古き良き食文化を継ぐ老舗がある一方で、次々と時代に添った新店が生まれる京都。けれど、その根底にあるのは、「おいしいもので人を幸せにしたい、喜んでほしい」というお店の思いです。ここ数年、新たに増えている会館にオープンした炭焼きビストロを、京都在住のライター・中井シノブさんが紹介します。

教えてくれる人

中井シノブ

京都在住ライター。京都を中心に関西の飲食店を取材紹介する。取材店は1.5万軒以上。趣味は外飯、外酒、猫とまったり。「あまから手帖」でコラム記事を連載中。

五条烏丸から徒歩圏内の「湯浅会館」には、新形態の飲食店が続々出店

大正時代に建てられた京町家を改装した湯浅会館

大正12年建築の京町家を6つに区切り、飲食店施設として2024年にオープンした湯浅会館。明るい光が差し込む中庭もあり、モダンな空気感もあるのが単なる町家改装店ではないところ。会館内には、焼肉店や立ち飲み店、ハイボールバーなどが次々に開業しています。会館内の1階、中庭に面した一軒が、今回ご紹介する「炭火ビストロ Nattsun」です。

京都らしさとパリの雰囲気を織り交ぜた店内

炭焼き場前のカウンター4席とテーブル8席。中庭に面したテラスがあって、天気の良い日には、テーブルをセッティング。テラスでも食事を楽しめます。営業時間は朝10時から夕方まで。炭焼きなど、その日準備した料理が売り切れることもあり、そんな日は早めに閉めることもあるようです。

店主の池口奈津子さんと、炭焼き担当の大島進一さん

店名のナッツンは、店主・池口奈津子さんの愛称。パリが大好きで、年に一度は旅して有名カフェを巡っていた池口さん。いつか「パリの香りがする店を開きたかった」といいます。先斗町で開いていた炭焼きワインバーをいったん閉めた後、2年間物件を探すなかでこの町家会館のプロジェクトを知り、「壁の色や調度、照明など、すべてに憧れのパリ感を出せる」と、ここでの再開を決めました。炭焼きを担当するのは、大島進一さん。飲食店での経験と独自で学んだ炭焼き技術を駆使します。

「焼きとりアンサンブル」(5種セット)1,760円

「炭火焼野菜のプレート」や「焼きとりアンサンブル」「牛肉もも炭焼き」といった本格炭焼き料理に加え、「パルミジャーノチーズの中で仕上げるショートパスタ」「オニオンパイ」など、どれもこれも魅力的。焼きとりや野菜など炭焼き料理は、注文が通ってから丁寧に焼き上げてくれるので、焼き加減は抜群。パリッとした食感や、ジューシーな肉質など食材の持ち味を実感できます。