〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、フードライター小寺慶子さんがおすすめする羊焼肉専門店「ラムロック」。ラム肉のお店が手掛ける絶品の「冷麺」を紹介します。

小寺慶子

肉を糧に生きる肉食系ライターとして、さまざまなレストラン誌やカルチャー誌などに執筆。強靭な胃袋と持ち前の食いしん坊根性を武器に国内外の食べ歩きに励む。趣味はひとり焼肉と肉旅(ミートリップ)、酒場で食べ物回文を考えること。「イカも好き、鱚もかい?」

銀座の路地裏にお茶目な羊のグラフィックが目印の隠れ家

肉好きにとっては、銀座の中でも“サンクチュアリ”的なロケーション。なにせ、路地をはさんだ向かいには日本を代表する、ステーキの超名店がある。牛肉愛はもちろん健在、最近はヘルシーな羊肉も大好物というライターの小寺慶子が訪れたのが、今年1月にオープンした「羊焼肉 ラムロック」。

路地を照らす看板には羊をイメージした可愛らしいアイコンが

聞けば、岩手県で会社を営むオーナーが、羊好きが高じて銀座に焼肉スタイルで羊肉を楽しめる店をオープンしたのだとか。細い路地の奥に佇む店には白い暖簾が掲げられ、一見すると和食店の趣。夜のみの営業なので、あたりが暗くなるとちょっとひそやかなお忍びムードに包まれる。ところで、羊焼肉の店で麺?と疑問を感じる方も少なくないはず。焼肉の締めといえば……。肉のこってりとした脂を流してくれて、たとえ冬でも満腹でもつるっとおいしく食べられる、あの冷たい麺。それでは、羊焼肉と締めの麺の、うめぇー世界をのぞきに。いざ、ご麺ください!

白い暖簾が和の雰囲気を醸し出す。「こんな場所に羊の焼肉?」というギャップにも好奇心がそそられる

暖簾をくぐり、店内の階段を上がるとそこに広がるのは、ヨーロッパのアンティーク装飾をイメージしたという空間。銀座という場所柄もあって、平日は深夜3時まで営業しているため、クラブのアフター使いで訪れる常連客も多いのだとか。いわゆる大衆焼肉然としたムードというより女子会やデート、カジュアルな会食にも使えそうな雰囲気で、赤いソファ席はゆったり座り心地よし。店の至るところに羊のインテリアが飾られ、ポップな遊び心にも気分がなごむと評判だ。

外観とのギャップに遊び心を感じる空間。深夜0時を過ぎても4人以上のグループ客で賑わう。赤いソファ席は「背景にして写真を撮ると映える」と人気
店の至るところに可愛らしい“隠れ羊”が。うっかり眠気に襲われないように、何匹いるか数えてみて
 

小寺さん

銀座の路地、という響きだけでも気分が高まりますが、外観と内観のギャップにも心惹かれます。深夜焼肉の罪悪感も羊肉なら帳消しに!?

深夜でも賑わう店内で「いらっしゃいませー!」とにこやかに迎えてくれたのは店長の阿部さん。全国的にめん羊の取り組みが注目されている東北出身で自身も大の羊好き。とくに「ラムロック」の店長として日々、羊肉に触れるようになってから、改めてその魅力を実感しているそう。

店長の阿部さん

「ラムは臭みがあって苦手、という方も少なくないと思いますが、うちで扱う羊肉はクセが少なくて、とても柔らかいので食べやすいという感想をいただくことが多いです。羊に含まれるL-カルニチンという成分は脂肪燃焼効果があることでも知られているので、ダイエット中の人にもおすすめ。ヘルシーかつパワフルに、おいしい羊焼肉でスタミナをつけていただけたらうれしいです」

ラム焼肉専門店が「締めにはこれ!」と太鼓判を押す、黄金の冷麺はこれだ!

生ラムの肩ロースやランプの焼肉をはじめ「これを食べなくちゃ終われない!」と常連の心をわしづかみにしているのが、盛岡黄金冷麺。岩手県の盛岡では、冷麺はじゃじゃ麺、わんこそばと並んで“三大麺”と言われるほどメジャーで、焼肉店の締めメニューの大定番。その食文化を伝えたいと「ラムロック」では、羊焼肉というスタイルに合わせてアレンジを加えた冷麺を提供している。

盛岡黄金冷麺(特製辛みダレ別添え)1,100円。「お腹がいっぱいなので」とミニサイズ(660円)をオーダーするも「やっぱり通常のサイズにすれば良かった」という人も多いのだとか。途中で辛みダレを加えて味変するのもおすすめ!

黄金色の器に盛られて運ばれてきた冷麺はスープがキラキラと光り輝き、食べる前からありがたい気分に。スープをひとすすりすると、旨味や甘みが一体となって口に広がり、羊焼肉で満たされたはずの食欲を追刺激。もちっ、つるっとした麺は喉越しも良く「これは別腹!」とばかりにするすると胃袋におさまっていく。

シンプルだからこそ、ひとつひとつの工程を丁寧に

まず、熱湯で2分ほど茹でてから冷水で麺を締める。水で粗熱をとることで舌触りや食感がさらに良くなるそうだ。

冷水でしっかりと締めた麺に牛骨や鶏ガラを煮出した“黄金”スープを注ぐ。クリアだが、濃厚な旨味とコクがあり後を引くおいしさだ。

ストレートの中太麺はややとろみのあるスープとの絡みも抜群! さっぱりと食べられるので、大盛り(1,430円)を注文する人も多いというのも納得だ。

 

小寺さん

さっぱり系の冷麺も好きですが、こちらの冷麺はマイルドな風味でスープと冷麺のバランスがすこぶるいい。羊焼肉の締めはもちろん、一緒に頼んで箸休めとして食べるのもおすすめです。半分食べてから、唐辛子ベースの辛みダレで味変をすれば2度おいしい!