街中を外れた住宅街に穴場あり!!
京都で上質な和食、というとややハードルが高い印象があるかもしれない。しかし街中を外れた住宅街に穴場あり、というのも京都の真実だ。こちら「日本料理こもりく」は2021年2月にオープン。「とびきり旨い」「ゆったり過ごせる」「リーズナブル」の3拍子が揃う和食店だ。
阪急京都線「西院駅」から南西方向に徒歩13分。五条通にある「イオンモール京都五条」の北裏側、といった方が分かりやすいだろうか。静かな小路に面して和庭のアプローチがあり、奥ののれんをくぐって中に入る。
店内はカウンター6席、テーブル10席のこぢんまりした空間。どこか懐かしい雰囲気なのは、古民家で使われていた木材をあちらこちらに配置しているから。カウンター、テーブル、ベンチシートはサクラの古材。長年愛される、田舎の料理店のような温かみを感じることができる。「こもりく」は、漢字で書くと「隠国」。奈良発祥の言葉で「山々に囲まれた神聖な場所」という意味があるという。店名には「隠れ家空間で、神様からの恵みを楽しんでほしい」という思いが込められている。
丁寧仕立ての日本料理が20種以上詰まった「松花堂弁当」
昼のメニューは「季節の松花堂弁当」2,750円のみ。八寸・お造り・揚げ物・炊き合わせ、ご飯、漬物、椀物の構成で、旬のご馳走をあれこれといただける。訪問したのは、初夏の訪れを感じられるやや暑い日。夏のはしり、春のなごり、そして京都らしい素材をさまざまな手法で仕上げられており、どれから食べようかついつい目移りしてしまう。
八寸は、だし巻き、丸十(さつまいも)、トマトの蜜煮、そら豆と本まぐろの味噌和え、ヤングコーン、きゅうりとクラゲの胡麻酢和え。
お造りは鱧(ハモ)の落とし、本まぐろのホホ肉。京都の初夏〜秋を代表する食材といえば鱧。さまざまな調理法があるが、活きのいい鱧をさっと湯通しし、氷水で締めた「落とし」が京都での定番だ。本まぐろのホホ肉は、なかなか出会えない希少部位。濃厚な味わいとぷりっとした弾力を楽しめる。
揚げ物はアオリイカのゲソ、生麩(なまふ)2種類(ヨモギ・かぼちゃ)、山うど。生麩も京都ならではの食材だが、じつは一般的なスーパーマーケットではほぼお目にかかれない。じんわりとした滋味と柔らかくもっちりした食感に、カリッとした衣がアクセントとなっている。
炊き合わせは、鱧のひろうす、椎茸、フキ、小芋。それぞれ種類が異なるおだしで炊かれており、和食の奥深さを舌で知ることができるだろう。
椀物は、吉野葛で作る枝豆豆腐とイワシのつみれ。定番はすまし汁だが、冬はイノシシ汁が登場することもあるのだとか。