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食通が見いだした今月の新店
新型コロナウイルスの流行により苦戦を強いられていた飲食店は、少しずつ元の活気を取り戻し始めています。私たちも我慢の連続から少し解放され、おいしいものを食べて明日への活力に、そして、飲食店をより盛り上げて行きたいですね。
そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。
今回は、フードパブリシストの高橋綾子さんにお答えいただきます。
教えてくれる人
高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
今月のベストワン
Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください
A. 「La Sasion 筥崎宮迎賓館」です
日本三大八幡である福岡県の「筥崎宮」内にあるフレンチレストランです。35周年を機に6月5日にリブランディングオープンしました。同じく宮の施設である「花庭園」の中で目の前が四季折々の美しい石庭というのは同じですが、ディナータイムにはその石庭が7色にライトアップ! 幻想的な世界が広がります。劇的な変化を遂げたのはレストランの料理。以前は王道フレンチでしたが、リブランディングで九州の食材を使用し、見目麗しく、でも何を食べているかしっかりと伝わってくる“モダンガストロノミー・モダンジャパニーズフレンチ”にチェンジしました。モダンガストロノミーといえどもフランス料理なのでソースも絶品。そこが、シェフの坂山央樹さんのセンスと言えるでしょう。
坂山シェフは36歳。「ホテル日航福岡」やフランスで修業された経験と技術が今まさに花開いた感じです。その坂山シェフの料理をさらにグレードアップするのが、ソムリエと唎酒師の資格を持ち西麻布「GOBLIN」などをプロデュース、ワインスクール「ASUKA L’école du Vin」を主催し、今回こちらのワインアドバイザーに就任された杉山明日香さんセレクトのドリンクです。ワインの力、恐るべし! また食器やカトラリーも一新。有田焼の美しい器が料理を彩ります。福岡空港からタクシーで20分ほどかかりますが、訪れる価値あり!です。
Q. そのお店でおすすめしたいメニューを教えてください。また、おすすめの理由を教えてください
A. 「オマール海老 久保田農園ビーツ」(16,500円のコースに含む)です
目の前に料理を置かれた瞬間、控えめだけど印象的な赤い色に目が釘付けになってしまったのがコースの魚料理として登場した「オマール海老 久保田農園ビーツ」です。カナダ産の活オマール海老を提供する直前で捌きソテーしているので、食感がプリップリ。そのオマール海老の頭と規格外などで流通できなかった玄海の雑魚を使ったアメリケーヌソースが素晴らしい。濃厚なのにくどさがなく舌触りもなめらか。オマールにはもちろんのこと、添えたビーツやエシャロットのコンフィにも寄り添う味わいには感服しました。さすが王道フレンチで研鑽を積んだ坂山さん、絶妙な塩梅がわかっていらっしゃる。 福岡県うきは市の棚田米をスープ仕立てのソースでフランス料理に昇華したスペシャリテの米料理など、どの皿にも王道フレンチの中に斬新なアイデアが潜んでいて最初から最後まで楽しませてくれます。