ファッション誌『mer』や『mina』などで活躍するモデルでありながら、豪快な飲み方がなんとも男らしい! お酒好きを公言するモデル・村田倫子が、気になる飲み屋をパトロールする連載。

 

「同世代の人にもっと外食、外飲みを楽しんで欲しい!」と願いを込めてお送りする連載14回目は、彼女が愛してやまない“餃子”を大特集。 全2回に分けてお送りする前編では、南青山にある超人気店をフィーチャーします!

呑み屋パトロール vol.14「春の餃子スペシャル・前編」

シックな大人の街、南青山。ここに、一度口にすると誰もが再訪を望んでしまう魔性の餃子があるらしい。

 

そんな噂を聞きつけ、訪れたのは「亜細亜割烹 蓮月」。東京メトロ千代田線・乃木坂駅から徒歩数分、大通りを一本それた小道に突如、赤い灯火が現れました。

 

 

外にも漂う香ばしい香りに誘われ、吸い込まれるように店内へ。

 

 

店内は、カウンターを中心に、大きなテーブル席がひとつあります。

 

 

青山という土地柄、勝手ながら格式高い内装を想像していたので(ラグジュアリーな香りがする空間が苦手なんです)、居心地のよい間取りにほっと一息。

 

メニューを開くと、おぉ、なんと料理は6品オンリー。なかなか珍しいですね。

 

 

中華料理といえば、一人では持て余してしまうほどの品数(だいたい漢字が読めないから麻婆豆腐か酢豚しか頼まない)、一皿が大盤振る舞いすぎる(あれ、絶対四人前くらいある)ので、少人数では敬遠しがちなお店なのですが、こちらなら一人前から選べて、大人数での行動が苦手な私にとっても嬉しいシステムです。

 

メニューは、サラダから始まり、焼き餃子、水餃子、炒め物、〆の麺が名を連ねます。実はこれ、コース料理をイメージしているそう。一人でも贅沢にコース気分が味わえるなんて素敵! そして、せっかくなので全て注文でしょ!?

 

一人コースの幕開けは、餃子の良きパートナー、おビールで。

 

 

お通しで運ばれてきたのは、「ザーサイ」。甘ピリ辛な味付けに、シャキッとした歯ごたえ、気持ちの良い辛味がまた一口……と手が止まらない……。あらら、これは餃子が来る前にビールグラスの底が見えそうです。

 

青唐辛子と胡瓜と香菜のサラダ

 

間も無く運ばれてきたのは、「青唐辛子と胡瓜と香菜のサラダ 」900円。塩胡椒、酢、自家製の葱油で和えたサラダはみずみずしい歯ごたえ。シンプルな味わいが素材の甘味を引き立たせ、最後にパクチーの爽やかな香りと青唐辛子の辛味が鼻を抜ける。こんもり葉物の山が目まぐるしいスピードで崩れていきます。

 

特製手作り焼き餃子

 

タイミングを見計らったかのように目の前に登場したのは、「特製手作り焼き餃子」 700円です。少し間を置いて「羊肉の手作り水餃子 」700円も。

 

羊肉の手作り水餃子

 

さすがコースを意識したラインアップ。料理が卓上に運ばれるタイミングもこれまた絶妙。実はここには店主の品川さんの粋な計らいが。

 

 

キッチンの正面に配置されたカウンターは少し高く、大鍋を振るう料理人の背中を眺めながら、自ら注文した料理が出来上がっていく様子を感じることができます。また、店内の角に位置するテーブル席も、実は店主の目が届く導線上に配置されています。

 

「自分で構えた城だからこそ、自分の手が届くリアルな距離でお客様の表情や温度感を感じながら料理を振る舞い、心地よく楽しんでもらいたい」と、品川さん。

 

まるで実家にいるかのような、温かな精神が宿るハートフルなお店なのです。

 

 

さぁて、いただきましょうか餃子様(あぁ、愛しい……)。

 

 

弾ける皮から、溢れ出る豪快なあん。もっちりと肉厚な皮に負けず、豚肉のたっぷりの旨味にくらくらと酔いしれ、笑みが溢れて大変です(ともかく美味しいの嵐!)。

 

 

 

13種類ものスパイスで調合された自家製ラー油と、黒酢のタレが、餃子のコアの旨味を存分に引き立たせる……。さぁ、続いて期待値の上がった水餃子のお味はいかに!?

 

 

 

こちらは、自家製のラー油と醤油が配合されたタレをつけていただきます。

 

ふぁ! もっちりと柔らかな皮が舌に吸い付き、弾けたかと思えば、ラムとパクチーの香りと旨味が肉汁とともにこれでもかと充満し、お口の中は幸せの大洪水。羊の肩肉とバラ肉を丁寧に細かく包丁で叩いた挽き肉には、羊肉の美味しさが十二分に閉じ込められています。

 

 

焼き餃子とは全く違うアプローチに、思わず唸る。

 

 

中国で出合った羊肉をメインとした餃子にノックアウトされたという品川さん。その味を再現し、多くの人に楽しんでもらいたいという思いからこのお店は生まれたそうです。

 

確かにここの餃子には、人を虜にする魔力が秘められている。しかし、蓮月は餃子専門店ではなく、中華料理のお店。炒め物も素晴らしいのです。

 

 

てらてらと輝きながらやってきたのは、「醤爆茄子(ジャンバオチェズ)」900円という、茄子の味噌炒め。豪快な大きさの茄子が目を引きます。

 

皮を剥いたからこそ、芯まで染みわたる旨味。とろとろと舌先に崩れこむ茄子の舌触りには色気さえ感じてしまいます。茄子……やるじゃん……。すっかり惚れ直したよ。

 

 

スパイスと、黒豆の発酵食品・トウチのほのかな甘味が、餃子の余韻に優しく重なります。これは私の知る限り、今まで食べた茄子の炒め料理の中で、一等賞でした。幸せな記録更新。

 

 

お次は、「ラム肉の炒め物(クミン風味)」1,100円。羊肉のロース部分を使用した肉は柔らかく、ジューシー。シャキッとした食感のネギと、香菜、香ばしいクミンの三連奏が羊肉を見事に際立たせます。

 

一皿ごとに出会う、新しい中華の形と、その美味しさに私は衝撃と感動で忙しい(そして幸せ)。

 

 

すこぶる面白いなあ、蓮月。

 

〆でやってきた「タラコと干し貝柱の冷やしソバ」1,000円も余念なし。

 

 

冷たくしなやかなコシの麺に、温かいあん。温冷の心地よい刺激と、魚介の旨味が絡んだハーモニーは絶品。

 

 

はぁ、言うことなし、百点満点に締まりましたね。オープニングからフィナーレまで、目が離せず、ドキドキが止まらない空間。食べることは、エンターテインメントだと改めて感じたひと時でした。(余裕がある方は、もう一周餃子! という素敵な無限コースはいかがでしょう?)

 

そして、驚いたのは、実は蓮月のコンロはIHだという事実……。

 

 

中華は火力より愛なのですね(IHは煙が立ち昇りにくいという利点もあるそう)。

 

 

携帯ケースも、愛犬の名前も餃子という、餃子を愛してやまない愛嬌溢れるご主人にまた会いたい。噂通り、来た人を魅了し、お腹も心も満たしてくれる素敵なお店でした。

 

再訪はいつにしようかな……。

 

※価格はすべて税抜

餃子スペシャル後編は、どこの街へ繰り出す?

読めば食べたくなる春の餃子スペシャル後編は、東京を飛び出し、神奈川・川崎の水餃子専門店を訪問します! どうぞお楽しみに。

 

文:村田倫子