TOKYO HIP BAR Vol.28

お通しは“本日の好奇心”。ようこそコーヒーカクテルの世界へ

カルチャーというお通しと

コーヒーの新しい可能性に会いに

 

何もしなくても次々と好みのものが差し出されるAI化された現代。そんな時代において、新しい出会いを提供すべく、仕掛けを作っているバーが東中野のとある場所にあります。

「自分の興味以外のものに会う場がなかなかないので、無理矢理出会わせようかと(笑)」と語るのは「COFFEE BAR GALLAGE」店主の塚田健太さん。豆のグラインダーは作るコーヒーによって3種類を使い分け、上質なシングルオリジンの豆をハンドドリップでいれるなど、このお店はいわゆる“サードウェーブ”のコーヒーショップですが、“サードウェーブ”を超える“フォースウェーブ”を広めるべく、コーヒーの新たな可能性に挑んでいます。

店内に入るとそれぞれの机に置かれているのは、小説や写真集。それらは“本日の好奇心”と呼ばれるお通しです。あるテーブルの“本日の好奇心”はロシアのタブロイド紙だったり、またほかのテーブルには「ゲド戦記」の作者アーシュラ・K. ル=グヴィンによるSFファンタジー「夜の言葉」だったりと、そのジャンルの広さがお店の奥深さを感じさせます。

 

一つ目の出会いを果たしたら、お店の定番であるブラックコーヒーを。焼き方を変えたさまざまな産地のコーヒーや、12時間かけてゆっくり抽出した水出しのコーヒーなど、ブラックコーヒーでこのお店の実力を見ることができます。そして、その後に出会ってほしいのが、このお店が“フォースウェーブ”と呼ばれるゆえんの「コーヒーカクテル」です。

 

フルーツ系の酸味のあるコーヒーは、ハーブが効いたジンやフルーツ系のリキュールに合う、と日々研究を重ねる同店ですが、ただ合わせるだけでは案外苦味がでてしまうもの。ちょっとした甘みをつなぐことなどでコーヒーカクテルとしての完成度が増すといいます。お店のシグネチャーとなっているのは「ミシェル」「ジャンゴ」「キングスマン」という映画にちなんだ3種類のカクテルです。

「ミシェル」はジャン=リュック・ゴダールの映画「勝手にしやがれ」の主人公の名前からとったもの。フランス映画にちなみ、使用するのはフランスのカシスリキュールと葡萄のウォッカで、そこに軽めのコーヒーソーダを合わせます。ヌーヴェルヴァーグの映画を思わせるモノトーンのカクテルは、コーヒーの香ばしさを残しながら、はじめに感じるのはフルーツの華やかさ。コーヒーから最大限のフルーツの風味を引き出す抽出技術と、アルコールとの組み合わせによる多層的な味わいのコーヒーカクテルが体験できます。

 

所狭しと本が並ぶ店内、映画と本を愛する店主、そして新感覚のコーヒーカクテル。新しい何かとの出会いを楽しみに足をお運びください。