〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

葱料理 shin’s place|東京・三軒茶屋

葱ラバーのハートをキャッチするお店

カウンター8席のみの小さなお店です

三軒茶屋駅の飲食店がひしめくエリアとは真逆の、三宿方面に徒歩7分ほど向かった国道246号沿いにあり、決して利便性が良いとは言えない場所にあるにもかかわらず、なかなか席の確保ができない「葱料理 shin’s place」。その理由は“他にはない”から。

と、言うのもここはすべてに葱を使った、アイデア満載の葱料理専門店なのです。葱が主役となると焼鳥屋さんの葱焼きくらいしかパッと思い浮かばないものですが、よく考えてみると葱は焼く、蒸す、炒める、揚げる、煮る、生で薬味に使うなど、世界各国の料理に使われ、一年中おいしく食べられる超万能食材です。

イタリア料理、フランス料理、中国料理と多岐にわたって腕を磨いてきた松村さん

そこに着眼したオーナーシェフの松村慎太郎さんはすごい! 「ただ葱が大好きなだけです」と言うけれど、松村さんはイタリア料理から始まり、フランス料理、星付きの有名中国料理店と研鑽を積んできた実力派。だからメニューも多彩で、毎日通っても決して飽きさせないのです。

葱料理ってこんなにあるの? 和・洋・中、多彩なおいしさを味わう!

日によって変わる「葱前菜6点盛り合わせ」1,480円

その腕のほどは「葱前菜6点盛り合わせ」を食べれば分かります。本日は、手前から時計回りに葱のマリネをのせた「ホタルイカの紹興酒漬け」や白髪葱を巻いていただく「自家製 鴨の生ハム」に、「自家製 エシャレットキムチ」「白トリュフ香るネギのスパニッシュオムレツ」「わけぎのおひたし いくら醤油」「鶏と茄子の冷菜 葱と青山椒ソース」と、ジャンルを問わず葱を自由自在に操ります。

とりわけわけぎに使ったいくら醤油は、大量のいくらを潰して濾し、醤油と和えた超贅沢な調味料。本当にどの料理も松村さんの豊富な経験から生まれた、手の込んだ逸品です。

「長葱の黒焼きロメスコソース」1本500円

そんな主役の葱ですが、こちらで使用するのは松村さんが惚れ込んだと言う「江戸千住葱」。しっかりと辛味を持ちつつ、熱すると甘くとろける江戸時代から続く高品質種だそうです。その持ち味をいちばん感じられるのが、この看板メニューの「長葱の黒焼きロメスコソース」。

少しだけ塩をつけると甘みが増します

スペインのカタルーニャ地方の「カルソッツ」という郷土料理をヒントにしたこの料理は、葱を食べやすい大きさに切って炭火で真っ黒になるまで焼き、パプリカとアーモンドなどのナッツで作るロメスコソースをディップして食べます。

本当に食べられるのかと思うくらい焦げていますが、その中から現れる真っ白い葱のとろりとして甘みのあること!

まずは、ほんの少し塩を振って葱本来のおいしさを十分に味わい、次に特製ロメスコソースをつけるとアーモンドの香りに包まれ、ほんのりとした甘みが葱を別次元の世界へ誘います。これはすごいソースです! 動物性食材が入っていないのでヴィーガンの方にもオススメです。

「鴨コンフィ 葱のチミチュリサルサ 〜アルゼンチン風カモネギ〜」1,780円

こちらは「鴨コンフィ 葱のチミチュリサルサ 〜アルゼンチン風カモネギ〜」。付け合わせの葉タマネギは、タマネギが丸くなる前に収穫した季節限定の食材だそう。ご覧のとおり、鴨のモモを丸ごと1本使ったサービス満点のボリュームです。低温調理した鴨は信じられないくらいやわらかく、しっとりとしてうまみも十分。

葱のチミチュリサルサソースはヤミツキ間違いなし!

添えてあるのは葱のチミチュリサルサソース。チミチュリサルサソースとはアルゼンチンやペルーなどの南米でポピュラーな万能ソースで、本来はイタリアンパセリやハーブなどで作りますが、こちらはもちろん江戸千住葱を使います。

油っぽいかと思いきや、青唐辛子が効いたさっぱり味。これは鴨以外のお肉やお魚、野菜や豆腐、白飯にのせてもおいしいに違いない。このソースがあればこの量の鴨もペロリといけそうです!

気づけば完食! スルスル進む〆ごはん

絶品の「和風オムライス」1,400円

〆にオススメするのが“当店名物とろふわ”と書かれた「和風オムライス」。具材はキュウリ、サーモンのハラス、そしてたっぷりの葱と白飯。

フランス料理店での修業時代に賄いでよく作った「サーモンのハラスの混ぜご飯」をイメージおり、炊きたてのご飯に具材を混ぜたかのように、ふんわり&しっとりと仕上がっています。その上にとろりとした半熟のオムレツをのせて完成です。

気がつくとすぐに完食してしまいそうなほど後を引く味

意外にもあっさりとした味わいに、もうひと口、あとひと口とスプーンが止まらなくなるこのオムライス。「〆だから食べ疲れしないように和風味にしています。葱をたくさん入れるので清涼感もあります」と松村さん。葱と相性の良いキュウリの食感も相まってお腹がいっぱいでもスルスル入ります。

「葱」と書かれた緑の暖簾が目印!

こちらの魅力は、やはり豊富な葱料理の数々。ここまで葱のおいしさを追求したバラエティ豊かなメニューは、他に類をみません。

どんなジャンルの料理にも使われるだけにメニューも無限大のはずと思われますが、「ただのせるだけや切っただけという料理にはしたくないので、新メニューができるまではなかなか骨が折れます。でも、たとえ毎日いらしていただいたとしても、必ず食べたことがない料理があるように常に新しい料理を考えています」と松村さん。

ここにしかない料理はおいしい上にとってもリーズナブル。なのに、オーパスワンなどの超高級ワインも揃えてしまうお茶目で楽しいお店とくれば、予約必須なのも当然ですね。

【本日のお会計】
■食事
・葱前菜6点盛り合わせ 1,480円
・長葱の黒焼きロメスコソース 1本500円
・鴨コンフィ 葱のチミチュリサルサ 〜アルゼンチン風カモネギ〜 1,780円
・和風オムライス 1,400円
合計 5,160円

※価格はすべて税抜

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2020年3月26日)時点の情報をもとに作成しています。

写真:外山温子
文:高橋綾子