〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

大阪・都島駅からほど近い、知る人ぞ知るレストラン。見たこともない料理がモリモリのランチに「インドネシアっておいしい国だ!」と感動の嵐……!

教えてくれる人

猫田しげる

20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」「あまから手帖」「旅の手帖」(手帖好き?)などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。

なぜこんな住宅街に、バリ・インドネシア料理店が

知っているインドネシア料理を挙げてみよと言われたら、「ナシゴレン」「ミーゴレン」、頑張って「ソトアヤム」ぐらいしか出てきませんよね。日本で超メジャーとは言えないジャンルの異国料理ですが、その料理店がこんな住宅街にあるなんて、都島七不思議!(他の6つは分からんけど)

外観も家みたいです。住宅街ですが、飲食店などがぽつぽつあります

地下鉄都島駅から徒歩5分ほど、大通りから一歩入った小道に佇む「アマラバリ」。なかなかマニアックな立地ですが、この地で4年営業を続けているそうです。リゾートチックなのれんと傘がなかったら普通の民家のようですね。

小上がりが2卓のコンパクトな店内です

中もますます民家然としていて、はっきり言って自分ちの居間! だからこそ落ち着く雰囲気で好きです。

カウンターもあり、一人客でもここでしっぽり飲めそうです。バリ感ほぼ皆無(笑)。居酒屋の居抜き物件だったんだろうな~と微笑ましくなります。

でも店主は現地のホテルやレストランで腕を磨いた腕利きコック

よく見るとオリジナルTシャツですね! 店内でも販売しています

店主のイ・ワヤン・ワリアナさんは18年前にバリから日本へ。現地のホテルで料理の腕を磨き、チーフマネージャーを任されるまでに。さらに自らインドネシアレストランを立ち上げた経歴の持ち主です。

現地で日本人と結婚し、奥様の実家がある大阪へ移住。日本でも料理教室をしたり、国際交流パーティーで料理を振る舞ったりと調理関係は続けていたそう。オープンは2019年10月ですが、なぜ都島に?と聞きましたら「家賃が安いし自宅から近かったので!」とのこと。ズッコケそうになりましたが、「その分リーズナブルに料理を提供できるので、お客様に喜んできてもらえるかと」と、誠実な真意を語ってくれました。

料理のベースとなる2種のブンブー(調味料)は店主こだわりの自家製

店内は和風居酒屋ですが、料理はガチなインドネシア! イ・ワヤンさんのこだわりは、「化学調味料や冷凍食品は一切使わず、天然の食材でインドネシアの味を作り上げること」。調味料も全て手作りで、最初に見せてくれたのは2種の自家製調味料でした。

Bumbu=調味料、kuning=黄、Merah=赤のことだそう。勉強になります

インドネシアの料理はこの2種の調味料がベースとなるとのこと。黄色いのがBumbu kuning(ブンブークニン)で、タマネギ、ニンニク、ショウガ、ターメリックなどをフードプロセッサーで粉砕し、コリアンダー、クミン、ナツメグなどのハーブとスパイスを23~25種配合した調味料です。エビ味噌も入っているので物凄く旨みがあります。ちなみにインドネシアはショウガ大国でして「ガランガル」「クンチュール」など数種類を料理によって組み合わせて使います。

ブンブーメラ(左から2つ目)はトマト主体のため赤色に。こちらにもエビ味噌が入っています。

赤いのはBumbu Merah(ブンブーメラ)で、ブンブークニンよりはシンプルな材料で作られています。タマネギ、ニンニク、トマト、唐辛子などが主体となったチリソース的な調味料です。インドネシア料理に欠かせない、コクととろみを出す「キャンドルナッツ」もペースト状になって入っています。

右端にある赤いのはほぼ唐辛子で構成されたチリソースで、さぞかし激辛だろうと思いきや「インドネシアの辛くない唐辛子で作っているのでそれほどでもない」とのこと。

 

猫田さん

このほかに「サンバルマタ」というサルサソース的な調味料も作っています。手にしているのは鶏肉をサンバルマタで和えたもの。調味料で食材をちょっと和えるだけで立派な一品になるのです。

定番人気のナシゴレンはブンブーメラが味の決め手に!

ナシゴレンの「ナシ」は「ご飯」、「ゴレン」は「炒める、揚げる」の意。つまり炒飯ですね

ランチで人気ナンバーワンのナシゴレンから作っていただきました。いわゆるインドネシア風炒飯ですが、中華鍋にライスとネギを入れて、例のブンブーメラ、さらにオイスターソース、ケチャップ マニス(甘じょっぱいソース)、ケチャップアシン(インドネシア醤油)を投入して炒めます。この時点でもう日本の家庭のキッチンから生まれる味ではないことが想像できます。

ところで、2種の調味料がベースだと料理がどれも似通った味になるのでは?と心配になったのですが「それぞれ違ったハーブや調味料を加えるから全く違います!」とのことでした。

 

猫田さん

確かに、和食も味噌と醤油がベースになっていますが全部同じ味ってことないですもんね。ブンブーもそんな位置づけなんですね!

美しく仕上げたピカピカの目玉焼きをスルリと華麗にライスにオンして、完成。中華鍋で作る目玉焼きってどうしてこんなにキレイに焼き上がるのでしょう。

ナシゴレン840円。皿にもブンブーメラを添えてあるので、追いブンブーメラしましょう

ご飯は強火で熱されたブンブーメラが芳ばしく香り、パラッとしつつふんわり。レモングラスやガラムマサラといったハーブ&スパイスが幾層にもなって、エビ味噌の魚醤のようなコクも感じられます。

卵の黄身をとろ~りと崩して混ぜ混ぜしたり、エビ煎をパリパリ割ってご飯と一緒に食べたり。辛いのが好きな人はブンブーメラをMAX使いましょう。一皿で相当楽しめますね。

生レモングラスに巻いた鶏つくねをのせた、どこよりも本格的なナシチャンプルー

イ・ワヤンさん、網で何かを焼いていると思ったら「サテリリット」だそうです。サテ=鶏、リリット=ミンチ、つまり鶏つくねってことです。ここにいるとインドネシア語がどんどん上達する気がします。

サテリリットは、鶏ミンチにブンブークニン、ココナッツなどを混ぜて網の上でじっくり焼きます

現地では生のレモングラスに付けて焼くのが一般的ですが、日本では手に入らないので木の棒で代用しているお店も多いようです。しか~し、イ・ワヤンさんは徹底的に現地の味にこだわるので、生のレモングラスを取り寄せて使うとのこと。

「材料費が高くつきますが、フレッシュでないと香りがよくないからね~」とイ・ワヤンさん。冷凍ではない生レモングラスをタイやベトナムから仕入れています。つくね1本のためにこんなコストをかけるなんて、涙ぐましい……!

コンロではなく網で焼くのも香り良く仕上げるポイントなのだそうです

ブンブークニンもさまざまな料理に使えて、カレーのベースに入れたり鶏肉を煮たりと万能な調味料。家でもあれば便利ですよね。

 

猫田さん

って声に応えて、調味料は店内で販売しています。ブンブークニン100g 500円、ブンブーメラはスタンダード100g 500円で、激辛は100g 650円。帰りに買ってこ~。