〈2022 食通が惚れた店〉

新型コロナウイルスによる混乱は続くものの、飲食業界も賑わいを取り戻した2022年。油断のできない状況は続きますが、各店が工夫を凝らし、おいしいものを届けようと努力しています。

そんな2022年に、グルメ情報を熟知した有識者が惚れ込んだお店や料理についてアンケートを実施。「最も印象に残った店」「2,000円以下のお手軽グルメ」をうかがいました。

今回は、連載「森脇慶子のココに注目」でおなじみ、フードライターの森脇慶子さんにお答えいただきました。

教えてくれる人

森脇慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

2022年のベストレストラン

Q. 2022年、最も印象に残った飲食店を教えてください

A1. 「明寂」です

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蕪の水煮   出典:phili204さん

「明寂」の店主中村英利さんの“だしに頼らない日本料理”という考え方に深く共鳴しました。その代表的な一皿が、野菜の水煮です。旬の野菜を、水だけで(おそらく)優しく蒸し煮にした一皿で、特に最初の訪問時にいただいた蕪の水煮は、その清廉な味わいに思わずため息が漏れました。見た目のシンプルな美しさに加え、蕪本来の風味がそれ以上でもなくそれ以下でもない絶妙なさじ加減で引き出されていました。見えないところの手間暇を惜しまない。そんなスタンスも、この店が好きな理由です。

A2.もう一軒は「膳処末富」です

撮影:佐藤潮

“焚き火料理”というコンセプトのもと、さまざまな熱源と食材とのマリアージュを探求する「膳処末富」ご主人・末富信さんのスタンスには、とても興味深いものがあります。ヒレ肉には甘い香りを纏わせたいとフライドオニオンを炭火の上に散らし、牛タンはウイスキーのオーク樽で炙る、といったように素材に合わせて様々な香りのバリエーションを考える手法に新しさを感じました。

アンダー2,000円のお手軽グルメ

Q. 2022年に食べた〈2,000円以内の感動の味〉を教えてください

A. 「浅草 ひら山」の「かけ蕎麦」900円と「天つき蕎麦」1,900円です

写真:お店から

自家製粉石臼挽きの十割そばは、もちろん手打ち。しなやかな喉越しのおいしさは言わずもがな、なんと言っても、そのかけだしが出色の出来。本枯節をベースに干し椎茸の旨味を足しただしは、ふくよかなコクが特徴です。甘みはなく、スッキリとした味わいの中、深い余韻が残る逸品。このだしとそばだけで完結する潔いおいしさです。

※価格は税込です。

※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額等を掲載しています。最新の情報はお店にご確認ください。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部