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〈サク呑み酒場〉
今夜どう? 軽〜く、一杯。もう一杯。
イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!
ヴァンナチュールの入門に! 醸造家の個性が光る美酒を愉しむ
麻布十番駅から徒歩5分の立地にある「右京堂」は、ヴァンナチュール(自然派ワイン)をグラスで提供するスタンディング形式の店だ。白を基調とするスタイリッシュな空間は、“立ち飲み”の概念を覆す。ワインはすべてリーデル社のグラスで提供しており、香りや飲み口のよさはもちろんのこと見た目も美しい。料理のコンセプトは「ワインに合うもの」だが、どこか懐かしさを感じさせる品が多く、心がほっと癒やされる。
忙しい日々のなか、さっと立ち寄っておいしいワインと料理をいただき、あとは家に帰って眠るだけというご褒美のような時間を過ごすことができる。
女性がひとりでも入りやすい、新しい形の立ち飲み店
遊び慣れた大人たちが絶賛する予約困難店「十番右京」、懐メロダイニングバー「歌京」など、話題の店を立ち上げてきた岡田右京さん。
ヴァンナチュールを気軽に楽しめる店を開いた理由をこう語る。
「単純にヴァンナチュールはすごくおいしいですよね。けれど、まだまだその魅力を知らない人が多いように思います。当店では“わかりやすくおいしい”と思える銘柄だけを選び、グラスで提供しています。通好みの複雑なワインは高級店におまかせするとして、まずは入門編として、色々と飲み比べながらその魅力にふれていただきたいのです」。
大切にしたのは「女性がひとりでも入りやすい空間」。白を基調とするスタイリッシュな空間は、“立ち飲み”の概念を覆す。なぜ、スタンディングというスタイルを選んだのか。
「麻布十番には立ち飲みの店が少なく、しかもヴァンナチュールのワインを出す店はさらに珍しい。僕はもともと立ち飲みが好きなのですが、そのよさは気が向いたときにフラッと立ち寄れて、サクッと飲めること。『十番右京』について『いつも予約でいっぱいで入れない』という声があり、スタンディングならより多くの方に気軽に楽しんでもらえると考えました」。
店オリジナルの“右京コイン”を購入して支払い
立ち飲み店ではキャッシュオンデリバリーが多いが、「右京堂」では独自の通貨“右京コイン”を購入し、注文に応じて使用する方式をとっている。コインに両替するというシステムが面白く、ゲームのような感覚もある。コインは1枚250円(税込)で、何枚でも購入できる。その日のうちに使い切れなければ持ち帰り、次回に使用することも可能だ。
スパークリングワイン、白ワイン、オレンジワイン、赤ワインがそれぞれ5種類ほどリストアップされており、計20種のヴァンナチュールをグラスでいただける。産地にはこだわらず、試飲しておいしいと感じたものだけをセレクト。そのなかには流通の少ない希少な銘柄もふくまれているが、そのほとんどを4coin(1,000円)で楽しめる。しかも、税込価格。消費税が上がっただけに、この設定はうれしい。
まずは“泡”で乾杯! レモンスカッシュのような爽やかさ
まずはスパークリングワインからセレクト。5種の銘柄のなかから選んだのは「メンティ ロンカイエ・スイ・リエーヴィティ2017」。イタリアで19世紀からワイン造りを行ってきた家族規模のワイナリーによる、微発泡の辛口ワインだ。優しい果実味とシャープな酸味が特徴で、まるでレモンスカッシュのように爽やか。濾過をせずにボトリングしているため、ミネラルの印象がはっきりと残る。黄金色の輝きも素晴らしい。
料理はすぐに提供されるクイックメニューから「マカロニと玉子のサラダ」をチョイス。玉子をたっぷり使った、老若男女が大好きな味つけにテンションが上がる。やや細めの食べやすいマカロニに、パプリカ、タマネギ、キュウリ、アーリーレッド(赤タマネギ)などの野菜もしっかり入っている。
最古の醸造方式で造られた、ジョージアのオレンジワイン
日本ではまだあまり馴染みのない、オレンジワインがそろっているのも魅力だ。オレンジワインとは、白ブドウを原料に、赤ワインの製法で造ったワインのこと。ブドウの皮や種を漬けて発酵させるため、皮の香りや豊かな果実味を楽しめる。
この日に選んだ「クヴェヴリ・ワイン・セラー ルカツィテリ クヴェヴリ2017」は、ワイン発祥の地といわれるジョージアで作られたもので、ワイン最古の醸造方式とされるクヴェヴリ製法が用いられている。ひと口いただくと、桃のようなフルーティな香りのあとに、まるで紅茶のような風味が漂う。クリアな味わいでありながら中盤の厚みもあり、醸造の巧みさを感じさせるクオリティの高いワインだ。
オレンジワインに合わせたのは「カニクリームコロッケ」。カニの爪つきなのがうれしい。サクサクの衣にトロトロのクリーム、そしてタルタルソースと中濃ソースが絡み、ほっぺたが落ちてしまいそう。
“あの”トリュフたっぷりTKGを、最後にいただく愉悦
「十番右京」の代名詞といえば「トリュフたまごかけご飯」。メディアでも取り上げられ、TKGブームを牽引した存在として知られる。なんとその味を、同店でも楽しむことができるのだ。しかも、「十番右京」では1,980円のところを、1,750円で提供している。
「スタンディングであることと、目の前でトリュフを削るというサービスを省いている分、価格を下げてご提供しています」と岡田さん。
贅沢にあしらわれたトリュフを、スプーンで切り刻むようにしながら混ぜ合わせるのが正しい食べ方。トリュフの香りが広がり、食欲を刺激する。米は福井県産のハナエチゼン。大粒の米を固めに炊いているため、ねっとりとした卵黄をまとわせても口のなかでパラリとほどける。芳醇な香りと卵黄の濃厚な味のハーモニーは、一度食べたら忘れられないほど強烈だ。
ひと皿のポーションは少な目だが、ワインと合わせて楽しむ分には十分。〆のTKGまでいただけば、ほどよく腹を満たせるはず。
ひとり飲みにも、仲間と盛り上がるにも使える自由度の高さ
ひとりでふらりと飲んで帰れるところも魅力のひとつだが、仲間同士で集まってワイワイと過ごすのもオススメ。営業時間は15時から23時30分までで、金曜・土曜は翌朝の4時まで営業している。飲み会前の0次会、二次会や三次会にもぴったり。目的の場所への合流地点として使うのもいいだろう。
ヴァンナチュールの魅力を知りたい人も、スキマ時間にサクッと飲みたい人も満足させてくれる、新しいスタイルの立ち飲み店である。
■食事
・マカロニサラダ(2coin) 500円
・カニクリームコロッケ(2coin) 500円
・トリュフたまごかけご飯(7coin) 1,750円
■ドリンク
・スパークリングワイン「メンティ ロンカイエ・スイ・リエーヴィティ2017」(4coin) 1,000円
・オレンジワイン「クヴェヴリ・ワイン・セラー ルカツィテリ クヴェヴリ2017」(4coin) 1,000円
■チャージ(1coin) 250円
合計 5,000円
※価格はすべて税込