ファストフードの元祖とも言える、立ち食いうどん・そば。中でも駅構内で見かけるこれらの店は、早い・安い・うまいの典型的な飲食店として多くの人に利用されています。
現在、改装真っ只中の広島駅において、かつて在来線1番ホームで50年近く営業してきた立ち食いうどん・そば店「2売店うどん」が店名と場所を変えて再出発。2014年から「驛麺屋(えきめんや)」として親しまれています。
〈広島人のローカル飯・ソウルフード〉
明治34年、山陽鉄道株式会社の承認を得て、中島卯吉により創業した「広島駅弁当」(創業時の名称は「中島改良軒」)。広島駅構内での弁当販売を手掛けるも、昭和20年の原爆投下により社屋や工場が焼失。その後は松原町に新社屋を建設、若草町(現、東区光町)への移転を経て、広島をはじめ近隣地域の駅弁製造・販売や給食事業などを展開しています。
多くの駅弁会社がそうであるように、同社もまた、駅構内での立ち食いうどん・そば店も経営。駅弁と立ち食いうどん・そばの二本の柱で、広島の鉄道食文化を担っています。
教えてくれたのは
浅井ゆかり
大分県出身、広島市在住。3児の子育ての傍ら育児雑誌で始めたレポーターがきっかけでライターに転身し約10年。タウン情報誌をメインに、県や市町の広報誌、フリーペーパー、Webサイト、書籍などさまざまな媒体で活動する。関わった人が明るい気持ちになれる取材&記事制作がモットー。得意分野はグルメ、観光、地域関連。
2014年にパワーアップして帰ってきた、広島駅の立ち食いうどん・そば店
2025年春の開業を目指し、大規模な建て替え工事が行われている広島駅。完成後は路面電車が2階へ乗り入れ、大型商業施設やシネマコンプレックスが併せて開業するとあり、多くの県民が心待ちにしています。
ペデストリアンデッキが伸びてガラリと様変わりした北口、美装化された新幹線コンコースなど、段階を経ながら徐々に変貌を遂げていく中で、在来線1番ホームにあった「2売店うどん」が新跨線橋(しんこせんきょう)の在来線構内にリニューアルオープン。「驛麺屋」の名で、変わらぬ味を提供しています。
店の母体となっているのは、広島駅構内で駅弁の販売を手掛ける「広島駅弁当」。暖簾のすぐ横には「駅弁」のロゴが堂々と掲げられ、ここ広島駅で鉄道食文化を一手に担ってきた同社の自負がうかがえます。
もともと在来線1番ホームで営業していた時は、「2売店うどん」という、きちんとした店名も持たない立ち食いうどん・そば店でした。それでも日々鉄道を利用するサラリーマンや学生たちに、早くて安くてうまい店として浸透し、長く愛されてきたのです。
2014年のリニューアルオープンにあたり、新たに付けられた店名にはあえて「駅」の旧字を使用。長い歴史のある会社が運営する店であること、これからもその歴史を変わらず継承していきたいという思いが込められているそうです。
ちなみに、「そば・うどん」ではなく、「うどん・そば」とうどんの表記が先なのは、うどんのほうが注文が多いから。関西や四国からの人口流入が多い広島は、そばよりもうどんが食文化として根付きやすいのだと教えてもらいました。
メニューはうどん、そばとそれぞれ13~14種類ずつあり、食券を購入して注文します。変わらぬ品や新メニュー、トッピングやご飯類などさまざまですが、驚くべきはその安さ! 人気商品をいくつか紹介してもらいました。