食通が見いだした、今月の新店

新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらわからない!」という人も多いのではないでしょうか。
そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回はフードジャーナリストの外川ゆいさんにお答えいただきます。

教えてくれる人

外川ゆいのアバター

外川ゆい
フードジャーナリスト。つくり手のストーリーや思いを伝えることを信条に、レストラン、ホテル、スイーツ、お酒など、食にまつわる記事を執筆する。雑誌やwebでの取材のほか、予約サイト、HP、リーフレットなど。出産を経て食育への関心も高まり、食いしん坊な3歳児との日々の食卓を楽しんでいる。

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A.「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」です

ヤニック・アレノ氏(右)のフランス料理と安田至氏(左)の寿司が共演

2024年10月25日に誕生した「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ(Sushi L’Abysse Osaka Yannick Alléno)」は、世界的なスターシェフであるヤニック・アレノ氏によるイノベーション寿司レストラン。フランスのパリ、モナコのモンテカルロに続き、世界で3店舗目となります。

寿司に魅了されたアレノ氏が、日本初出店にあたりタッグを組んだのは、国内外で30年近くにわたりその技を磨いてきた料理人の安田至氏。開業時には、アレノ氏と料理長・安田氏をはじめとする料理人たちがカウンターに立ち、エンターテインメント性溢れるディナーを繰り広げ、ゲストをおもてなし。職人ならではの機敏な仕事の中にもチャーミングなトークを交え、肩肘張らない和やかなムードが印象的でした。

パリやモンテカルロと同じアートワークが目を引く店内

「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」が位置するのは、フォーシーズンズホテル大阪の37階。カウンター席に座ると、窓の外に大阪の街を見渡せる景色も圧倒的でした。寿司屋らしい凛とした立派な檜のカウンターと壁に飾られたいくつものアート作品がひとつになった空間は、フランス料理と寿司をひとつのコースで味わうことができる「L’Abysse」の料理に重なります。おまかせコースは、前菜、握り寿司、デザートの3部構成で、ランチは20,000円、ディナーは35,000円。

Q.「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」でおすすめしたいメニューを教えてください

A.「エンダイブとトレビスのサラダ」です

ブーケのような優美なビジュアルの「エンダイブとトレビスのサラダ」

名刺代わりの一皿としてまず提供されるのがこちら。手でつまんで瑞々しいトレビスを頬張るたびに、中に入った大葉など食材の豊かな風味が口いっぱいに。ここから「~エモーション~」と題された前菜が続くのですが、フランス料理でありながら、随所に和のテイストを巧みに取り入れていて、そのあとに続く握りへと自然な流れで繋がっていくのはお見事でした。

A.「マグロの握り」です

メインの「江戸前鮨 厳選握り」として供されるマグロの握り

一見シンプルな王道のマグロの握りですが、酢飯と寿司ダネの間に削りたての鰹節を忍ばせて提供しています。さりげないひと手間ですが、その相性の良さは驚くほど。

ちなみに、この日の締めは、本鮪大トロに、揚げたエシャロットと生の生姜を混ぜたものを巻き込んで握り、仕上げに白トリュフを削って添えるというスペシャルな一貫でした。

安田氏の握りは、酢飯が非常に優しくまろやか。尋ねると、玄米酢と米酢のブレンドを使っているのだと教えてくれました。添えられたガリも特徴的で、生姜に加えて角切りのりんごが入ったユニークな味わい。その日の握りの内容は、魚拓をカットした紙にフランス語で魚の名前を書き、お品書きとしてプレゼントしてくれます。

記憶に残るひと時を

ホテルのレストランは料理人を前面に出さない傾向がありましたが、「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」のように料理人ありきのオリジナリティを感じるレストランは、より記憶に残るひと時を過ごすことができます。宿泊者以外も予約できますので、これまでにない寿司とフランス料理のコースを体験してみてはいかがでしょうか。

※価格はすべて税・サービス料込

文:外川ゆい、食べログマガジン編集部
写真:お店から