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なんだか最近目にする機会が増えた気がする……そんな、“今まさにキテる”フードを紹介する不定期連載。今回は、コンビニチェーンにもついに登場するなど、目にする機会がグッと増えている注目の肉料理「プルドポーク」について、ハンバーガー探求家の松原好秀さんに教えてもらいました!
【今これがキテる!】~プルドポーク編~
本題に入る前に……まずは、BBQの話をしよう
プルドポークの話の前に、まず「BBQ(バーベキュー)」の話をします。と言っても、河原やキャンプ場でやる「焼肉」のことではありません。米国南部の伝統的な肉料理のことです。テキサス、ミズーリ、テネシー、ノースカロライナ、サウスカロライナなど主に米国南部諸州で盛んな肉の丸焼き料理、これが米国の“barbecue”です。
丸焼きと言っても直火で炙るのではありません。「火を通す」と言う方が正しいでしょうか。密閉された空間で肉の塊に熱を加えます。それも低温で長時間(low and slow)。じっくりと火を入れることで脂が落ち、コラーゲンが分解されて、ジューシーなやわらか~い肉が出来上がります。
そんな米国南部伝統の肉料理を初めて私に教えてくれたのが、東京・麻布十番にあった「WHITE SMOKE」という店でした。オーナーのCraig Whiteさんはテキサス出身の“Texan”です。テキサスには「スモークハウス」と呼ばれるバーベキュー専門店が無数にあります。スモークとは肉を「燻製する」という意味。燻製に使う「ピット(pit)」という、“窯”のようなものが各店にあり、自慢のバーベキューを提供しています。
「ホワイトスモーク」では、クレイグさん自ら設計した巨大な金属製のピットで、それはそれはおいしいスモーク肉を作っていました。残念ながら今は店はありませんが、在京の米国人の間では「ホワイトスモークを超えるスモークハウスは日本にない」といまだに言われ続けるほど、伝説の店になっています。
そのクレイグさんによると、テキサスは「ビーフ」をよく食べる州ですが、州の真中のオースティン辺りを境に、東に行くほど豚もよく食べるようになるそうです。なお、「ホワイトスモーク」にはプルドポークは普段はなく、パーティーなどのときだけ出していました。
ハンバーガー探求家が出合った初めての本格派プルドポークとは?
そこでいよいよ本題。私が初めて本格的なプルドポークと出合ったのは、日本生まれの米国人、Jon Levinさんの店で、当時は高円寺に店舗を構えていた「Fatz’s」でした。
ジョンさんのお母さんは、プルドポークの本場中の本場、ノースカロライナの出身です。そこで、その母方の家の味に則った、オーセンティックなプルドポークを同店で提供しています。作り方は、US産の豚肩ロースにドライラブ(肉の表面にスパイスなどを擦り込むこと)をして一晩寝かせ、翌日スモーカーに入れて12時間ほど燻製。長野県産の楢の木を使って燻しています。出来上がった肉に包丁など不要。フォークを突き立てれば簡単に裂けて(pull)ほぐれてしまうというのが、「プルドポーク」という名前の由来です。
私の記憶では「ホワイトスモーク」がオープンした2011年ごろから、本格的な米国のバーベキュー料理を食べさせる店が都内に増え始め、ハンバーガー専門店でもプルドポークを見かけるようになりました。今年4月にはケチャップでお馴染みのハインツ日本株式会社が飲食店向けに業務用のプルドポークを発売。コンビニチェーンの「ナチュラルローソン」でもついに今夏から、プルドポークサンドを売り出すまでに至っています。
そして、大手企業もそんな動きを見せる、まさにそのタイミングで、京都・大阪・兵庫・岡山の2府2県、計12店のハンバーガー専門店が参加する「関西プルポ戦争」なるプルドポークのスタンプラリーが、9月1日から10月31日まで、まさにこの秋、絶賛開催中です。ということで、プルドポークが気軽に食べられる店を東西5店ご紹介します!
【東京・吉祥寺】「Fatz’s The San Franciscan」
「プルドポークはノースカロライナのもの」と言って譲らぬジョンさんのお店です。昨年、高円寺から移転しました。上の写真のように、コールスローと一緒にパンに挟んで食べるのが代表的なプルドポークの食べ方です。かかるソースはBBQソース。「ファッツ」のソースは、トマトケチャップにモラセス(糖蜜)、ブラウンシュガー、アップルジュースなどを加えた「メンフィススウィート」と呼ばれるスタイルの甘~いソースで、とにかく甘いです。
そこで、ぜひ食べて欲しいのは、肉だけで出てくる小皿料理の「プルドポーク」。何もソースがかかっていないため地味に感じる味付けですが、それだけに、いつまででもずーっと食べ続けていられます。12時間かけてじっくりと引き出された肉の旨味、もうそれだけで十分おいしいのですが、添えられた2種類のソースがまた美味! 酢の方はノースカロライナ東部のスタイル、マスタードの方はサウスカロライナのBBQソースのスタイルです。