!
基本コースの〆に出される「かき揚げ」は、そのまま天然塩や天つゆをつけて食べるのもいいし、天丼や天茶漬けにするのもいい。サクッとかみしめると桜エビや野菜の持ち味が、じんわりとしみだしてくる。天丼にすればボリューミーに、天茶漬けにすれば油を流してくれる一品にと、こちらも自分好みにリクエストできるからうれしい。
白ご飯の上にかき揚げと卵の天ぷらをのせて出される「天丼」。濃い味わいの卵の黄身が天ぷらにからまって、濃厚でいてまろやか。「天丼」として半分ほど味わった後、お茶をかけてお茶漬けにする1品で2度おいしい食べ方も。
食事の後は「バウムクーヘンの天ぷら」と温かいお茶でほっこり。食べたかった天ぷらを満喫した充実感が押し寄せる。お酒は、ワインや日本酒はもちろんのこと、シェリーハイボールやシャンパンなども。シェリーハイボールと天ぷらの意外な相性の良さにも驚かされる。
おいしい天ぷらを味わった後は、しだれ桜と柳の並木が美しい白川沿いや、八坂神社までの参道など祇園の街を散策。京都らしい一夜を過ごせる。