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〈食べログNo.1には理由がある!〉汁なし担担麺編
食べログのジャンル別ランキング〈汁なし担々麺〉において、担担麺を扱うラーメン店のなかでは6位、担担麺の専門店においては1位(2019/12/1付ランキング)に輝いた「四川坦坦麺 阿吽 湯島本店」。その人気の理由を探るべく、四川省公認の四川料理の専門家、「四川フェス」では実行委員長も務める中川正道さんとともにお店を訪問。その味の実力に迫ります。
教えてくれる人
中川正道(なかがわ まさみち)
四川省公認の四川料理の専門家。「麻辣連盟」総裁、2002年から4年間、四川省・成都に留学、四川料理に魅了される。2012年に四川の仲間たちと200店舗を食べ歩き「おいしい四川」サイトをリリース。2014年夏に日本初の四川料理食べ歩きガイドブック「涙を流して口から火をふく、四川料理の旅」上梓。2017年より開催されている「四川フェス」では実行委員長も務める。
オープンから12年。東京の担担麺の代名詞的存在に
東京メトロの湯島駅を出てすぐ。「四川担担麺 阿吽 湯島本店」といえば、担担麺好きなら必ずや知っているであろう有名店。2007年にオープンして以来行列の絶えない店として知られてきましたが、その人気は浅草、北浦和、新宿御苑、丸の内と支店の輪が広がっても全く変わりません。なお、2020年1月には、中国上海で再び「阿吽」の担担麺が食べられるようになるとのこと。「つゆ無し担担麺」は、そんな「阿吽」において、「白胡麻担担麺」と並ぶ2枚看板のひとつ。
ここ10年ほどで東京でも安定した人気を誇るようになった汁なし担担麺ですが、中川さんによれば「中国人も日本の汁なし担担麺はおいしいって言いますよ。向こうのものは麺ももっと細くて、かんすいも入っていないストレート麺なのですが、最近は日本インスパイア?と言えそうな太麺でコシもある麺も出てきています」とのこと。「阿吽」は、日本で進化した汁なし担担麺の究極系と言えるのかもしれません。
四川の担担麺とは別物! 日本オリジナルの魅力とは?
四川の担担麺の味を知り尽くした中川さん。本場の“麻辣”の魅力に取り憑かれたその舌から得た、「阿吽」の「つゆ無し担担麺」のポイントはこちら。
1. 全体の味のバランスのよさ
2. 汁なし担担麺の決め手となる、辣油の実力 3. 辛さと痺れの調整ができる |
では、そのおいしさの実力を具体的に見ていきましょう。
三位一体、麺・タレ・具の見事なバランス
真っ白の船形のお皿に盛られた「つゆ無し担担麺」。中太の縮れ麺の上には、ちょっと粗めの挽肉のあんがたっぷり。みずみずしい水菜と貝割れ大根、干しエビ、芽菜(ヤーツァイ)がトッピングされています。お皿の底には白胡麻と甜麺醤、豆板醤、辣油などでできたタレが。
まずは皿の底から麺を持ち上げるようにして、箸とレンゲを使ってしっかり混ぜ、タレや痺れ成分の花椒が麺にしっかりと絡むようにします。混ぜていると立ち上ってくる香りがたまらない!
中川さんは「全体的なバランスがすごくいいですね!」とコメント。
「汁なし担担麺を構成するものは、挽肉のそぼろと辣油と芽菜。漬物の一種、芽菜は四川料理らしい食材のひとつ。独特の塩味とほのかな酸味が挽肉の甘みや旨みにほどよいアクセントを与えてくれます。挽肉はわりとシンプルな味付けで、甘みはこの挽肉が出している。そして、ここは味の決め手となる辣油がおいしいですね。いい香り。これがうまく麺に絡んでいます」
店長が語る、進化を続ける味の背景
中川さん
全体の味のバランスはどのようにとっているのでしょうか?
店主・中里さん
そぼろ、生野菜、芽菜……と、具材それぞれのおいしさにも気を遣っていますが、やはり全体を混ぜたときに初めてひとつの作品となるように意識して作っています。また、3年前、5年前と全く同じものを出しては飽きられてしまうので、時代に合わせて仕上げのバランスも変えてきています。
中川さん
痺れの肝となる花椒の香りがとにかくいいですね! どちらのものを使用されているんですか?
店主・中里さん
花椒にもいろいろなものがあり、青花椒は痺れが強いけれど香りは抑えめ、赤花椒は痺れは弱めだけれど香りがたちます。薬剤師でもある会社の代表自ら成都へ赴き、その知識をもとに現地で試行錯誤を繰り返し、本場の痺れと香りを残しつつ、日本人に好んでいただけるものを選び提供しております。花椒は、毎日店で挽いたものを使っています。すでに挽いたものを購入して使うのとでは香りも痺れも全然違います。
中川さん
辣油が本場のものに近く、とてもおいしいなと思いました。自家製ですよね?
店主・中里さん
はい。自家製辣油で複数の種類があります。「つゆ無し担担麺」、「担担麺」に合うようブレンドして使っています。先ほどもお話したように、代表が薬剤師の知識をいかして選んだ、辣油の元となる10種類以上の生薬とスパイスを使い、低めの温度でじっくり香りと旨味を引き出しています。低い温度で煮出した方が、口に入れた瞬間ではなく、後からじわじわと辛味が感じられるようになるんです。
中川さん
辛さと痺れがそれぞれ、0から6までの7段階で調整ができるのもいいと思いました。昨年ごろから麻辣が認知され始めて、今はブームとなっていますが、最近は痺れ多めの方が増えているという実感はありますか?
店主・中里さん
今までにない、痺れの味わいを求めるお客様が増えてきております。ただ、“痺れは好きだけど弱い”という人もいますね。5割くらいの人は、辛さも痺れも2か3で注文されていますし、こちらでも、辛さ3・痺れ2を、初めての人には辛さ2・痺れ2をおすすめしています。辛さ・痺れともに6にすれば、まさに成都の味わいを感じることができるかもしれません。常連のお客様はよく注文されますが、初めて挑戦された人は全部食べられないことが多いです(笑)
中川さん
挽肉の食感や甘めの味つけがいいなと思いました。工夫している部分はどこですか?
店主・中里さん
肉々しさは残しつつ食べやすくなるよう、挽き方や大きさのバランスにはこだわっています。味付けも中国の調味料だけを使って四川風にすると日本人には受け入れられないので、敢えて日本の調味料も使っています。また、うちはトッピングの選択肢として「肉増し」というのもあるので、その時にしょっぱく感じないような味付けにしています。本場のものよりは少し甘めかもしれません。
中川さん
トッピングやサイドメニューで人気のものは?
店主・中里さん
一番多く出るのは「温泉玉子」。辛さをマイルドにしてくれることもあり、女性に特に人気です。「粉チーズ」は主張がちょっと強くなりますが、やはり人気。「香菜」も人気ですが、これはすごく合いますね。サイドメニューで一番出るのはやっぱりライス。残ったタレにライスを入れて食べていただいています。