〈福岡の麺料理〉
豚骨王国・九州の中でも、圧倒的に濃厚な“超高濃度スープ”。そして、ラーメンと同じく“濃すぎる”店主のキャラクター。自店のYouTubeチャンネルも絶好調で、今全国のラーメンファンから熱視線を浴びている福岡県八女市「あなたの心を鷲掴み」(愛称:アナワシ)。
2018年の開業より通い詰めるラーメンライターが、アナワシの知られざるエピソード、真の魅力について徹底解説します。
九州一のラーメンライターがレポート
上村敏行
1976年鹿児島市生まれ。J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務める。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介された。「九州の豚骨ラーメンこそ最強!」を掲げる「RAMEN WONK KYUSHU(ラーメンワンク九州)」主宰。https://rwk-j9.com
豚骨を愛し、豚骨に愛された男。アナワシ店主・三浦隆寛氏
九州の豚骨戦士、豚骨ラーメンを啜りまくっているライターの上村です。今回は、満を持して福岡県八女市「あなたの心を鷲掴み」が登場。ファンの間では“アナワシ”で通っている豚骨専門の超名店です。
昨今は、同店のYouTubeチャンネル「アナワシTV」も話題沸騰なので、あの突き抜けたラーメンを既に味わった人、噂を聞いた人も多いでしょう。私、福岡のラーメン店を長年取材していますが「アナワシ」と、そして飯塚市にある「来来」、特にこの2店が全国的にも注目が集まっているのを感じています。
前者は笑っちゃうほど濃い茶濁豚骨。後者は透明感の残る淡麗豚骨。同じ豚骨でも濃淡両極端。豚骨ラーメンの奥深さを感じさせてくれる両横綱はぜひとも体感するべきでしょう。
さて、アナワシ。私も2018年の開業からの大ファンですが、作り手もラーメンも、まぁ、ど変態です。超濃厚、こってり、どっしり、重厚、猛々しい……濃さを伝えるどんな言葉を積み重ねても、この店のスープを表現するにはもの足りません。
攻撃的豚骨の極み。
他の追随を許さない圧倒的な豚骨濃度の高さを誇っています(実際に濃度計で計ったこともあります)。そして、店主の三浦隆寛さんの熱すぎる人柄。「アナワシTV」でもお馴染みの、巨大なスコップを片手に立つ、いかにも頑固な職人っぽい風貌。そして、ラーメンへの絶対的な自信からくるビックマウスっぷり。
長年、三浦さんと親交を温めていますが、彼はあのチャンネルまんまのキャラクターですね。仕込みのため店に寝泊まりして、外の水道でシャワーを浴びていたり、興味をもった客を厨房に招き入れ釜を惜しみなく公開したりなど、動画で紹介されていることはすべて事実。まあ、とんでもないガス代に関しては都市伝説的にひとり歩きしていますが……。独特な炊き方ゆえ、圧倒的なガス量を使っているのは間違いありません(製法については後に紹介)。
彼をよく知る私が声を大にして言いたいのは、三浦隆寛という男は、とにかく実直にラーメンと向き合っている。そして、開業当初から変わらず「日本一のラーメン店になる!」と本気で叫び続けているということ。キャラクター的に「狂気の豚骨ラーメン職人」と言われることも多いですが、“豚骨を愛し、豚骨に愛された男”と、称するのが私はぴったりだと思っています。
来店前に3つのポイントを押さえて!
ここからアナワシのラーメンについて詳しく紹介していきます。実際食べに行く前に、下記3つのポイントを押さえておいてください。
1. 車が必要
アナワシは福岡県八女市の郊外にあり、車でないと行きにくい立地です。福岡市街からだと九州自動車道を経由し1時間ほど。店前に無料駐車場(12台)があります。
2. 15時までに入店
2021年11月現在、昼のみの営業で月曜休み(祝日の場合営業)。15時までに入店すれば食べられます。順番待ち覚悟で。
3. 「鷲掴みとんこつ」は心して挑むべし
濃度No.1のメニュー「鷲掴みとんこつ」800円はとんでもなく濃厚で、正直好き嫌いが分かれます。豚骨ラーメンを食べ慣れていない人は、まずはあっさり「とんこつ」700円を試してください(それでも濃いです)。