〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、グルメライター武智新平さんがおすすめする根津の「ラ ファーメ」。イタリアで修業したシェフが作る、絶品自家製パスタをご紹介。

教えてくれる人

武智 新平

1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。

名店が代官山から移転。根津でも愛されるイタリアンレストラン

寺社が多く、歴史を楽しませる町・根津。渋い居酒屋や和食店が点在する中で、本格イタリアンが楽しめると人気を集めている店がこちら「ラ ファーメ」だ。路地にあり入り口こそ可愛らしいつくりだが、中はゆったりとした空間で落ち着ける雰囲気となっている。

根津一丁目交差点から言問通りを鶯谷方面に歩いた先を右手に入った、個性的な飲食店が点在するエリアに同店はある
店頭にはランチやディナーの内容、価格が書かれたメニュー表も

取材した日も、通りすがりの人が店をのぞいたり、ショップカードを手にしたり、興味を持つ様子がうかがえる光景が何度もあった。そうして立ち寄りたくなる空気が、外からでも感じられるのだろう。気軽に入店できるが、夜は予約するのがベターだ。

土壁の色合いとイタリアンレッドを生かした空間。席間もゆったりとしており、グループで訪れる方も多いそう
 

武智さん

入店しやすいかわいらしい外観。入ればトラットリア的なカジュアルさで温かみのある空間。料理だけに力を入れるのではなく、これから始まる食事への期待を高める演出が抜群です。

24時間料理脳。料理に本気のシェフだからこそ、ファンの心を離さない

同店は、以前は代官山にあり、シェフの秋野さんが研鑽を重ねた北イタリアの味を中心に、イタリア各地のおいしいものを楽しませる店として人気を博していた。
4年前に根津に移転することになったが、イタリア各地のおいしいものを、という思いは変わらない。しかし、高齢の利用客も多いエリアであること、住宅街に面した場所であることもあって、さらに食材にこだわり、食べ手に寄り添った温かな雰囲気の店を目指している。

秋野 誠シェフ(47歳)。専門学校を出た後、最終的にはイタリアンと思っていたものの、共通する部分が多い、とまずは日本料理店で料理の道をスタート。イタリアのヴェネト州やローマの街で修業を重ねて帰国。西麻布などでも腕を振るったのちに代官山にあった「ラ ファーメ」のシェフに就任

「日々食材の状態は変化します。その状態に合う調理、味付けをどうするか。常連の方の予約があれば、前とは違う料理を食べてもらいたい。ではどんなものがいいだろうと考えていると、店が閉まっても一日が終わらないんです」と、常に手がける料理のこと、食べ手のことを考えている秋野シェフ。心のこもった料理の数々に、最初は様子見だった近隣の方も今ではすっかりファンになり、足繁く通ってくれているのだとか。

鍋をいくつも使った調理も明確な意図があってのこと。手間を厭わない彼が最終的にまとめあげる料理たちは、既視感ある見た目であっても、一口食べて「わぁ」とため息が溢れる味わいだ。

 

武智さん

「なぜそうするのですか?」。調理するシーンを拝見しながら多くのシェフにその質問をしてきました。もちろん皆さん、その理由を教えてくれます。が、秋野シェフほど、これは○○のため、それは○○のため。そうすると合わせた時の味わいが○○になるんです、と順序立ててかなり細部に渡って答えてくれる方はいなかったかもしれません。経験則といえばそれまでですが、その答えに至るまでにどれくらいのアイデア、試作、失敗があったのだろうと思うと、「これおいしい」だけの言葉ではダメなんでしょう。でも、シェフの料理を食べて出てくるのは、ただただ「うめぇ」なんですよね(笑)。