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川井さん絶賛! 必ず食べて欲しいメニューとは?
季節を感じられる点心

基本はおまかせコースだが、そのほかに追加で頼める単品を用意している。特に焼売や春巻きなどの点心は旬の食材を生かした日本の四季を感じられる料理にしたいと力を入れている。例えば秋のキノコを使った焼売は、肉を使わず、干したきのこ、れんこん、もち米、大豆などを合わせて包み、スダチをしぼってさっぱりと食べさせる。
新感覚の牛乳炒めとは?

おまかせコースは約9品で年8回、春、梅雨、残暑、秋など季節の変わり目に大きく内容を入れ替える。秋のコースは、乾燥しがちなのどや鼻などの呼吸器を潤すことがテーマだ。潤いをもたらす作用のある食材を駆使し、食材同士の相性や最善の調理法などをじっくりと練って料理を組み立てるという。
例えば、秋のコースで提供する「ミルク炒め 銀杏あんかけ」は、肺や胃腸を潤す効果があると言われている牛乳を卵白と合わせてとろりとした食感に仕上げ、咳止め作用があると言われている銀杏をあんにからめて上からかけている。下にはパリパリの揚げた春巻きの皮を敷き、滑らかなあんかけとのコントラストを楽しませる。
滋味深い味わいのスープで体が温まる

季節で変わる養生スープも秋は同じく潤いをもたらす作用のある食材が中心だ。合鴨、パクチョイと呼ばれる広東白菜、杏仁、薬膳で使われる莫大海(ばくだいかい)のほか、ドラゴンフルーツを使っているのが面白い。ごく薄味に仕立てているが、さまざまな素材の味わいが重なり、飲み進むほどに奥深い滋味を感じられる。

川井さん
新宿御苑の古月時代もスペシャリテメニュー。なんとも優しい味で、体を労ってくれている感じのする料理。
コースに追加して頼んで欲しい、名店の味を引き継ぐ麻辣豆腐

以前の店からスペシャリテとしてファンが多い「麻辣豆腐」は、追加でオーダーできる。熱々の土鍋で提供される「麻辣豆腐」は、修業先「古月」のレシピを受け継いだもので、古典的な中国の作り方に根差しているという。豆板醤を使わないのでさらりと軽やかで、牛肉と豆鼓のうまみが際立ち、シャープな花椒と唐辛子の辛みをほどよく感じられる。


川井さん
グツグツ鍋の湯気で目が刺激を受けるほどの感覚。辛さもあるが旨みもあっておいしい。炊き立てのご飯と一緒に食べることがおすすめ。
デザートまで抜かりなし!

秋のコースのデザートは、金木犀の香り漂うヨーグルトシャーベット。下には白キクラゲ、梨の白ワインコンポートをしのばせている。フルーツの自然な甘みとヨーグルトの酸味でさっぱりと食べられ、コースの最後まで穏やかで優しい味わいが行き届いている。

川井さん
僕が行った時は「好吃(ハオチー)」と言う緑豆を使った汁粉のデザートでした。デザートと言えども、最後の最後まで体を気遣ってくれているが感じられる。

薬膳料理と聞くと少し身構えてしまうが、こちらでは前田さんが薬膳のうんちくを語ることはない。東洋医学にも通じた前田さんの料理はどれも静かに体に浸み込むような澄んだ味わいで、体への負担を感じさせない。季節の変わり目の変化に合わせてゆらぐ体を整えてくれる、そんな料理だからこそ季節ごとに訪れたくなる。
※価格はすべて税込
文:岡本ジュン、食べログマガジン編集部 撮影:八木竜馬
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