〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は山本憲資さんがおすすめする、西武池袋線の石神井公園駅からすぐの場所にある中華料理店をご紹介!

教えてくれる人

山本憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、Sumallyを起業、2023年10月末に代表を退任し顧問に就任。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

練馬区石神井公園駅近くの雑居ビル2階に位置する「中華料理好又香」

西武池袋線の石神井公園駅から徒歩3分ほど、雑居ビルの2階に「中華料理好又香(コウユウカ)」はある。住宅街の駅近に昔からある町中華のようにも思えるが、その外観からあなどるなかれ。料理長を務める上海出身の夏良(かりょう)シェフは、上海の有名クラシックホテル「錦江飯店(Jin Jiang Hotel)」内のレストランで18年料理人を務め、そのうち雲南省にあるグループホテルでは約5年料理長も務めるなど骨太な経歴を持つ。2000年に来日すると、西麻布の中国宮廷料理店「北海園」で腕を振るい、2013年10月に自身のお店「中華料理好又香」をオープンさせた。

 

山本さん

石神井公園に用事があったついでに、どこかいいお店がないか探していて、入ってみました。

一緒にお店を切り盛りするのは、夏良シェフの従兄妹にあたる白慧(しらえ)和子さん。同じく上海出身で1994年に来日し、現在「中華料理好又香」ではサービスやマネージメントを担当している。

 

山本さん

正直、内装や雰囲気はとてもカジュアルなのですが、上質な味とのギャップが魅力的だなと思います。

町中華とあなどるなかれ! 特製ネギ油が匂い立つ「インゲン炒め」「上海風蟹玉」

「インゲン炒め」1,650円。料理はどれも3〜4人前はある大皿で提供される
 

山本さん

カジュアルな雰囲気ながら、上質な現地のテイストの料理が楽しめます。

上海料理に限らず、北京料理や四川料理など中国各地の料理を取りそろえる「中華料理好又香」。幅広い料理のラインアップに共通するのは、店名にある「香りが良くておいしくて、又食べに来たくなる料理」であることだろう。インゲンが入荷できたときだけ提供される「インゲン炒め」も、香り高さを感じられる一品だ。主役はインゲンという日本ではなかなか見ない炒め物だが、上海では一般的な料理だという。

筋をとったインゲンを油通しすることでやわらかくして臭みを取り、油を濾過してから豚のひき肉、刻んだショウガと少々のニンニク、自家製の醤油で味付けして、仕上げに刻んだ小口ネギとごま油を加え香りを立たせる。ショウガやごま油の香りをまとった肉味噌の味わいが口の中で花開き、ホクホクとした自然な甘さも感じられつつ、シャキシャキとしたフレッシュな食感のインゲンの良さをしっかりと引き出す。経験に裏打ちされたシェフの火入れの妙が光る。

 

山本さん

炒めものも味が凝縮されていて、とてもおいしかったです。

「上海風蟹玉」1,950円

「上海風蟹玉」もシェフが香り高さに胸を張る人気メニューだ。味の決め手はシェフ特製のネギ油。卵とズワイガニの身に塩少々と鶏ガラ、ネギを入れて混ぜ合わせ、特製ネギ油を使い中華鍋でサッと火入れを行う。艶やかな輝きの蟹玉をスプーンですくい口に含むとプルプル、フワフワと幸せな食感とともに、大ぶりのズワイガニの身のうまみやネギ油の上品な香りが広がる。

 

山本さん

おそらく推しメニューだと思うのですが、蟹玉も完成度がとても高かった。

この蟹玉をさらにおいしくしてくれるのが、黒酢ベースの甘い「よだれ鶏」のタレだ。塩味ベースだった蟹玉に酸味と甘さが加わり、蟹玉本来のうまみが際立つ。