口に入れる前からそばの香りに包まれる、多幸感ある一皿

やや色の濃い玄挽きそばは、穀物の甘い香りをまとって現れる。まずは一口そのまま味わうと、玄挽きらしい甘みや香りが立ち上るが、殻由来の雑味やえぐみは鳴りを潜めている。

細打ちのしなやかさと相まって、するりと喉を通過するのが心地よい。この穀物の風味と香りを味わうために、つゆを付ける前にぜひ塩でというのもうなずける。

玄挽きそば 1,320円
 

浜田さん

玄挽きそばにはつゆと塩、山葵が別皿で添えられていますが、そばの香りが十分強いので、まずは何も付けずにいただきます。続いて、山葵だけを添えて大半を食べ切り、最後の2口程度、山葵と塩の両方でいただいています。個人的には、つゆは必要ないのではと思うくらいに料理として成立していますが、味変として使うのはありかもしれないです。通常、そばの香りを立たせるために塩は有効ですが、それすらなくても良いと思えるくらいにそばのみで成立しているのが素晴らしいです。

そば以外のメニューでオーダー必須の逸品はこちら!

修業先から受け継いだという看板料理が「お通しにしん」。5日ほどかけて煮あげた大きなにしんはふっくらとして、滋味深い味わい。一緒に炊いた昆布はにしんの旨みを吸っていい酒のあてになってくれる。

お通しにしん 1,430円

臭みがなく、味の濃い那須御養卵を使った「玉子焼き」。直前に火を止めて最後は余熱で火を入れている。ふわっとした感触で、固まる寸前の中心部はとろりとなめらかだ。

玉子焼き 880円

高級住宅街・目白の古民家に移ってさらなる躍進を遂げた「蕎麦おさめ」。ここでは唯一無二の「玄挽きそば」と極上のそば前、そして緑したたる坪庭の景観を眺めて満ち足りた時間を過ごしてみたい。

※価格はすべて税込。

取材・文:岡本ジュン、食べログマガジン編集部
撮影:八木竜馬