目の前での鍋仕立て。ゲストと一緒にライブ感を楽しむ

炊き物として、お鍋を出すこともあるそう。この日はスッポンと松茸の小鍋。「ゲストの皆さんと一緒に楽しむような感覚で、目の前で作り上げます」とライブ感を大切にしています。

 

猫田さん

出汁を取った後のスッポン本体はなんと、まかないに回すそうです。そしてお客様にお出しするスッポンは新たに加えるのだとか。おいしい料理は原価率が高いのです……。

「通常だとたっぷりの酒、ショウガで炊くのですが、それだとスッポンそのものの味がどこにあるか分からなくなってしまう。なので酒は少量、ショウガも一切入れていません」とのこと。

臭み消しのために酒とショウガを使うのですが、処理が良いスッポンはそもそも臭みなどないのだそうです。そのためスッポン本来の上品な鶏肉のような味わいが前面に出ています。

緑色のアサツキが爽やかな香りを添えています

さらに松茸の香りも重なって、なんとも滋味深い一椀……!

「スッポンっておいしいんだ!」と初認識しました。あまり食べる機会がなかったし、こんなに身がゴロゴロと入ったスープも飲んだことがありません。

皮もプルプルとしていて、絶対コラーゲンの塊やろ!とニマニマしてしまいます。明日には肌が10歳若返って5kg痩せてウエスト3cm細くなっているに違いありません。※妄想です

「生ニシンの骨抜きで腰骨折れそうです」

北海道産のニシン。脂も乗っていて身がふっくら

取材中、日髙さんがひたすらハサミで何かの作業をしていると思ったら、なんと「ニシンの骨抜き」。生のニシンを見るのも大阪では珍しいし、世界一骨が多い(?)ニシン相手に一本一本骨抜きするなんて気が遠くなりそうです。

出典:カフェモカ男さん

身欠きニシンを使えば確かに楽なのですが、それだと「ふんわりした食感がなくなってしまう」とのこと。登場したニシンの一品は、これまで見てきたニシンの煮付けとは全くの別物!

味付けが柔らかく、ニシンの香りが立っています。魚の旨みも感じられ、歯ごたえもふわふわ。私の地元は北海道なのでニシンはよく食べていたのですが、ニシン観が変わりました。

風雅な小菓子でしっとり締めくくり

コースの最後には小菓子。こちらは葛焼きで、表面にもち米をまぶして焼き目を付けています。何かを連想させませんか? そう、月です。中秋の名月コースの締めくくりは満月を眺めながら。焼き目がクレーターのようですね!

 

猫田さん

葛粉につくね芋と鶏卵を練り込んだ、黄身餡の葛焼きです。コースのボリュームがかなりあるので、最後の一口サイズがお腹に優しい。

「型破りな和食店かもしれません」⁉

「彼がいなかったらここまでのお料理を提供できません」と、日高さんのことを信頼しています

ラグジュアリーな和食店なのに、お三方の掛け合いがフランクで、緊張せずにくつろげるお店。懐石デビューにちょうど良いと思います!

料理も「自分が食べたいと思うものを作っています」とのこと。ガッチガチの伝統的な和食ではなく、どこか独自のアレンジを加えた、現代的なエッセンスが織りまぜられています。

「和食店では同じ時期に同じ食材を使うので、なるべく当店らしい素材合わせや仕立てにすることを心がけています」

王道を敢えて外すのは、王道を知っているからできること。これまでの膨大な経験と知識があるからこそ、多彩なアレンジができるんですよね。これからも季節ごとの変化が楽しみです!

 

猫田さん

すでに食べログTOP1000に入っているのですが「曜日によっては予約が取れる日もありますよ」とのこと。でもファンがどんどん増えているので、今のうちに押さえておくことをオススメします!

撮影:三國賢一
文:猫田しげる