お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない!といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度美味しいこの連載。第五回テーマは、「超ハイレベル!なのにリーズナブルなクリスマスケーキ」を紹介します。

【猫井登のスイーツ探訪5】〜超ハイレベル!なのにリーズナブルなクリスマスケーキ編〜

編集(以下、編):もうクリスマスシーズンですね! そろそろクリスマスケーキの予約をしないと……。

 

猫井(以下、猫):そうですね。ホテル系からもハイセンスなクリスマスケーキがたくさん発表されていますね。今年は、その辺り紹介していきましょうか?

 

編:それが実はですね、この間知り合いのママさんから、「ネットとかで紹介されているお洒落なクリスマスケーキって年々高くなってるよね」と言われてしまい……。

 

猫:なるほど。私たちは職業柄妥当だと思ってしまいますが、確かに高価に感じられるでしょうね。

 

編:それでですね、値段が高くて美味しいっていうのは、まぁ当たり前かなと思うので、私たちがまだ知らない、ハイクオリティーだけど手の届きやすいお値段のクリスマスケーキを教えてほしいんです。

 

猫:「ハイクオリティーだけどリーズナブル」! 出ましたね!! いつものムチャぶり!(笑)

 

編:そこをなんとか、よろしくお願いできないでしょうか……。

 

猫:う〜ん。う〜ん。仕方がないですねぇ。それでは、とっておきのお店を紹介しましょう!

 

編:さすが猫井先生! で、どちらのお店ですか!?

 

猫:「Ryoura(リョウラ)」というお店です。場所は、東京・世田谷。田園都市線の用賀駅から徒歩数分。二子玉川駅の隣の駅ですね。

 

出典:ワイン王子さん

出典:みかちゅ〜さん

 

編:世田谷、ニコタマ! 場所を聞くだけで、リッチそうですが……。

 

猫:そう思いますよね。ところがこちらのお店、ホールのクリスマスケーキでも3,000円台から購入可能です。こちらの菅又シェフは、フランスで修行された後、「ピエール・エルメ・パリ」のスーシェフを経て、「ドゥ パティスリー カフェ」のシェフ時代には大人気となって、多くの有名ケーキ教室で講師としても活躍された人物です。

 

ちなみに今年も伊勢丹新宿店のクリスマスケーキカタログに限定60台のケーキを出品されていますし、渋谷のヒカリエにも出品されていますよ。

 

編:そんな有名シェフのケーキをリーズナブルにいただけるなんて……。

 

猫:お店の生菓子の価格を見るとホントに驚きです。普通ならば、1つ700円〜800円台でも通用するクオリティーのケーキが、500円台で並んでいます。2015年オープンで、世田谷の一等地に店を構えるパティスリーとしてはあり得ない価格設定です。しかも、その素材や味わい、デコレーションの美しさは、他店をはるかに凌駕します。

 

編:素敵なお店ですね! 一体どんなクリスマスケーキがラインアップされているんですか?

 

猫:今年のクリスマスケーキとして用意されているのは、全部で8種類。円形1種、四角2種、ブッシュ形5種。お値段は税“込”で3,200円から。その特徴を簡単に説明すると、まずベーシックな苺のショートケーキタイプが「ガトーフレーズ」。これをひとひねりしてベリーとバニラ2種類のババロアを加えたものが「ノエル・ブラン」。

 

チョコレートなら、ミルクとビター2種のチョコムースにマロンムースを合わせた「エテルネル」か、チョコクリームにナッツのババロアとバナナを合わせた「ノエル ブリュンヌ」。ちなみにシェフに聞いた特におすすめのひとつは、「レサン」だそうです!

 

というわけで、今回はその「レサン」3,300円(税込)を実食しましょう!

断面の層が美しさ、切り分けやすさもパーティーに最適「レサン」

 

猫:断面を見ると、カシス(クロスグリ)と洋ナシのムースとジュレの層が美しく出ています。

 

 

洋ナシの味わいが結構濃厚で、旨味のある甘さがしっかりと感じられ、カシスの酸味とよく合っています。周りのキャラメルフロマージュのムースは、あっさりとクセのないフロマージュにキャラメルの甘みとほろ苦さが感じられ、奥深い味わいで全体を優しくまとめています。

 

いつもながら、菅又シェフのケーキは、パーツそれぞれの味わいが濃厚でありながら、全体としてはまとまっており、食べた後の満足感がガッツリとあります!

 

編:これだけ種類があるとどれを選ぶか迷ってしまいますね!

 

 

猫:迷うのが、また楽しいんですよね。ちなみにブッシュ形というのは、分けやすいんですよ! 3等分でも5等分でも厚さを決めて縦に切ればいいだけです。円形や四角は均等に切り分けるのがなかなか難しいんですよ。子供だとケンカになりやすいし、大人でも「自分のは小さかった……」と、ずっと恨まれる(笑)。

 

編:確かに! 食べ物の恨みは残りますからね。ブッシュ形にはそんな利点もあるんですね。ちなみに、プチガトーも気になっているのですが……。

 

猫:クリスマスにぴったりな、グリーン系とレッド系の2つのケーキがおすすめですよ。

独り占めしたい時やおひとり様にも嬉しい。クリスマスカラーの2つのプチガトー

 

猫:「スワイユ」540円(税込)は、甘酸っぱいチェリーのジュレとしっかりとした味わいのクレームショコラの層を、ピスタチオのムースで包んだドーム形のプチガトーです。

 

 

焼き込まれた土台のアーモンドパウダー入りのメレンゲのサクサク感が、食感にアクセントを添えてくれます。

 

 

「レブリー」520円(税込)は、フランボワーズ、赤スグリなどの赤いベリー類を使ったフリュイルージュのムースとベリーのジュレを、ベリーのババロアで包んだ、まさにベリー尽くしの逸品。

 

 

周りは、アーモンドダイスを散りばめた苺とフランボワーズのチョコレートでコーティング。後味にほんのりとバラの香りがすると思ったら、ババロアにほんの少しバラの香りづけをしてあるとのこと。

 

編:美味しそう……両方食べたいです!

 

猫:「少人数なのでホールケーキはちょっと」いう方は、プチガトーがいいでしょうね。

 

編:これで今年のクリスマスケーキは確定しました!

 

猫:私も今から予約しなければ。

 

編:今年の先生のお宅のクリスマスケーキはこちらなんですね! 私も予約しなきゃ!

 

猫:予約の最終受付は12月16日(日)までなのでお早めに!

 

 

取材・文:猫井登

 

撮影:大谷次郎