7つの素材が融合した名物「錦そば」を再現

お次は「一番町吉田」の名物の一つだった「錦そば」(ランチ1,200円)。

七色の虹をイメージし、上に水菜、ごぼうとニンジンの炊き合わせ、薄揚げの甘煮、刻み海苔、錦糸卵、ネギをのせている。一見、7つもの素材がのると喧嘩しそうだが、シャキッとした水菜や風味のある炊き合わせなどがそばとからむことで全体に歯ごたえが生まれると同時に、噛むごとに違ったおいしさに変貌する点が秀逸。

例えば、最初から全体をざっくりと混ぜるもよし、まずは具を少し食べた後にそばとつゆとをからませるもよし。名店の味を見事に受け継ぎ、通をうならせているのに納得だ。

水菜や薄揚げの甘煮などのコリコリ、シャキシャキとした食感が、味にメリハリをプラス
ごぼうとニンジンの炊き合わせをはじめ、一つひとつ丁寧に調理することがおいしさの秘訣
 

柏原さん

「一番町吉田」の名物を見事に復活させているからすごい。濃いめのつゆですが、たっぷりの具と混ぜ合わせるとちょうどいい。細かく切られた具は美しく、そばと口当たりが一緒になるように仕上げています。

店主が手をかけたオリジナルの「鴨きざみそば」

最後に、秦さんが考案したオリジナルの「鴨きざみそば」(ランチ1,200円)だ。注目したいのが具の主役となる合鴨肉のももで、単に焼いているのではない。塩と胡椒を振って、タマネギやニンジンと一緒に酒蒸しにした後、さらに表と裏を15分ずつ焼き、味に深みや甘さを加えるため一晩寝かせるこだわりぶりだ。

そばの上にのせている薄く刻んだ合鴨肉は、野菜と酒蒸しにすることにより旨味がアップし、さらにお揚げと天かすを加えてコクをも相乗している。バランスに秀でた、秦さんの腕が光る一品になっている。

酒蒸しにすることで野菜の美味も加わった合鴨肉のももが絶品。お揚げと天かすとの調和も見事
 

柏原さん

私は冷を頼んだので、つゆと一緒にかき混ぜて食べましたが、合鴨肉、お揚げ、天かすの硬さやニュアンスが三者三様で、とてもおいしい。鴨南そばは合鴨肉の脂のうまさを味わいますが、これは合鴨肉の旨味を楽しむそばと言えます。

そばや和食に合う日本酒などをラインアップ

そばや和食に合うよう、全国からえりすぐりの日本酒や焼酎、ワインなどの銘酒をそろえ、中には入手困難の銘柄も存在。また、ディナーでは、その日の食材で作る天ぷらといった和食とそばを堪能できる「天婦羅とお蕎麦のおまかせコース」(6,800円~)を展開しているので、好みのお酒と一緒に楽しもう。

松崎酒造店「廣戸川」特別純米、亀の井酒造「ばくれん」超辛口吟醸、齋彌酒造店「雪の茅舎」純米吟醸など1合900円~
店では、厨房で腕を振るう秦翔太さん、ホールに立つ奥様の芽維さんがお出迎え

※価格はすべて税込。

取材・文:中沢文子
撮影:齋藤ジン