【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】8月を振り返る

8月は小旅行的に静岡へ行ったり長野へ行ったり。東京ではニューオープンのお店、行きつけのバー、隠れたインド料理の名店などあちらこちらへ。今月もカレーを食べまくったおかげで夏バテ知らずの熱中症知らずで健康に過ごすことができました。カレーはおいしいだけではなく、身体にも良いですね。この夏、久々に各種検診もしっかりと受けたのですが、どこも異常なしの完全なる健康体でした。

 

カレーばかり食べてて大丈夫なの? と聞かれることも多々ありますが、大丈夫であることを体現する見本がここにおります\(^o^)/ 皆さんもご自身のペースで、気兼ねなくカレーを食べまくってくださいね!

【第1週のカレー】静岡に行くなら絶対食べたい! スパイス満点の旨味たっぷりカレー

「ロストコーナーには2種類の意味があって、ひとつは忘れられた土地、もうひとつは遺失物保管所です。そこに行けば忘れてきたものがある。またはそこからだからこそ希望が生まれる。また片隅でもいいから細々とでも続けていけたらという意味もこめて屋号にさせ​てもらいました」(以上メニューから抜粋)​

そんな思いを込められたロストコーナーというお店。店内に入ってみればマスターの好きなもので溢れかえった自由な空間となってい​ます。メニューももちろんマスターの大好きなカレーとお菓子。​

元々は運送業についていたマスター。同居しているお母様のために料理を作るのが日課となっていて、色々なものを作っていく中でお菓​子にハマり、パティシエの学校へ行って資格を取るまでに。

 

駄菓子屋のようなものがやりたいと考えていたそうですが、それだと場所​柄も考えると商売にならないなと諦めていたところに、とあるラーメン屋で出会ったカレーに魅せられ、本を買って独学でカレーを学​び、食べ歩き、そしてまた本を買って色々と作っていくうちにカレー作りを身に着けたそうです。​

 

「カレーとお菓子なら商売になるかもしれない! そう思ってこのお店を始めたんです」そう照れ臭そうに語ってくれました。​

カレーは、いわゆるスパイスカレー。マスターは「大阪の名店の足元にも及ばないので、スパイスカレーかといわれるとそのレベルに達して​いるとは思えないのですが……」と謙遜していましたが、お世辞抜きに大阪の名店にも負けないおいしさです。​

 

この日にいただいたのは看板メニューの「ポークビンダルー」と日替わりメニューから「にぼしポークキーマ」をあいがけで。ご飯は小にする​と100円引きというサービスもあり、合計1,100円でした。​

ポークビンダルーとは、インド・ゴア地方の名物料理で、ビネガーを使って漬け込んだ豚肉を使うため、酸味が特徴のカレーです。スパイ​スカレーのお店では定番メニューとなっていますが、こちらのポークビンダルーは酸味や辛味よりも旨味がしっかりと主役になった奥深い味わい。重すぎない仕上がりがちょうど良い塩梅でとてもおいしいです。​

 

そして、にぼしポークキーマ。こちらは煮干しを使ったキーマなのですが、煮干し自体が持つ苦味を逆にスパイス的に使用することによ​っておいしさが上がっているオリジナルカレー。食感の変化も計算されており、紫玉ねぎの「シャク」、天かすの「サク」、挽肉の「​ムギュ」っとした食感が合わさることによっておいしさの体積が広がっていました。このあたりの感覚が実にスパイスカレー的。​

 

ご飯は、ギー(インド料理で使われるバターオイル)と一緒に炊き上げることによってほんのりと感じる甘味が加わり、それがカレーの​おいしさを引き立てていますし、副菜も工夫があって実に良い感じ。全体的に完成度が高いです。​

デザートとドリンクのセットが300円で食べられるということで、「スパイスのパウンドケーキ」と「アイスコーヒー」のセットを食後に追加。こ​のケーキはラムレーズン的な風味にはちみつの甘さやスパイスの香りも加わって、ゆっくりと味わいたいおいしさ。思わず目を閉じて​しまうような幸せな味わいでした。​

 

好きこそものの上手なれとはよく言いますが、こちらのマスターはまさにそのタイプ。自分の好きなものを、好きだからこそ手を抜か​ず気持ちを込めて作っているからこれだけおいしいものが作れるのでしょう。​

 

店内には様々な「好き」が溢れた幸せな空間です。きっとあなたの「好き」も見つかるでしょうし、見つからなかったとしてもマスタ​ーの「好き」のどれかが、同じように「好き」になれるような、そんな素敵なお店。​

 

