東京から2時間30分! 食通が通う美食の街

2015年の3月に北陸新幹線が金沢まで延伸してから、アクセスが向上して身近になった金沢。食通たちの間では季節ごとに訪れる金沢食い倒れツアーも定番になりつつある。金沢市には「The Tabelog Award」受賞店がすでに5軒あり、今後まだまだ増えそうな勢いだ。

金沢の町並み gettyimages

それもそのはず、金沢の近くには氷見や新湊など、日本海の魚介類が集まる漁港があり海の幸に恵まれている。一方で、山の幸では伝統的な加賀野菜が豊富にあり、料理をローカライズして差別化するのに一役買っている。

 

今回はそんな金沢の夏グルメを堪能すべく、1泊2日の美食旅をプランニングしてみた。食べログ上位の店を4軒もまわるという、贅沢この上ない最強の金沢旅を紹介しよう。どこも予約困難店のため、早めの計画をお勧めする。

いざ、金沢へ! 豪華海鮮で朝食をスタート

上野駅を7時26分発の新幹線に乗り、金沢へ向けて出発。現地での食を堪能するために駅弁を我慢し、9時51分に金沢駅に到着。

金沢駅 gettyimages

そのままホテルに荷物を預けて、金沢の台所、近江町市場に。近江町市場は金沢の街中にありながら、新鮮な魚介類から野菜、肉までなんでもそろう巨大な市場。屋根もあるアーケード型なので、真夏でもそれほど暑くないのが嬉しい。

 

まずは朝ごはん用の日本酒を買いに「カナカン・ジョイ」に。冷えた地酒を買い、紙コップをもらったら市場にGO。

撮影:食べログマガジン編集部

1軒目は「忠村水産 小売部」。お目当てのボタン海老はロシア産(600円・税込)と氷見産(700円・税込)があり、迷わず氷見産を。ねっとりと濃厚な甘みがあり、朝食のスタートには最高のアミューズ。お店の方に許可をいただき、日本酒でマリアージュ。

撮影:食べログマガジン編集部

2軒目は「川木商店」。こちらではウニの殻に入った生ウニ(700円・税込)を堪能。3軒目は「みなみ」で石川県産の岩牡蠣を。大きさによって価格は変わるので800円(税込)の一番小さいものにしてみたが、ぷっくり大ぶりで大満足。これからのランチに備えて炭水化物は我慢し、金沢駅に戻る。

 

 

1日目:イノベーティブと伝統

SHOKUDO YArn

金沢駅からサンダーバードに乗車し小松駅まで。そう、目的地は某雑誌の表紙にもなり全国的に知られることとなった旬のレストラン「SHOKUDO YArn(ショクドウ ヤーン)」。2017年と2018年には「The Tabelog Award」のブロンズを受賞し、2019年にはシルバーを受賞している実力店。

honey 女優
外観   出典:honey 女優さん

まず驚くのはそのロケーション。最寄りの小松駅からもタクシーで10分かかり、決して便利な場所とは言いがたい。それでも食べログのレビューを見れば、全国から名だたるレビュアーが訪れていることがうかがえる。いったい何が全国のグルメたちを惹きつけているのか、興味津々で住宅街にある一軒家のドアを開いた。

写真:お店から

平屋造りで天井が高く、広々とした空間が都会の狭い住宅事情に慣れきっている身からすると非常に贅沢だ。中庭には木が植えられ自然光が差し込んでいる。

写真:お店から

そしてガラス張りの厨房は見るからに清潔で快適そうだ。「厨房」というより「ラボ」というほうがしっくりくる。

写真:お店から

この実験室から生み出されるのは地元の食材をふんだんに使用し、サプライズの魔法を施した独創的な料理の数々。食べログでのジャンルは「イノベーティブ・フュージョン」。ベースにあるのは「和食」とのことで、日本酒のラインアップも豊富。夜に日本酒を飲む予定だったので、白ワインをボトルでいただいた。和を意識しながらも仕上がりは洋の要素も散りばめられていたので、白ワインとも相性は上々だった。ランチは6,000円(税・サービス料別)で10品前後と盛りだくさん。

思わず笑顔になる仕掛けが一品一品に  撮影:食べログマガジン編集部

イノベーティブレストランは料理の詳細を紹介してしまうと、訪れた時のお楽しみが減少してしまうので、紹介はこれくらいにとどめるが、ぜひご自身で訪れて、五感で感じてみてほしい。食べることの楽しみを思い出させてくれる一軒だ。

片折

夕飯は金沢エリアで食べログNo.1(2019年8月現在)の和食店「片折」を訪問。「食べログ グルメ著名人」のメンバーなど、食通たちが絶賛する、金沢で今話題の店。店を切り盛りする夫妻はともに今は閉店した金沢の名料亭「つる幸」出身。この日の客は全員東京から片折を目指してやってきたという。

 

俊太朗
削りたての鰹節   出典:俊太朗さん

料理に使う水は軟水を汲みに行き、だしに使うカツオは一本釣りした特注のもの。そのカツオを客の目の前で削り、こだわりの水でとった一番だしを味わうと、これから始まる料理への期待もぐっと高まる。魚や貝は新湊や氷見から仕入れ、ヘタ紫ナスなど地の野菜を使う「金沢料理」はここでしか食べられない感動に満ちている。

