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おしゃれフードトレンドを追え! Vol.46
京都通を気取りたいなら、おしゃれ業界人が信頼する店へ
おしゃれ業界人に京都嫌いはいない。なぜか? それはとにかく「京都に詳しい人=知的でお洒落」という方程式が昔からあるからだ。ご多聞にもれず、私も京都への憧れは強い。出版社に勤めていた頃は、夏は浴衣ファッション撮影、冬はグルメ取材と理由をこじつけては京都へ行っていた。詳しくなったら自慢できるなぁと思いつつ、知れば知るほどその果てしなさにおののいて、自分では全く開拓できずじまいだった。なので京都出身の仕事仲間やバブル時代に祇園遊びを謳歌した先輩たちが、おすすめの店に連れて行ってくれた。
一流の趣味人は京に詳しい。ファッション業界の重鎮の中にも京に別宅を構える方が多く、食通のおしゃれエディター&プレスたちは毎年恒例の“京都で浴衣の会”や“京都で鱧を食べる会”などを行なっている。
ファッション業界人たちのインスタグラムによると、彼らが京都に行く回数は少なくとも年1回。好きな人なら年2〜3回は当たり前のようだ。
さて、お洒落な人たちは一体どこに宿泊するのか? というと最近はホテルではなく、町家をリノベーションした宿を取るのがイケているようだ。築100年以上の古民家をモダンにアレンジした宿がたくさんできており、今回は昨年オープンしたばかりの「suki1038 高台寺」に泊まってみた。
東本願寺近く、石塀小路にある宿は、そのスタイリッシュさもさることながら、置いてある調理家電やアメニティのこだわりには目を見張るものがあった。お洒落家電の「BALMUDA」のオーブン、「VERMICULAR」の炊飯器に、米料亭「八代目儀兵衛」のお米マイスターが選んだお粥に合う米、上生菓子は老舗のセンスと技術を受け継いだ「聚洸」、コーヒーは知る人ぞ知る「IWASHI COFFEE」と、食系アメニティへの情熱がすごい。
おしゃれな上洛人は、京都への食の期待値が高い!ということを見越してのレベルの高さだった。
さて、ファッション業界人が憧れまくる京都の町。2020年、彼らが集うのはこんな店! スタイリッシュな社交場、肩肘張らない本格派、カジュアルな大衆感、締めくくりはパリっぽく。
おもてなしが詰まった京の粋な社交場:六条河原院 讃(祇園)
住宅地の中に佇む隠れ家風な会席料理店、讃はファッション業界で知らない人はいない有名人、慎太郎ママ(銀座「サロン・ド・慎太郎」)の店。和食の実力もさることながら、空間作りやおもてなしの心が詰まった夜の社交にぴったりの空間だ。
東京・神楽坂で骨董店を営む慎太郎ママの目利きで選ばれた美しく可憐な食器の数々が、楽しむ幸せを教えてくれる。美しく飾られたフグ刺身、優しい味わいのすり流し、サクサクのかき揚げをのせた小さなお茶漬け。花形に彫られた木のお盆の中に、骨董の豆皿やお椀が並んだ世界観は、思わず「かわいい!」と盛り上がる。
最後に骨董の七輪で皮をパリパリに炙ったほうじ茶アイス&餡の最中を食べれば、旅の盛り上がりは最高潮に。2階はお座敷になっており、リリー・フランキーさんが描き下ろしたという金の屏風の前で舞妓さん達が踊ることもあるのだとか。店の前には高瀬川と桜並木があり、春は桜、秋は紅葉が楽しめる。ランチコースは6,000円から楽しめ、手の届きやすい金額で京都を味わえる。落ち着いた雰囲気で、防音の個室もあるので賑やかな接待にぴったりだ。
正統派割烹をカウンターで肩肘張らずに:祇園 おかだ(祇園)
祇園のど真ん中に構える一軒家、京町家の構えは気軽に入りづらそうに見えるが、店内に入りカウンターに座ると飾らない雰囲気に心和む。
4種類のおまかせコースのほか、お造り、焼き物、煮物、揚げ物など、それぞれが十数種用意され、80種以上もの一品料理を毎日用意する板前割烹だ。刺身は魚のおいしさはもちろん、隠し包丁のおかげで食感が絶妙。
餅や海老が入った大根のすり流し、サクサク濃厚な雲子と九条葱としっとり甘い海老芋揚げのとろみあんは割烹ならではの上品で優しい味。昆布とかつおの出汁がとにかく味わい深く、出汁やすり流しのつゆの中に埋もれてしまいたいほど引き込まれた。おいしいもの好きの友人と日本酒を酌み交わしながら堪能したい、接待でなく自腹でリピートしたい心温まる店だ。
京都で和食に飽きたらここへ!:中國菜 大鵬(二条城)
外観は大きなネオンの看板。カジュアルな雰囲気が好感度高い、大人気の四川料理店。京都の中華はうまい!と通たちが口を揃えるが、ここに来ればその実力に納得できる。地元の人たちにも愛されている大鵬だが、ナチュラルワインを豊富に揃えているので、東京のお洒落人たちの間でも有名だ。
幅広の春雨が盛られているので残ったたれに絡めて食すよだれ鶏に、肉汁飛び出すモチモチ水餃子、麻婆豆腐など山椒の具合や辛さのバランスが最高と評判だ。大人数でワイワイと、和食に飽きた頃に行けば京都中華の懐の深さを知ることができる。
自然派ワインとおいしいものを和みの空間で:くまのワインハウス(東丸太町)
古い書店を改装した内装が魅力の「くまのワインハウス」はビストロメニューもある自然派ワインバー。京大熊野寮の北向かいに建つことから“くまの”と名づけられ、2019年1月にオープンして以来、連夜ワイン好きが集っている。書棚を活用した棚にワインボトルが並ぶレトロな内装。物腰柔らかな男性店主が一人で切り盛りする店内にはクリエイティブ系の素敵な人たちが溢れ返っている。
フワッフワのオムレツ、オレンジの香りが爽やかなシャキシャキのキャロットラペ、ゆで卵マヨネーズ、パテドカンパーニュ、京都の北山にある土日営業の超人気こだわりパン屋「吉田パン」のパン、「サルシッチャ!デリ」の自然な味わいのサルシッチャなどワインに合う素朴でパリっぽいおいしいものが揃う。私が訪れた日にも、店内奥で飲んでいたのは東京から来た雑誌エディター集団。この緩やかで気取らないムード、そして京都の街に存在していることに惹かれる。
全く京都には詳しくない私ではあるが、おしゃれ業界人に「京都に行くんだけどおすすめない?」と一度LINEすれば、すぐに信頼できるおいしい店情報が集まるので非常に助かる。京都好きおしゃれ業界人にはそれぞれに言い分があり、「昔はあそこだったけれど最近はここ!」「京都で〇〇は食べちゃダメ!」などとにかく話し出したら止まらない。そう、とにかく京都へのLOVEが凄いのが業界人なのだ。
※価格は税抜