【噂の新店】「TREMOLARE」
2025年は紛れもなくイタリアンの大当たり年だった。今の東京はおそらく、日本にいながらイタリア20州すべての郷土料理を味わい尽くすことができる稀有な都市だ。伝統と革新は昔からイタリアンとは切っても切り離せないテーマだが、そこに“日本人シェフがつくるイタリア料理ならではの独自性”を前面に打ち出す店が増えているのも見逃せない傾向だ。
オープンから2カ月足らずですでに人気店となった西麻布「TREMOLARE」のように食べ慣れた大人ほど目を細める店が、2026年のイタリアンのさらなる飛躍を予感させる。
白金の人気イタリアンのオーナーシェフが新たに打ち出すのは「僕が心から行きたいと思える店」

8席のみのカウンターイタリアンとして人気を集める白金「TATSUMI」。オーナーシェフの渡辺辰実さんは、料理を通じてゲストとコミュニケーションを取るなかで、おそらく時代の空気を読み取ったのだろう。食を愛する人々が、いま何を求めているのか。シェフの料理哲学をそのまま味わうことができるコースのニーズはもちろんある。だが、それと同じくらい自由に好きな料理を楽しむアラカルトを渇望している人も多いのではないか。なによりも渡辺さん自身がそうした店を望んでいた。

「僕がふらっと遊びに行けるお店があればいいなぁとずっと思っていたんです(笑)。2軒目に自分がやるならアラカルトで、お洒落だけど気取らない店がよかった。ワインもペアリングじゃなく、セットで出したり。アラカルトにしたのは若手の育成という思いもあります。イレギュラーなことが起きにくいおまかせと比べて、アラカルトはどのタイミングでどう調理をし、料理を提供するかということを考える能力が身につきます。奇を衒わずシンプルにおいしいと思える料理を出す、という根幹の部分は同じですが、席もカウンターあり、個室あり、テーブルありで多様なニーズを受け止められる店をつくりたかったんです」


カウンター、テーブル、個室……どんなシーンでも寄り添う設計に
イタリア語で“ゆらめき”を意味する店名通り、エントランスの階下に広がる空間はどこか艶っぽいムードが流れ、このところ席数を限定した小体な店が目立つなかで、そのスケールが新鮮にうつる。

渡辺さんが信頼を置く加藤一真シェフが調理にいそしむオープンキッチンのカウンター、6名まで利用可能な個室、ハイスツールのバーカウンター、ゆったりとしたテーブル席はそれぞれ見える“景色”が異なるため、何度も訪れたくなる設計だ。1度行ったら次は半年、1年後という特別感もいいが、食べ慣れた大人が通いたくなるような工夫が随所に散りばめられており、とくに季節の食材を使った前菜、パスタの種類の多さは白眉。

メニューに記載されたワードセンスもさすがの冴えぶりで「炭火焼き パン婚トマテ」や「白海老と蕗のとうのカペ トマトの影」など、会話が広がることうけあい。ワインボトルは1万円台から、グラス5杯のセット売りを用意しているのも、あれこれ楽しみたい向きにはうれしいところだ。

