新連載〈芸人ごはん〉

おいしいごはんは、芸の糧。下積み時代の支えとなったあの味、ハレの日に奮発した贅沢メニュー、先輩に連れられ後輩を連れて行ったお店……。人気芸人が教えてくれた、“ここぞ”というお店を思い出とともに紹介。

第1回 ゆりやんレトリィバァさん

「食べることが大好き!」という、ゆりやんレトリィバァさんが「死ぬほどおいしい!」とうなる難波エリアの4軒を案内。食べればパワーみなぎること間違いなし。お世話になった人への感謝と、後輩たちへのエールを込めた、スペシャルな寿司、肉、たこ焼き店を紹介!

「頑張って生きてるんやったら、いいものをたくさん食べないと!」

 

食べログマガジン編集部

食べることが大好きだというゆりやんさん。それは昔からですか?

 

ゆりやん

はい。生まれたときからです(笑)。昔は、同じようなものを毎日食べても平気で、質よりも量が重要でしたね(笑)。芸人になってすぐは、仕事先でよく出ていた、牛乳に溶かして飲む顆粒状のコーヒーの素(牛乳用調味料)を持ち帰り、お腹が空いたときにそれだけを食べたりしたこともありました。濃厚なショコラフォンデュみたいな味がしておいしいんですよ!

 

ゆりやん

あとは、激安スパゲッティを大量に買ってきて、パスタ専用のソースは高いのでサラダドレッシングをかける。それを小さな器に盛って、何度もお代わりをする“椀子スパ”もよくやってましたね。たくさん食べている気になれるんですよ(笑)。

 

食べログマガジン編集部

ゆりやんさんならではの、食の工夫ですね(笑)。で、今は違うと?

 

 

ゆりやん

4年くらい前でしょうか。芸人友達のロバータちゃんに出会ってから考えが変わりました。当時、ロバちゃんは、なぜか会うたびに食べ物をくれるんですけど、それがちっちゃいけどすごくおいしくて、高そうなんです。お茶するときもいい雰囲気のところに行くんです。そんなロバちゃんを見ていたら食の大切さというか、“頑張って生きてるんやったら、いいものをたくさん食べないと!”と思うようになりました。

 

ゆりやん

ライブ見に来てくれた友達とごはんを食べに行くときも、それまでは“適当でいっかー”って感じでしたが、“せっかく来てくれたんだから、いいところに連れて行きたい”と考えるように。贅沢だとは思うんですけど、おいしいものをゆっくり味わって食べるほうが、心にも余裕ができて、豊かな気持ちになれることに気がつきました。

後輩とのごはんは、「個数を気にせず、食べたいものを食べる」がルール

 

食べログマガジン編集部

食の価値観が変わり、「質より量」から「質」重視に変わったのですね?

 

ゆりやん

いやいや! 量も質も大切。「いいものをたくさん食べる」がテーマになりました(笑)。

 

食べログマガジン編集部

あはは。より贅沢になったのですね。でも、ゆりやんさんの活躍を見るとその分のリターンもありそうです。お店の選び方も変わりましたか?

 

ゆりやん

先輩に連れて行っていただいたお店で、“私も行きたいなー”と思ったところに行っています。なかでも難波には、絶対に行きたいところが4軒あります。一軒は、後輩とよく行く「喜多郎寿し なんば店」。ここ、ほんまは言いたくないくらい、本気でおいしい! 握り一皿250円で、わりと行きやすいお店なのに、死ぬほどおいしいんです!

ゆりやんのおすすめ①「喜多郎寿し なんば店」

握りのほか、お造りや小皿料理も絶品だとか。
握りのほか、お造りや小皿料理も絶品だとか。   写真:お店から
 

ゆりやん

マグロは、脳天、頬、顎、トロ、赤身といろんな部位があって、特に脳天が驚くほど柔らかくておいしい! 脳天は、ちょっと遅く行くと売り切れてしまうことが多いので、開店時間ちょうどに行きます。で、食べると必ず、後輩と「マジで日本に生まれてよかったよな」「ありがとうお寿司!」と言うとこまでが儀式(笑)。あー、話してたらまた行きたくなってきました〜。

 

ゆりやん

この店では、“皿に盛られた個数を気にせず、食べたいものを食べる”というのがマイ・ルール。後輩が、本当は食べたいのに気を遣って食べられへんかったらかわいそうなので、「自分の分を食べても遠慮せんと食べていいねん。なくなったら頼んだらええねんから」って言ってます。先輩に「なんでも食べて」とご馳走になってきているので、自分も絶対そうありたいと思っているんです。

「ありがとうございます」を伝えるのにベストな焼肉屋さん

 

食べログマガジン編集部

うれしいことがあった日に行く、特別な店はありますか?

