定食王が今日も行く!

創業81年の老舗で、名物鯖の味噌煮を凌ぐ人気の新名物「A定食」

民生食堂として創業から81年

進化し続ける究極の食堂

 

西武新宿駅から6駅15分の野方駅。今回紹介するのは大衆食堂の老舗中の老舗、「野方食堂」だ。大学時代、神奈川県に住んでいた私は、東京で遊んでいて終電を逃すと、西武新宿線沿いに住んでいた兄の家に泊めてもらっていた。その当時、よく訪れていた食堂の一つが「野方食堂」だ。野方といえば「アルテリア」のメロンパンや「野方ホープ」、「花道」の味噌ラーメンなど、隠れたグルメスポットでもある。

 

創業は昭和11年、創業直後は東京都指定の民生食堂だったそうだ。当時は米の配給制に伴い、食堂が登録制になり外食するのに「外食券」が必要だった時代だ。闇米が出回るのをふせぐためだったが、外食券制度廃止後も指定食堂は「民生食堂」として残り、わずかであるが減税優遇を受けているそうだ。店内には創業者でもある、おじいさんの写真が飾られている。現在の店主は3代目だ。創業当初からメニューにある「鯖の味噌煮」は一子相伝の味。代々受け継がれる味噌の味付けは、門外不出だそう。

 

定食メニューだけでも40種類。鯖の味噌煮に勝る、一番人気は3代目が研究し、改良を続けた唐揚げ。そしてその唐揚げと豚の生姜焼きがセットになったA定食が野方定食の新名物だ。

 

 

3代目の挑戦!一子相伝の味を

進化させた唐揚げは年間5万個!

 

これが年間4万食はオーダーされる野方食堂の「A定食」、920円。夢の共演ともいえる鳥の唐揚げと豚の生姜焼きという最強コンビだ。これで1,000円以下というのもうれしい。大きな値上げをせず、地域を大事にしている大衆食堂ならではだ。3代目はもともとあった唐揚げメニューを、下味の付け方や揚げ方にいたるまで改良に改良を重ね看板メニューにしたそうだ。2ヶ月ごとに和風あんかけや、黒酢など異なる味付けのアレンジ唐揚げが登場する。そこにも3代目のチャレンジ精神が見受けられる。

 

鶏の唐揚げは口にいれると、皮がサクサクで中には肉汁がぎゅっと詰まっていて、とってもジューシー。本醸造の濃口醤油に漬け込んだ唐揚げは、ご飯にぴったりの濃口味だ! 唐揚げにかぶりつき、こぼれ落ちる肉汁をご飯でキャッチしながら、じっくり白飯を一緒にがっつりいただきたい!

 

豚肩スライスを生姜がたっぷりのソースで炒めた生姜焼きは、醤油だれの甘っからさと生姜の爽快感が程よくマッチして、これまたご飯が進む。

 

極め付けは、プラス170円で変更できる豚汁だ! 野菜もお肉もたっぷりの秋冬の限定メニューだ! 野菜が足りない人にもオススメの一品。

 

店内には近所のお年寄りたちや、おじさま方、子供連れの母親など、さまざまな客層で溢れている。どんな人にも愛されるメニューを、どれも丁寧に時代とともに進化させながら提供し続けるのが大衆食堂の底力なのだと感服した。

 

 

 

 

2代目考案の煮込み豆腐定食で

歴史を味わう

 

2代目が考案したという煮込み豆腐も人気のメニューだ。甘辛く煮込んだ豆腐と肉は、これを目当てに遠方から訪れる人もいるほどだという。仕込みに時間がかかるため、数量限定で売り切れ次第終了のため気をつけて。

 

そして、もうひとつ特筆したいのはお袋の味の小鉢代表、切り干し大根。なんと「野方食堂」の切り干し大根はカレー味なのだ! 一度食べると忘れられない味になりそうだ。

 

東京商工リサーチによると、業歴が30年以上の店が「老舗」と呼ばれ、既存の企業の32%と言われている。そのなかで81年続く食堂は「まだまだ、あと19年!」と100年を目指して、日々進化し続けている。変わらないために進化し続ける。「野方食堂」のその姿勢に頭が下がるばかりだ。