全国的に広がるスパイスカレーの波。静岡ならではの独自の波の立ち方が心地よく、またその波に乗りに行きたいです。

 

※価格はすべて税込

【第2週のカレー】カレーグランプリで話題! ヘルシー&元気になれる神田の注目カレー

「神田カレーグランプリ2019」のスタンプラリーがスタートしました。今年は100店舗以上のお店が参加するということで過去最大規模。神田カレーグランプリはカレー界の中でも他とは少し違う盛り上がり方をしていて興味深いのですが、他のカレーフェスなどと何が違うのかというと、参加している人の平均年齢が高いということ、そして参加者同士のつながりが深いということでしょうか。​

 

そんな神田カレーグランプリの中でも昨年初参加にして決勝戦に残り、話題をさらったお店があります。カレー専門店ではなくバー​なのですが、カレーがおいしいお店「キッチン723」です。​

店主のなつみさんご本人もカレーマニア。様々なお店でカレーを食べ歩き、某人気店でも修業経験のある方です。カレーはかなり前​から気まぐれで出していたのですが、日に日にそのおいしさのレベルが上がっていきました。そのレベルは昨年の時点でかなり上がっ​ていたのですが、今週食べて思いました。そして伝えました。「またおいしくなったね! 何か変わった?」​

 

すると「スパイスとハーブの割合を変えたの!」と。その効果が確実に味に出ていました。ヘルシーであるということもこちらのお店​のテーマのひとつなのですが、ヘルシーでおいしいカレーです。​そんな今週のカレーは「723全のせカレー」1,080円。

「723全のせカレー」

スパイスチキンカレーとポークジンジャーカレーのあいがけに副菜がのったもの​でした。定番のスパイスチキンはスパイスとハーブと野菜の絶妙なバランス感にチキンの旨味。ポークジンジャーカレーも豚の生姜焼​きがそのままスパイスカレーになったようなもので、パンチあるおいしさ。お酒も進みます。​

 

こちらのお店の魅力は味のみならず、なつみさんのキャラクターにもあります。愛のある毒舌で常連客を常に笑わせています。お酒を飲み、笑い、話しているとおつまみが欲しくなってきました。ここでおまかせおつまみをオーダー。出てきたのは「チーズチキン」700円。

「チーズチキン」

これはレギュラーメニューではないのですが、スパイスで味付けしたチキンにチーズをのせて焼いたもの。ちょうど良い塩気で、お酒がさらにおいしく感じます。こうやってメニューに無いものも気軽に作ってくれるのがまたこちらのお店の嬉しいポイントですね。​

たった一回の参加で既に神田カレーマニアにもファンを増やしているお店。今年は昨年以上の活躍を見せてくれるのではないかと​期待しています。カレーグランプリに参加しない方でも、行く価値は十分にありますよ。何かに疲れたり悩んだりしている時、ここでお​酒を飲み、カレーを食べ、なつみさんと話してみてください。おいしいカレーとお酒、そしてなつみさんの愛のある毒舌で元気がもら​えますから!

 

※価格はすべて税込

【第3週のカレー】スパイスカレー好き必食の新店が三軒茶屋に誕生

全国的ブームとなり、カレー好きのみならず、おいしいもの好きの間ではすっかり定着しつつある「スパイスカレー」。その聖地ともいえる大阪の代表格のひとつであり、東京にもいち早く進出してスパイスカレーが根付くことに一役買ったお店といえば、下北沢「旧ヤム邸 シモキタ荘」です。

 

そ​ちらで長年働いていた方が独立し、2019年8月17日、三軒茶屋に「創作カレーMANOS」をオープン!

プレオープンに訪問。いただいたメニューは「3種盛り」1,400円をご飯少なめで。「MANOSチキンカレー」「トマトとカボチャとローズ​マリーの夏キーマ」「イカとかぼすと豆乳のカレー」の三種でした。​

店名を冠したMANOSチキンは、スパイスとハーブに漬け込み、じっくり味を染み込ませてから焼いたチキンが香ばしく、一緒に煮込​まれた大根はその旨味をしっかりと吸い込んでいて、サラっとしていながらもしっかりとした食べ応えのあるカレー。

​夏キーマは夏野菜のフレッシュなおいしさとローズマリーの爽やかなハーブ感、それを包むジューシーな挽肉のカレーで、出身店であ​る旧ヤム邸を彷彿とさせるおいしさ。​イカとかぼすと豆乳のカレーは、豆乳仕様でまろやかでありながらもかぼすの酸味で味が引き締まり、イカの食感と旨味がバランス良​く渾然一体となっていました。​

 

