昼飲みもOK! シーンに合わせてソムリエが厳選

カフェ&バーカウンター

11時半から24時までという長い営業時間に、訪れる人も目的もさまざま。「オープン当初は何の店かわからずに入るのを躊躇される人が多かったですが、徐々にブランチやカフェ使い、昼飲み、商品を購入されたりと自由に楽しんでいただけるようになりました」と大久保さん。予約困難店「malca」のニ回転目を狙ってウェイティングバーとして利用している人も多いそう。

写真左からオーストラリア「Sucette2018」、フランス「Domaine Pierre Damoy Gevrey-Chambertin Clos Tamisot 1993」、日本余市「セレーヌ2022」、グラスワインは1,400円〜

コンセプトどおり、“何でもある”ではなく、“これがある”という意図を感じます。例えばワイン。こちらでは料理に合わせるというより、ワインそのものの味わいを重視してフランス、ニューワールド、日本を中心にセレクトしているそう。ウェイティング、食後などシーンに合うよう常時、日替わりの泡、赤白はそれぞれ3〜4種ずつ用意しています。

写真左から「Dupont calvados 1972」「Jean Fillioux No.1」「DUJAC Marc de Bourgogne Hors D’age」

ハードリカーは希少性の高いものをそろえています。カルヴァドスは1972年、コニャックは1955〜60年の蒸留というもの。特に写真右のマールは生産者であるドメーヌ・デュジャックがマールの製造を中止しているため、こちらでもこの1本のみ! ゆっくりと古酒の香りの余韻に浸りたい。

「常陸野ネストビールmalcaラガー」

オリジナルラベルのラガービールは「常陸野ネストビール」をはじめクラフトビールや、日本酒、ウイスキーなどを醸造・蒸留する茨城県の老舗蔵元「木内酒造」とのコラボ商品。麦芽の芳醇なうまみとアロマホップの爽やかな香りを感じる淡色ビールは喉越しのキレがたまりません。

「日の丸ウイスキーSvoltaオリジナルブレンドシングルモルトウイスキー」

こちらは系列店の「焼肉もちお」開業時、ハイボール向けに「木内酒造」と共同開発した、バーボンカスク93%とシェリーカスク7%をブレンドしたオリジナルのウイスキーです。大きくて四角い氷を入れたグラスにソーダを注ぎ、ゆっくりとウイスキーを加えます。シュワシュワとした発泡の爽快感を損なわないよう、ステアするのはほんの1、2回。樽熟成させたウイスキーの日々進化する味を楽しめます。

「ちょっと軽くつまみたい」に最適なフードメニュー

「生ハム盛り合わせ」1,800円

それでは大久保さんのおすすめをいくつかご紹介しましょう。まずはワインに合わせて「シャルキュトリー盛り合わせ」を。アメリカ・カリフォルニア州「Volpi社」の18カ月熟成プロシュートはパルマ製法でじっくり熟成した、ふんわりとやわらかく、クリアな味わい。一方のコッパは前述した「木内酒造」が経営する「常陸野ハム BARREL SMOKE」で加工したもの。「日の丸ウイスキー」の製造過程で出る麦芽粕を飼料で育った「常陸野ポーク」の芳醇な香りと絶妙な塩加減がワインによく合います。

「バスクチーズケーキ」800円

粉類を最小限に抑えて高温で焼きあげたバスクチーズケーキは、マルサラ酒で風味付けしたシャンティと淡路島の海水で作った「天日塩」を添えています。「malca」でも使用しているこの塩は、塩職人の山下さんが海水を手で汲み取り、太陽の光と自然風だけで蒸発させて作るため、完全オーダーメイドで7,000種類以上の味を作れるそうで、これは料理のアクセントとなるような粒の大きさと、丸みを持たせた味わいにカスタマイズしています。細かい粒子を固めたような塩は噛むとホロッとほどけます。とろんとしたテクスチャーでコクと風味豊かなチーズケーキが一転、お酒に合うデザートに!

「パテドカンパーニュ」1,200円

「こんなパテドカンパーニュがあるなんて!」と思わず叫びそうになったほど想像を絶するおいしさの秘密は、梅酒漬けの梅で作ったジャムのほんのりした甘み。でもそれだけじゃありません。「常陸野ポーク」のクセのない味わいと肉本来の持つ力強さ、そして“これぞパテカン”のねっとり感が梅の甘みと融合し、今までにない味に仕上がっています。

香川県「山清」の粒マスタード「Moutarde à l’ancienne」

そして忘れてはならないのがこの粒マスタード。カナダ産の辛子種子を醸造酢漬けにしたなんとも優しい酸味が加わると、どんなにおいしいものに食べ慣れた人の舌をも驚かすことでしょう。「パテカンは自家製にしようかと思ったのですが、『常陸野ハム BARREL SMOKE』のパテを試食したらあまりにおいしかったので作る必要がなくなった」と「malca」のシェフ、北野 司さんを唸らせただけあって必食です。

「野菜のマリネ」800円

こちらは形よりもおいしさを重視し、年間350品目の野菜を育てることに取り組んでいる福島県郡山の「鈴木農場」の野菜を使ったマリネです。「野菜自体がおいしいので味付けは本来の味わいに寄り添うようにしています」と酸味は穏やか。このサイズ感ながらニンジンはシャキシャキ、カブは表面だけ歯ごたえを残し中はとろんとやわらかく、リーキはとろとろと、それぞれの特性を生かした食感に仕上げているのはさすが。

ここに来たらいいことが起きるかも?と感じさせる場所

カウンターのデザインも店から外へ繋がるというイメージ

この店にあるものは“絆”で繋がっています。セレクトショップのように店に合わせたわけではなく、“お付き合い”があるからここに存在するのです。淡路島出身の北野シェフが地元で出会った天日塩や伝統的な瓦作り製法で作った食器、「malca」オープン時から使用している吹きガラスのグラスや花器、アートワークを依頼している中野氏の作品など、“きっかけはテーブルから”で繋がった人や物をここから発信していきたいと話します。

クラフト感を出すためandは手書き体に

店名を「and Svolta」にしたのは理由があります。社名でもある「Svolta」はイタリア語で好転するきっかけやターニングポイントという意味。だからandの前に存在する人や物の日々の生活や気分が上向きになって欲しいという願いを込めています。ここに来れば何か素敵なことが起こる、そう予感させる店が誕生しました。

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:松園多聞