そばも季節の逸品も食べられる、ランチコースの内容とは?

店の顔であるそばも一緒に味わうことができる、ランチのコースは3,500円、全4品で構成。まずは会席料理で言うところの先付けのような、旬の食材を活かした5種類の料理からだ。どれも出汁をきかせた上品な味付けでありながら、食材の良さを引き立たせている。

こちらは季節ごとに内容が変わり、その日の仕入れによって決めている

写真左上の小鉢は春の味覚の一つ、駿河湾で取れる桜海老が入ったおひたし。同じ旬の物であるうるいを合わせたこの一品は、季節感を一層感じさせてくれる。

 

山本さん

このお店をおすすめしたい理由の一つは、ランチもやっていて、使い勝手がいいところ。ランチコースは、ボリュームも控えめにつまみから楽しめますね。つい昼から飲んでしまいます。

アオリイカもムラサキウニもとても鮮度が良いので、綺麗な色・形だ

そして、2品目はお造りである。取材時に伺った日は岩手県産のムラサキウニと三重県産のアオリイカの2種。アオリイカは活き締めをして数日置き、程よく熟成をした物で、ムラサキウニは出す直前でさばいている。どちらも一番旨みが強い、ベストな瞬間で食べられるのがうれしい。

添えられているワサビは静岡県産のすりたての物で、香りが高い

アオリイカは繊細な切り込みが入っていることもあり絶妙な食感。そしてムラサキウニは、鮮度が抜群なので瑞々しく甘味も強い。お造りは旬の物や良い魚介を入手したときなど、内容は変わるとのこと。

蒸し物は魚介もあれば肉を使った物もあり
そばの味がダイレクトにわかるせいろそばを今回はセレクト

石臼でひいたそばの実から出る殻の部分である、ひきぐるみを入れることによって、そばの味と風味、食感をより一層引き立たせているそう。そばは自家製で、粉から手作業で混ぜ、打ち立てを出している。ちなみにそば粉と小麦粉の配合の比率は9:1だという。ゆくゆくは自前の石臼を手に入れ、製粉からやりたいとのこと。店主の話を聞けば聞くほど、そばへのこだわりが随所に詰まっていると感じた。

そばをよく見るとひきぐるみがあるのがわかる

またそばつゆも、そばに引けを取らないクオリティになっている。香りが強い2年物の熟成した本枯れ節と昆布で出汁をとり、かえしを合わせている。そばに半分だけつゆをつけて食べてみると、塩味のバランスもちょうど良くそば粉のポテンシャルをしっかりとアシストしている。

もちろん、この「せいろ」(900円)のみを単品のメニューとして注文することもできるので、好きな1品料理と組み合わせても楽しめる。

 

山本さん

おそばもおつゆもおいしかったです。

ランチコース以外におすすめの一品料理

天ぷらはランチコースでもたまに提供しているそう

次は酒の肴にもちょうど良い、単品の注文ができる「海老と旬野菜の天ぷら」(1,200円)を紹介する。主役の海老を食べてみると薄い衣が品良く付いており、サクッとした歯触り。海老の身の旨さがギュッと閉じ込められている。写真奥にある緑色の葉と、手前の白い茎は山ウドである。葉の部分と茎とでは、食感はもちろん、味も個性も違う。葉の爽やかな苦味に、茎のほくほくとした甘味が楽しめる。

 

山本さん

衣も薄く揚げられていて、軽めでおいしいです。

これから推していきたい新メニュー「そば屋のヒレカツサンド」

なんと取材日の3日前に正式に販売したという、新登場の「そば屋のヒレカツサンド」(1,500円)。豚肉に少し赤みがあるのは低温で調理しているからだ。じっくりと火を通すことで、肉のジューシーさを損なわず、食感も驚くほど柔らかい。タレはソースではなく、そばつゆに使っている、かえしと酢味噌を合わせた特製の物で、そば屋ならではの味付けに。薄い衣に焼いた食パンの香ばしさも相まって、サクサクと一気に食べてしまうほど。

今回はランチコースと単品メニューを紹介したが、ディナーコースもファンが多い。日本酒やワインなどのアルコールも豊富なので、そばや日本料理とのペアリングを楽しみに来店する人も少なくない。店主が気さくなので、料理や酒についていろいろと聞いてみるのもおすすめだ。

※価格は税込。

撮影:千葉英里
文:千葉英里、食べログマガジン編集部