それぞれが違うベクトルのおいしさを持ち、栄養的にも見た目的にも味的にもバランスよく広がりを見せていました。だか​らこそ最後まで飽きが来ず、途中から混ぜてみるとまた新しい味わいが生まれます。楽しくておいしくて健康的。素晴らしい!​

お店の雰囲気もレンガ造りの落ち着いた雰囲気で居心地が良く、駅から少し離れているからこその隠れ家感もあります。茶沢通り沿​いということで、下北沢からも徒歩圏内。カレー天国である下北沢と、隠れカレー激戦区三軒茶屋をつなぐような場所であり、カレー店としての立ち位置的にもその二つの街のつなぎ手となりそうです。

創作カレーということで、今度どんどん新メニューが出てくるのでしょう。しばらくはカレーライスのみの提供ということですが、慣​れてきたらお酒のアテになるようなメニューも考案中とのこと。​​

MANOSとは、スペイン語で「手」という意味だそうです。多くの手と手がつながり、新たな輪を生み出していく。カレーの街と街、人と人を結ぶつなぎ手。期待の​新店の登場です!

 

※価格は税込

【第4週のカレー】カレーを食べるためだけに行く価値あり! 長野にあるスープカレーの名店とは?

世間は夏休みシーズン。いつもはなかなか行けないお店に行けるチャンスだったりもします。カレーを食べるためだけに遠出するのも楽しいもの。そんなわけで今週のカレーは長野・安曇野にある「スープカレーのハンジロー」。ここのカレーを食べるためだけに出かけ​てきました。​

 

元々は神奈川・綱島にあったお店(現在は「らっきょ&Star」と名前を変えて営業中)ですが、そちらのマスターが地元でお店をや​りたいということで安曇野に移転したのが2013年のこと。ずっとずっと食べたいと思い続けて5年以上。やっとの思いで行けたハンジ​ロー。今回は結論から先に書きます。最高でした\(^o^)/​

僕は車の免許を持っていないのですが、免許を持っている友人にお願いして車で東京から出発。渋滞もあって予想以上に時間がかかり、​着いたのはランチタイム終了時刻ギリギリ。そしてその時間でも待っているお客さんが多く​、地元人気の高さを感じました。お腹が空いて倒れそうになりましたが、お店のまわりには川が流れていて、その水の綺麗さに目を奪われました。

心が洗われるような川の流れを眺めながらしばらく待ち、ようやく入店。​店内は古い例えですが、おしゃれなペンションのような雰囲気。二階には座敷席もあったりして、接客も温かく、アットホーム。まずこ​の雰囲気に癒やされます。​席についてからの待ち時間もそれなりにあったのですが、この雰囲気なら焦ることなくストレスも感じずに待つことができました。

「香味豚のローストと彩り野菜のスープカレー」

「香味豚のローストと彩り野菜のスープカレー」1,800円は、チャーシューのような豚肉と野菜のスープカレー。スープは豚骨、牛肉、鶏​がらという肉の旨味の三重奏。これに香味野菜や果物も加え、それを安曇野の地下天然水で12時間煮込むという手の込んだもの。スー​プカレーでありながらもとろみがあり、このとろみが舌に残って素材の旨味や甘味をしっかりと感じさせてくれる絶品スープカレーに​なっています。豚肉も柔らかくて野菜もフレッシュ。ご飯も漬け物も全面的においしい。

 

「これこれ! この味! いや、前よりおいしい!」そう興奮しながら食べました。前より、つまり綱島時代よりおいしくなったのは​やはり水の違いでしょう。東京から地方に移転して味のレベルがさらに高まったお店といえば、福岡「月と亀」、大分「カレー&スパイス 青い鳥 別府」など、今までもこちらでご紹介しましたね。​ハンジローでもそれを強く感じました。水の力って本当に凄いです。​

「シーフードスープカレー」

友人が頼んだのは「シーフードスープカレー」1,800円。具材でもある魚介から出てくるだしによって、味の表情がガラっと変わ​り、さらなる深味を感じるおいしさです。初ハンジローとなった友人も「ここまで苦労して運転してきたことが全て報われる味! スープカレーの印象が変わった。本​当に来て良かった!」と感動しておりました。​

「ほうじ茶アイス」

食べ終わった後、しばし放心状態に陥るほどのおいしさだったのですが、デザートには「ほうじ茶アイス」280円もいただいて、意識を​元に戻しつつも余韻を楽しみました。おいしいカレーの後のおいしいアイスほど幸せなものってなかなかありません。​


