〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は食べロググルメ著名人の川井潤さんがおすすめする、薬膳中華の名店をご紹介。
教えてくれた人

川井 潤
フジテレビ「料理の鉄人」企画ブレーン(1993年~99年)。元(株)博報堂DYメディアパートナーズ。現在は、渋谷区CFO(Chief Food Officer)として渋谷区にあるおいしい店の啓蒙・誘致、区独自の商品プロデュースほか食品関連企業、IT会社、広告代理店などのアドバイザーを務める。滋賀県彦根市、その他エリア等これまでの企画ノウハウを活かして「地域サポート」も行っている。
早稲田駅から徒歩5分ほどの場所にある名店
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

地下鉄・早稲田駅と都電・面影橋停留場の間にある静かな住宅街に立つ薬膳中国料理の「旧雨」。路地にひっそりとたたずむ外観は、控えめで落ち着いた雰囲気と重々しい木製の扉がゆったりと出迎えてくれる。趣ある店名は、中国語で古い友人という意味だとか。昔なじみと心おきなく過ごすように、リラックスした時間を過ごして欲しいという意味が込められている。

店内は広々した空間に大きな厨房とオープンキッチンのカウンターを配した印象的なレイアウト。高い天井、むき出しのコンクリートの壁、シノワズリの調度品、そこに目の覚めるような赤いランプシェードなど、モダンとレトロが絶妙に混ざり合いデカダンなムードを醸し出している。

川井さん
とにかく甘味、辛味、酸味、塩味、苦味、の五味を各料理で楽しませてくれる。それでいて体に優しい。
名店出身の店主が料理にかける思いとは?

厨房で腕を振るうのは、根津にある食養生の考えに基づいた自然派中国料理「古月」で腕を磨いた前田克紀さんだ。前田さんは「古月 新宿」のシェフとして活躍し、その後力量を見込まれて、オーナーから「古月 新宿」を引き継ぐことになった。それから十余年が経ち、2023年12月に新たにここ「旧雨」をスタートさせた。
「以前の店は25席と大きかったのですが、こちらは8席に絞って一人でもできるスタイルになりました。少しずつですが以前からやってみたかった料理を出していければ」と前田さん。

川井さん
前田シェフは以前ちょくちょくお邪魔していた新宿御苑の「古月」のシェフだった方。季節柄に合わせて体を気遣ってくれる薬膳料理がこの猛暑のバテ気味の時にうれしかった。シェフがワンオペにも関わらず、オープンキッチンで料理しながら、いろんな会話ができたり、麺を作るところを目の前で見せてくれたり、楽しませてくれるのも魅力。