TOKYO HIP BAR vol.55

お粥屋の扉を開けると現れる、秘密の薬膳バー

表向きはバーバーショップであったり、本棚のある本を押すとバーへの扉が開いたり、はたまたコーヒーカップでカクテルを飲んでいたり。1920年代のアメリカ禁酒法時代には、お酒を楽しむためのさまざまな創意工夫が凝らされていました。禁止されるとますます興味をそそられるのが世の常で、こうした“もぐり酒場”は禁酒法時代にもニューヨークだけで数万軒の規模で存在したと言われています。

想像するだけでも心が躍る、そんな禁酒法時代の雰囲気を味わえるのが、代官山の「Debris(デブリ)」です。入り口の目印となるのは、八幡通りの中腹に現れる「粥」のネオンサイン。香港に10年以上住んでいたというオーナーによるお粥店がこのバーへのスタートです。薬膳粥、塩豚粥、鶏粥と揃う本格中華粥は、都内に宅配も行う人気の店舗の「P.B.Restaurant」。お粥だけを目指して通うお客さんも多くいます。

その横にある秘密の扉を押すと、目に入るのはミラーボール。その奥には中華街のような看板のもとにバーカウンターが広がる、ネオアジアの空間が広がります。「喜・薬・房」と書かれた看板にあるように、イメージは“Happy Pharmacy”。 楽しみながら飲んで、体を元気にするための薬酒が40種類ほど揃います。

すべてのドリンクメニューは効き目が表記されたもの。定番のネグローニにも血行促進や滋養強壮によいとされるオタネニンジンが使われていたり、ジントニックには消化器によいローズマリーと、漢方やハーブの一工夫がされています。

オリジナルカクテルを開発したのはバーテンダーの斎藤恵太さん。「通常はテイストや知っている名前からカクテルが選ばれますが、効能という別の軸で選んでもらう提案は面白いと思いました」と語ります。開発した中でも人気の「Bali-High」は、インドネシアのラム、金萱茶というバニラの風味のあるお茶やマンゴーを使い、竹の器で出される、ネオアジアの空間に合わせたトロピカルカクテル。キーの漢方として入っているのはデトックス効果に優れた熊笹。血液浄化や免疫力の向上が期待できるといいます。

「男性は滋養強壮、女性は美肌など、悩みの傾向が分かれますね。その日の体調に合わせて、楽しくお酒を飲んで欲しいです」と薬酒のプロである店長の石田翔馬さん。薬酒バー出身の石田さんは、長年薬酒を飲んでいた経験から体調に合わせて薬酒を提案しています。

 

楽しく飲んだら、締めにはお粥を。明日からのバーライフを支えるための、救済スポットとしてご活用ください。

文:美人広報・M