ハンジローとは「飯汁朗」、つまり、「ご飯と汁で朗らかに」という意味があるそうです。味噌汁や豚汁のようなスープカレーを目指​しているとのことですが、確かに味噌汁や豚汁のような親しみやすさのあるスープカレーです。そして、ここのご飯と汁を食べれば、​確実に朗らかになれます。​日々多忙な生活を送る僕も友人も、食べ終わった後は久しぶりに心からの朗らかな笑顔が自然と生まれていましたから。

 

ゆっくりと時間をかけて作った絶品スープカレーを、ゆっくりとした時間の中でいただく。なんという贅沢で幸せなことでしょう。ここのカレーを食べるだけの為に一日費やしても後悔はしませんよ。

 

※価格はすべて税込

【第5週のカレー】ランチ目指していざ! カレーマニアが足繁く通う参宮橋の隠れた名店とは?

僕はかなりヘビーな食べログユーザーだと自負しているのですが、食べログでお店を探す時に点数ばかりに気を取られないように心がけています。点数が高いからといって必ずしも自分の好みに合うというわけではありませんし、逆にまだ知られていない隠れた名​店も少なからずありますから。​

 

今回ご紹介する東京・参宮橋の「ラジャ」はまさにそんな隠れた名店。この原稿を執筆している時点で食べログの点数は3.2台と、それほど高​いわけではありません。しかし、個人的には軽く4点を超すレベルだと感じています。

​お店は1995年に開店したということですから、カレー界においては老舗とまではいかずとも中堅どころと言える立ち位置。ただ参宮橋​という少々マニアックな駅の近くにあるということや、昼しか営業していないということから、少々ハードルの高いお店となっている​のが点数が上がりにくい理由かと思います。

しかし、こちらのカレーに魅せられたカレーマニアも少なからず存在し、わざわざここの​カレーを食べる為だけに定期的に参宮橋まで足を運ぶ人も多いのです。かく言う僕もその一人なわけで。​

 

メニューは日替わりというか、何日かごとに入れ替わるスタイルです。この日のメニューから、「ポークビンダルー」と「マトンキーマ」の2種​を「パロタ」(南インドのパン)のセットでオーダー。通常はこちらのカレー、ご飯と合わせるのが最高なのですが、この日は​あえてパロタだけで味わってみたかったのです。​

「ポークビンダルー」と「マトンキーマ」の2種​を「パロタ」のセットで1,280円

ポークビンダルーとはインドのゴア地方の名物料理で、ビネガーに漬けこんだ豚肉を使ったカレーのこと。こちらのポークビンダルー​はゴアのレシピを基本としつつも独自の工夫を加えたもので、酸味と辛味のバランスが良く、スッキリとしたおいしさです。​

 

マトンキーマはマトンの旨味と風味がスパイスによってしっかりと引き立てられ、濃厚でありながら重すぎないバランス感。パロタで食べると軽やかでカレーそのものの味を存分に楽しめて良かったです。

「レッドホットチリペッパーチキンカレー」「バターチキン」「マトンサグワラ」のカリー3種セットをライスで1,580円

それにしてもここのカ​レー、何を食べても本当においしいんですよ。​「バターチキン」もスッキリとして甘すぎないのが最高ですし、「レッドホットチリペッパーチキンカレー」は激辛の上をいく辛さでありなが​らも、おいしさが全く失われていないという絶妙のバランス。「マトンサグワラ」も最高だったなぁ。「チキンキーマ」も「マトンコルマ」も……と、キリがないのでこれくらいにしておきますが、本当にすべてがおいしいのですから困ってしまいます。

香り高いアイスコーヒー

こちらのカレーを食べるとと​にかくスッキリします。汗も出てデトックス効果を体感できるんです。おいしいだけじゃないところがまた凄い! ​そして食後の一杯も忘れてはなりません。チャイやコーヒーも確かなこだわりを感じるおいしさで、他のお店とは一味も二味も違います。​

優しい味わいのチャイで締めるのもおすすめ

マスターは日本におけるインド料理研究家の第一人者的存在であるレヌ・アロラ先生から基礎を学び、その後はご自身でも現地で食べ​歩き、それを再現したり改良したりを繰り返し、今の味に辿り着いたそうです。だからこそオーセンティックなインド料理でありなが​らも、ほんのちょっとだけ日本人の気遣いが入るような絶品カレーの数々なのですね。少々矛盾したことをあえて言いますが、これは​日本人じゃないと作れない本物のインド料理なのです。​

 

広いお店をご夫婦二人で切り盛りしているので、焦らず騒がずゆっくりと絶品インド料理と食後のドリンクを楽しみたいですね。他に​も食べたいカレーがありすぎるので、今後も通い続けたい大好きなお店です。

 

※価格はすべて税込

 

取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/