控えめな看板が目印

東京の東エリアに待望の本場仕込みのイタリアンがオープンしました。飲食店がひしめくエリアから外れた場所にもかかわらず19時には満席になる盛況ぶり。人気の秘密は本場よりおいしいと言われるマンマの味。予約が取れなくなるのも時間の問題です!

イタリアよりおいしい本場の味を目指す

シンプルで大人っぽい佇まい

今年4月15日にオープンした「オステリア トラマンダーレ」は人形町と馬喰横山それぞれの駅から徒歩5分ほどですが辺りはマンションやビルに囲まれ、夜になるとお店の灯りが目立つほど落ち着いた雰囲気の場所にあります。オープンしてからまだ日が浅いというのに19時ともなれば満席になる盛況ぶり。

イタリアの食堂のようなcozyな店内

「道路に面した壁は両側とも足元まで大きなガラスになっているので、中の様子がわかり初めての方でも入りやすいのかもしれません。この辺りに居住されているのは年齢層も少し高めで心から食を楽しむ人たちが多いようです」と話すのはオーナーソムリエの石丸和範さん。

オーナーソムリエの石丸和範さんとシェフの二木翔子さん夫妻

なにより石丸さんとシェフの二木翔子さん夫妻が営むこのお店にはイタリアにある食堂のような温かみのある空気感にあふれています。この界隈に本格的なイタリアンが少ないことも起因するかもしれませんが、そんなアットホームな雰囲気が外まで伝わり、つい立ち寄ってしまうのでしょう。

イタリアのマンマの味が大好き!という二木シェフ

二木さんの料理人としての人生は17歳の時、アルバイトで入った洋食店から始まります。高校を卒業して札幌のリストランテに入店し、2年後には渡伊。5年間でピエモンテ、アルト・アディジェなど7カ所のイタリア料理店で修業しました。いちばん長かったのはプーリア州だそうです。帰国後は恵比寿「イル・ボッカローネ」など数軒を経て石丸さんと独立。「オステリア トラマンダーレ」をオープンしました。

イタリア料理に詳しくなくてもわかりやすいメニュー

「イタリア料理は郷土料理の集合体なのです。南と北では食材も味も調味料も違います」と言う二木さんが作るのはまさにイタリアの郷土料理。日本にいるからといって日本人向けにはしない、でも本場よりおいしいと思える味を目指しています。

ホッとする「家庭料理」をプロの技術で仕上げる

「イタリアではリストランテで働いていましたが、洗練されたコース料理より、おばあちゃんが作る野菜がくたくたになったパスタや魚介やホルモンの煮込みを出す日常使いのトラットリアやオステリアの方がイタリアらしい。自分で作るならそういう食材が新鮮でおいしい素朴な料理だなと。イタリア料理の魅力は郷土料理の豊かさなのです」

食材もできる限りイタリアから仕入れています

だから二木さんはイタリア人が食べているマンマの味を再現しています。食材それぞれのおいしい時期にみあった郷土料理を提供するそうで、今はプーリア料理がメインですが、夏の米茄子が入ってきたらシチリア料理に、ジビエやキノコがおいしくなる秋にはトスカーナ料理に変えるとのこと。

調理はすべて一人で担当

「ストリートフードもいいですよ。薄切りにしたレバーを網脂を巻いて焼いたり、ひよこ豆のペーストを揚げたり。『ランプレドット(ギアラの塩煮)』を『ロゼッタ(白いパン)』に挟んで汁ギタギタで食べたのですが、忘れられない味ですね。今、ウチでも(ランプレドットは)出しています」と言うので、その「ランプレドット」をオーダーしました。

ずっと食べていたくなる“二木マンマの味”

「ランプレドット(ギアラの塩煮 サルサヴェルデぞえ」(1,540円)

こちらが新鮮なギアラを2時間ほど煮込んだ「ランプレドット」です。「内臓は大正11年創業の三ノ輪『三河屋』さんから仕入れているのですが、本当にきれいなのでただ煮込んだだけです」と言いますが、塩の加減、やわらかさは群を抜いています。

自家製の「サルサヴェルデ」

そして驚くべきは添えてある「サルサヴェルデ」との最強のマッチング。たっぷりつけて頬張ればただ素直に「おいしい」と言える素朴なイタリアの味を楽しめます。

「トリッパのトマト煮込み」(1,540円)

こちらも「三河屋」のトリッパを3時間煮込んでいます。ひと口食べた瞬間に「すごい!」と思わせるのがこのプリッとした歯ごたえ。やわらかいのに歯切れがよく、弾力もある。この食感を引き出せるとはなんとテクニシャンなのでしょう!

他のお店とはひと味もふた味も違うおいしさ!

そのトリッパに絡めたトマトソースの優しい味わいが口の中で穏やかにじんわりと広がったかと思うと最後に胡椒がピリッと刺激を残します。この絶妙な匙加減、お見事です。

自家製の「パーネ ディ マテーラ」(写真奥)と「タラーリ」(写真手前)

「もしよかったらパンもいかがですか」と石丸さん。「パーネ ディ マテーラ」は南イタリアバジリカータ州「マテーラ」の形が独特の名物パン。こちらで育てた天然酵母で手作りしています。表面はカリカリ、中はしっとりもちもちの馴染みのある食感。一方のフェンネルシードを入れた「タラーリ」はベーグルのように下茹でしてから焼いた「グリッシーニ」のようにサクサクしたおつまみパンです。あまりにおいしくて購入したいとお願いしましたが、少量しか作れないとのことで購入できず。二木さん、パン作りの腕前もすごい!