TOKYO HIP BAR vol.43

日本茶とお酒が運命的に出会った“煎茶ジントニック”

バーの顔であるバーカウンター。磨きこまれた木のカウンターに触れるのは心地よいものですが、畳でできたバーカウンターもまた気持ちを落ち着かせてくれます。日本人心をくすぐるこの畳のバーカウンターがあるのは、創業1888年の静岡の茶農園の老舗「カネ十農園」のカフェバー「カネ十農園 表参道」です。

 

日本回帰のブームで注目が集まっている日本茶。その流れはバー業界にも来ており、日本茶を使ったカクテルが国内外で出されています。

最近では日本茶専門店が続々と誕生し、世界初ハンドドリップの日本茶専門店「東京茶寮」、渋谷・宇田川町の「幻幻庵」など出店が続くなか、栽培・製造から加工まで一貫して行う「カネ十農園」が、満を持して表参道にオープンしました。煎茶をアイスクリームにかけた和風アフォガードなど、新しい飲み方を提案していますが、オープン当初からメニュー化しているのが、各種の日本茶カクテル。こちらには日本人に馴染み深いの焼酎の各種お茶割りもありますが、ぜひ挑戦してほしいのが、煎茶のジントニックです。

バーカウンターを預かるのは、元は代官山でバーテンダーをしていた松本貴志さん。当時、カネ十農園の茶葉でカクテルを作る機会があり、まず思いついたのがジントニック。ハーブやピールで香りをつけるジンには、日本茶が合うはずと日本茶のジントニックを開発しました。ジンを茶葉に漬け込むなど作り方を試行錯誤する中で、現在はジンとトニックウォーターを合わせた後、煎茶を注ぐというスタイルになりました。桜を入れ込んだ丸氷に、煎茶の緑が美しく映えたジントニックは、ジンそのものがもつ爽やかさに、緑茶の甘みと渋みがよいアクセントとなり、飲み口よく進みます。

意外な日本茶とお酒の組み合わせは

実は必然だった!?

 

茶とお酒は一見意外にも思える組み合わせ。ですが、茶の湯の世界では日本酒は欠かせないものといいます。茶事は、懐石から茶という流れで進み、懐石料理には日本酒を出すのがその決まり。これは覚醒作用の強い抹茶と反対に弛緩作用があるお酒を飲むことで、心身ともに濃茶に最高の状態で臨むというものです。その理論でいうと、茶とお酒が組み合わさった煎茶ジントニックは、最強のドリンクといえます。

 

カネ十農園に移り、いまやすっかりお茶の世界に染まったバーテンダーの松本さんは、静岡県牧之原台地に広がる農園にも時期ごとに出向き、茶のできる過程をしっかり見た上で、日々東京のお客様にお茶の魅力を伝えています。

茶農園の雰囲気ある青々とした茶葉が飾られたエントランスから入り、畳のバーカウンターの上で、一番茶の煎茶ジントニックをどうぞお楽しみください。