〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、ライター・大石智子さんがつい足を延ばしても行きたくなる、とっておきのスパニッシュをご紹介。

教えてくれる人

大石智子

出版社勤務後、フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。バー巡りも欠かさない。スペインに行く頻度が高く、南米も好き。拠点は東京だが地元である静岡にも毎月滞在し、主に中部エリアを食べ歩く。柴犬愛好家。Instagram(@tomoko.oishi)

現地さながらのカタルーニャ郷土料理が楽しめる

立地は玉川学園駅から徒歩5分の小径沿い。駅前の通りを真っ直ぐ進むと、「CASA MALLA(カタルーニャ厨房 カサマイヤ)」という店へ導く矢印が見えてくる。矢印通りに右折したところにあるマンションの1階が店の入り口だ。

オープンは2011年4月だが、玉川学園駅という都心から少し離れた立地ゆえ初耳という人も多いだろう。店に入ると都心の流行店とはまた違う温かで個性的な雰囲気だ。

目印は赤と黄色からなるカタルーニャの旗。小窓が並ぶ壁の間にリースの掛かった扉があり、かわいらしい佇まい

印象的なのはグエル公園をイメージしたタイルのカウンター。その上にどんぐりを食べる豚の置き物もあったりして、着席してすぐに和んでしまう。

左官屋によりさまざまな形のタイルがはめられたカウンター。カウンター8席、テーブル8席
 

大石さん

カウンターのタイルは鮮やかなグエル公園の配色を食事の場所に合うよう柔らかく調整したそうです。グリーンのクロスや赤い壁など、型にはまらず、でもまとまっている世界観に欧州の空気を感じられます。旅のできないコロナ禍で初訪問したのでうれしくなりました!

「カサマイヤ」という店名は、シェフの増渕友子さんが働いていたカタルーニャのレストラン「エルス カサルス」のシェフの実家の屋号だ。

イタリアでの修業を経て「エルス カサルス」で腕を磨いた増渕友子さん。現地ではパティシエもまかされていた

「エルス カサルス」はバルセロナから北に1時間ほど行った17世紀の邸宅を改装したレストラン。山の中腹にあり周りは自然と家畜だけ。シェフの兄たちが育てる牛豚鶏や野菜を扱い、「生まれてからテーブルにのるまで」をテーマに食材と向き合う場所である。加工肉が素晴らしいだけではなく、ハイガストロノミーとして有名シェフも多く通う店。そこで6年4カ月働いていたのが増渕友子さんだ。

 

大石さん

エルス カサルスに行った時に、シェフのオリオルさんに“うちで修業していたトモコが東京に店を出しているんだ。彼女はカタルーニャ語まで話せて腕もいいし素晴らしいんだよ!”と薦められてこの店を知りました。増渕さんの評価が高いおかげで日本人によくしてくれる。あの素晴らしいシェフが推薦するなら行ってみたいと思いました。

「カサマイヤ」では、増渕さんが現地で学んだことをベースに、自分流に昇華した料理を提供。カタルーニャの郷土料理を感じながらも、日本の旬の食材を使っているから季節の変化を楽しむこともできる。

メニューには手作りソーセージや煮込み料理、パエリアまで、ここを訪れるスペイン人も笑顔になる気取らない料理が並ぶ。コロッケが1個250円、ソーセージが1本450円、コースでも5,700円と現地の日常を思いだす良心価格もありがたい。ワインはカタルーニャを中心にスペイン産のみを揃える。