削ぎ落とすことで、わかりやすく。食材のおいしさを際立たせる料理

大将の笠波耕平さん。

nami.namiでは、必要のないことを削ぎ落とすことで、味わいを際立たせている。通常はメニューありきで食材を仕入れるが、ここでは笠波氏が前職の和食店で知り合った卸業者が薦める食材を仕入れ、それをもとにその日のメニューを組み立てる。決まった料理を出さないことで食材を無駄にせず、個性を存分に活かすことができる。

笠波氏はコースメニューにこだわりはないが、いい食材を使うことは譲らない。中でも大切にしているのは、新鮮な有機野菜だ。実は笠波氏は、ずっと野菜が嫌いだったという。ところが前職で有機野菜のおいしさを知り、初めて野菜が好きになった。だからこそ、野菜にこだわる。

ここでは全国の農地を知る、野菜の卸業者選りすぐりの有機野菜が毎日店に届くので、中身を見てから食材の個性を最も引き出すメニューを組み立てる。もちろんランチに添えられるサラダも、日によって違う野菜が入っている。

「旬の野菜は次々と変わっていくので、うちではメニューもどんどん変わっていきます。ここでお出しする料理で、お客様に季節を感じてもらえたらうれしいですね」

自由になることで、和食の魅力を再発見

さりげない木の看板と、大きく取られたガラスの壁面が目印。

和食店では料理によって器を変えるが、nami.namiはカウンターに置かれた器にできたてを出し、客が好きな調味料で味わう天ぷらのようなスタイルを取っている。これは2人しかいない厨房で、最高のタイミングを逃さず料理を提供するためだ。

それゆえに客の手元にあるつけ台には、複数の調味料が並ぶ。その中にあるアーモンド山椒は、ランチのサラダにも使われているが、コースを頼んだ客から「これだけで売ってもらえないか」と頼まれるほどの好評ぶりだという。

夜のメニューは会席の構成をベースにしたコースに飲み放題がついて、1万円。このほかにデザート数種とランチのサンドイッチ5種がアラカルトで用意されている。ゆったりとした店内で、会計を気にせずに食事と会話に興じることができるうれしいメニューとなっている。店をオープンするにあたって笠波氏が意識したのは「わかりやすさ」だった。

うまい酒ほど沢山飲みたくなるが、飲んでしまえば会計が気になる。そうした客の悩みに応える解が、夜はコースのみというメニューだった。「1万円出せばお会計を気にせず、目の前の料理と酒を楽しめる。そんな新しい和食の店を作りたかったんです」と笠波氏は語る。

コースの前菜を盛り付ける個性的な皿は、ある陶芸家の作品。サンドイッチがのっている皿と同じシリーズのものだ。石と鉄を連想させるテイストは、笠波氏が目指す「新しい和食店」のコンセプトにぴったりだった。一枚一枚、色や質感が異なる器は、眺めているだけでも楽しい。

スタイリッシュなインテリアの中で味わう、自由な発想の和食。nami.namiには、伝統やしきたりといった枠から飛び出すことで、和食の芯にある魅力に再会するおもしろさがある。

※価格は税込。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:はたけあゆみ(grooo)
撮影:大鶴倫宣(grooo)