ファッション誌『mer』や『mina』などで活躍するモデルでありながら、豪快な飲み方がなんとも男らしい! お酒好きを公言するモデル・村田倫子が、気になる飲み屋をパトロールする連載。

 

「同世代の人にもっと外食、外飲みを楽しんで欲しい!」と願いを込めてお送りする連載14回目は、彼女が愛してやまない“餃子”を大特集。前編に続きお送りする後編では、神奈川・川崎にある水餃子専門店を紹介します!

呑み屋パトロール vol.14「春の餃子スペシャル・後編」

新丸子。ふと見上げると、城のように背の高いマンションが立ち並び、その足元には城下町のように、親しみ深い商店街や飲食店が息づいています。ここは神奈川・川崎にある再開発真っ最中のエリア。こういう場所にはよいお店があるんです。

 

駅から歩くこと数分、レトロな風合いの建物が現れます。一見喫茶店のようですが、看板には「本格水餃子専門 瓦奉店」の文字。

 

 

餃子欲を満たすため、多摩川を越え訪れた新丸子。肩書き通り、ここでは満州式の本格水餃子を堪能できるのです。

 

 

ライトグリーンの店内には8席のテーブル席と2席のカウンター。出迎えてくれたのは、春めく桜色の服を纏った素敵な女性。おひとりでお店を切り盛りされている、こちらのオーナーの鈴木さんです。

 

「瓦奉店」という珍しい店名は、鈴木さんのお祖父様が旧満州の南満州鉄道の駅長だったことにちなみ、満州の駅名からついているんだそうです。そして、その思いは餃子にも。瓦奉店の餃子は、お祖母様が現地の家政婦さんから教わった、満州の家庭の味。家族の思い出を鈴木さんがしっかりと守り、私たちにも本場の家庭の味を楽しませてくれるというわけです。

 

さっそく、餃子祭りの後編をスタートさせましょう! 乾杯はもちろん、餃子の相棒おビールさん。青島ビールの可愛いボトルをとくとく鳴らして。

 

 

んんん、仕事終わりのビールはしみますね。前菜に頼んだ、「猪肝(豚のレバー煮込み)」400円 との相性も良し。

 

 

中華の香辛料で味に深みが増したレバーは、濃厚で色っぽい。そうこうしているうちに、やってきた本日の主役。

 

 

あぁ、ぷりんと丸い身体(あん)に、艶やかに濡れる肌(皮)。チャーミングなのに色気がある「水餃子」 750円。……待ちきれない! さっそく味わわせていただきますよ、可愛子ちゃん!

 

 

はぁ。見かけ以上に中身に魔力を感じます。もっちりと舌に吸い付く皮の感触。ぷりっと弾けた先には野菜の食感、そしてお肉のしっかりとした旨味、最後に野菜の甘味がじわっと口中を満たしていき、引き際で香辛料の余韻にどっぷり浸る。

 

 

わたし、ただただ幸せです。これで、にんにくが入っていないという事実が受け入れがたい。餃子界の旨味の王者がなくとも、素材本来の味が手を取り合うとここまでの攻撃力を持つとは……。もうすっかり、満州の餃子に心と胃袋をもっていかれてしまいました。

 

さあ、「薬膳特製スープ餃子」980円 は、どうでしょう?

 

 

スープに浮かぶ、薬膳の食材たち。楊貴妃が愛した白木耳、生薬にも用いられるほど薬効が豊富な金針菜、愛らしい紅花がささやかに色を添えます。(疲労回復や、血行浄化作用が期待できるだとか)

 

スープを含んだ水餃子は瑞々しさを増し、するりとお口に滑り込む。一緒になだれ込んだスープは、すすっーと身体に染み渡る。

 

 

花が水を受け入れるように、身体もごく自然にスープを受け入れる。「薬膳」って、結局どんな定義か私にはわからないけれど、身体はちゃんと良いものを知っている。美味しくて、そして気持ち良い。

 

 

ある程度味わった後は、小ぶりのお茶碗にちょこんと盛られたお米をスープの中へ。

 

 

 

余すことなく、楽しんだ後は……。はっ、来ました! 芳ばしい香りを漂わせた、みんな大好き「焼き餃子 」650円。

 

 

実は、本来中国では餃子と言えば、ゆでた餃子(水餃子)のことを指し、焼いたものはメジャーではないのですが、わたしたちのラブコールに親身に応えてれる鈴木さんの優しさ。……ありがとうございます!!!

 

なので、こちらの餃子は、一度茹でた水餃子を焼き上げて作る、本格的な形式のもの。

 

 

パリッと皮が弾けて、ドドドと溢れる肉汁で満タンに。「美味しい」が、なだれ込んできて困る。

 

 

水餃子として完成されたものが、焼きという工程を経てまた違う方向から攻めてくる。身体に優しいのに、旨味がこちらの期待を優に超える。美味しくて健康的、こんな素敵な相乗効果は中々出会えません。

 

ビールが進みますなぁ(余は満足じゃ)。

 

さあ、こちらに来たからには、絶対に外せないエースがまだまだいます。特にこちら、「薬膳豆豉炒飯」700円はマストイートです。

 

 

大豆を発酵させた、味噌のような風合いの豆豉をオリジナルスパイスに漬け込み、炒め合わせた炒飯。豆豉ベースの料理が好物な私にとっては、またとないご馳走であります。

 

手間を惜しまず何層も重ねられた工程が、シンプルな味つけに奥行きを出す。挽肉から出た油だけで炒めたライスからは香りと甘味が増し、豆豉のまろやかなコクと、最後に駆け抜けるスパイスの辛味と清涼感がたまらない。

 

ただただ美味しい。なんだろう、あんなに餃子を食べたのに、気づけばお皿は空っぽ。本物だ。まぁ、そんなことは当たり前なのですが、食べたからこそ分かる確かな満足感。お祖母様の代から伝わる大事なレシピ。

 

 

鈴木さんの作る料理には、私たち訪問者に食の時間を楽しんでもらいたい、そして、この大事な料理たちを伝えたい、という意思が確かにある。言葉でなくても伝わる想い。しっかりと抱きしめて、素敵なひと時の余韻を噛み締めながらお店を後にしました。

 

実家の母の味が恋しくなる夜。なんだか大切なことを思い出させてくれました。

 

※価格はすべて税込

文:村田倫子