冷やしたヘタ紫ナスにウニを添えて  撮影:食べログマガジン編集部

料理の傾向としては、色々と素材をこねくり回すことはせず、必要な仕事を施しながら素材のおいしさを最大限引き出している。塩味も控えめで、そのぶん素材への絶対的な自信を感じさせる料理になっている。

俊太朗
出典:俊太朗さん

一方でポーションは多めで、どの料理もたっぷりと盛られているところに「おいしいものをたくさん食べてほしい」というご主人の心意気があらわれている。

俊太朗
出典:俊太朗さん

わかりやすい高級食材のオンパレードといった料理ではないが、食材、器、調理において「贅を尽くした」料理は食べ慣れた食通こそハマるに違いない。

2日目:寿司の極みとフレンチの革新

小松 弥助

2日目の昼は金沢の寿司を一躍有名にした「小松 弥助」に。「東の次郎、西の弥助」と称され日本を代表する寿司屋だ。

熟睡猫
小松 弥助の入る金沢茶屋   出典:熟睡猫さん

「寿司の神様」と呼ぶ人もいる、寿司界のレジェンド、大将の森田氏は87歳で現役。2015年11月に片町にあった店を閉店した際は日本中の寿司ファンに衝撃が走ったが、2017年3月に金沢の駅前で華麗に復活し今に至る。

サプレマシー
店内   出典:サプレマシーさん

新しく、広くなった新店舗では、14席から18席に客数も増えたが以前よりお弟子さんの数も増え、提供はスムーズだ。

毎日外食グルメ豚
マグロの漬にぎり   出典:毎日外食グルメ豚さん

この日はおきまりのコースの握りは森田氏自らがにぎってくれ、巻物や追加についてはお弟子さんが担当していた。

ぴーたんたん
ウニのにぎり   出典:ぴーたんたんさん

森田氏のにぎりの素晴らしさは食べログのレビューに多く記載されているので、ぜひ参考にしていただきたい。にぎりたてを直接手渡され、すぐに口に入れると驚くほど「ふわっ」っとシャリがほぐれ、夢心地になってしまう。私はこの現象を「寿司の宇宙」と呼んでいるが、それくらい衝撃的なにぎりなのだ。

毎日外食グルメ豚さん
イカのにぎり   出典:毎日外食グルメ豚さんさん

スペシャリテはいくつかあるが、誰もが絶賛するのが「イカ」。イカを3枚におろし、さらに細く切ったものをふわりとまとめてシャリと合わせる。柑橘を搾って強めの塩をふる。イカは「切り口の断面が甘くて旨い」というのは知られることだが、この方法であれば断面を最大限に堪能できる。ここでしか食べられない唯一無二のイカのにぎりだ。

まんおじ
イカの仕込み   出典:まんおじさん

予約は困難を極め、予約が取れたとしても森田氏のにぎりを食べられるかは確約できないが、寿司好きならばトライする価値はある。

マキノ

金沢最後のディナーは金沢フレンチで食べログNo.1(2019年8月現在)の「マキノ」へ。

写真:お店から

シェフの牧野浩和氏は40歳、シェフとして、まさに脂が乗りに乗ったお年頃。東京・銀座の「ル・マノアール・ダスティン」で約5年修業を積み、渡仏。ブルゴーニュで本場の味と技術を習得したのち、故郷金沢で自店をオープンしたのが2007年。

落ち着いた内装
落ち着いた内装   写真:お店から

ディナーはメニューがクロスワードパズルになっており、どんな料理が出てくるのか、コースが始まる前からワクワクさせる。

honey 女優
人参のムース   出典:honey 女優さん

どの料理も遊びごころに溢れ、工夫が凝らされているが、スペシャリテは意外にもフレンチではオーソドックスな「人参のムース」。ここで「ル・マノアール・ダスティン」での修行経験がリンクする。人参のメニューにコンソメジュレとウニをのせた冷たい前菜は五十嵐シェフ門下生の証だろう。

撮影:食べログマガジン編集部

夏には金沢・犀川で取れる鮎を使った料理も楽しめる。この日は南蛮漬けのようなアレンジの一皿が供された。料理は和の食材、地元の加賀野菜などを取り入れ、全体的に軽めに仕上げられており、新しい「金沢フレンチ」の風を感じさせた。

まだまだ宿題店はてんこ盛り

食後のコーヒーを飲み終え、マキノから金沢駅へと急ぐ。21時発の最終新幹線に乗れば23時26分に上野駅に到着する。

 

新幹線の中でさっそく次回のプランニングを始める。次に行くなら11月のかに解禁頃だろう。金沢が一番混雑するシーズンなので宿の手配は急いだ方がいい。ターゲットは「つる幸」がカジュアルになって再スタートを切ると話題の「金澤 せつ理」。オープンが延びており秋頃になるという噂。

代々木乃助ククル
竹千代の香箱ガニ   出典:代々木乃助ククルさん

骨董屋のマダムに教えてもらった食べログにも載っていない町寿司も気になるし、「竹千代」の香箱ガニのおでん「カニ面」もはずせない。いつも高級店におされてなかなか行けない「あげは」の練り物ランチや「自然派ラーメン 神楽」もおさえたい。

 

1泊2日で堪能する週末金沢グルメは四季のルーティンになりそうな予感だ。

 

文:食べログマガジン編集部