 

ゆりやん

やっぱりリッチな焼肉屋ですね。いいことがあったとき行く“とっておき”が2軒ありまして。一軒目は「月島屋」です。

ゆりやんのおすすめ②「月島屋」

ゆりやんが必ずオーダーするという「厚切り特選塩タン」
ゆりやんが必ずオーダーするという「厚切り特選塩タン」   写真:お店から
 

ゆりやん

とにかくお肉が分厚くて柔らかいんです。マネージャーがいい仕事を決めてくれたときとか、遅くまで一緒に仕事してくれた作家さんとかと一緒に行かせてもらっています。値段を見ると、贅沢と思われるかもしれないんですけど……。でも、「ありがとうございます」と伝えるときこそ、いいものを食べないと、と思うんです。「銭はあの世に持ってけないよ」が私のポリシーなので、だからうれしいときに使っちゃえーって(笑)。

 

ゆりやん

みなさん、気を遣って「上」じゃないほうのお肉を選ぼうとするんですよね。「上」じゃなくても十分においしいと思うんですけど。やっぱりいいものをたくさん食べて欲しいから、そこは分からないように「ロースとハラミください」と言いながら、メニューで「上」のほうを指したりして(笑)。「上」と言わないように頼むんですよ。

 

食べログマガジン編集部

なんと心温まるエピソード! もうひとつの焼肉屋はどこですか?

 

ゆりやん

次に紹介したいのは、私にとって特別な思い出となっているお店です。

ゆりやんのおすすめ③「李休 千日前」

写真:お店から
 

ゆりやん

ここは、NHK上方漫才コンテストで優勝したとき、お世話になっている先輩作家さん三人と、お祝いのごはんに行かせてもらいました。いつもはご馳走してもらう側でしたが、初めて私が思い切っていろいろ注文しているのを見て、「いやー、こんなお肉をなんぼでも頼むようになんねんなー」と言ってくれました。うれしかったですね。お肉のおいしさもあいまって、胸が(胃も!)いっぱいになったのを覚えています。

日々の元気は、“塩たこ焼き”で補給

 

食べログマガジン編集部

大阪名物といえばたこ焼きですが、ゆりやんさんのひいきはありますか?

 

ゆりやん

NGKの隣にある「たこ焼道楽 わなか 千日前 本店」は、私的に大阪で一番おいしいと思います! と言っても、いろいろ食べ比べたわけではないのですが(照)。中はトロトロ、外はカリカリで、一個一個が大きい!! ソースだけでなく、塩やポン酢などでも食べられます。私が好きなのは塩!! 今でも急に食べたくなる味です。

ゆりやんのおすすめ④「たこ焼道楽 わなか 千日前 本店」

わなかのたこ焼き。トロトロ、カリカリがたまらない。
わなかのたこ焼き。トロトロ、カリカリがたまらない。   写真:お店から
 

ゆりやん

店員さんたちもとても優しくって。NGKに行く時は必ず店の前を通るんですけど、たこ焼きを買わなくても「頑張れー!」と声をかけてくれるので、「今日も頑張るぞー」と思える。さりげない日々を支えてもらっているというか、元気をもらってます。そんな意味でも千日前のわなかのたこ焼きが、一番です!

 

食べログマガジン編集部

ハレの日は寿司と焼肉で、ケの日はたこ焼きで。ゆりやんさんが選んでくれたお店はそれぞれ、スタンダードながら個性がありますね。

センパイ、その節はご馳走になりました!

おごられごはんの思い出

今も昔も、本当にたくさんの先輩にご馳走になっていますが、特に大阪の先輩全員には、とてもお世話になりました。芸人になってすぐは、尼神インターの渚さん、THIS IS パンの吉田さんに、ほとんど毎日ごはんに連れて行ってもらいました。劇場の楽屋で、私が「このあと何するんですか〜?」「お腹空きました〜」と言うと、「じゃあ、ごはんいこか」と誘ってくれて。お二人のほうから、「今、何してんの? ごはんいく?」と声をかけてくれることもありました。本当に先輩方には感謝してもし尽くせません。

 

私は芸人になってから大阪で一人暮らしを始めたのですが、それまでは実家暮らしで、田舎だったこともあって、夜遊びをしたことがありませんでした。でも大阪に住むようになってからは、一人で夜の難波の街に出るのが楽しくて、それに芸人の先輩と一緒にいるのも大好きなので、「どっかに先輩いてるんちゃうかな」と、勝手に先輩を探して夜の難波をさまようように(笑)。で、先輩を見つけると「来ちゃいました〜」と突撃してました(笑)。でも、皆さん優しいので「おいで〜」って一緒にごはんを食べさせてくれるんです。今思うと、とんでもない後輩だったと思います。

INFORMATION

飲食型エンタテインメントステージ、『THE EMPTY STAGE GRAND』に出演します!

「即興」をテーマにした、「ONE-MAN TALK SHOW(1人喋りショー)」と「IMPROV SHOW featuring The Second City(新ジャンルの即興コントショー)」 の2部構成で繰り広げられる、新しい飲食型エンタテインメントステージ、『THE EMPTY STAGE GRAND』にゆりやんさんが登場します。

 

ゆりやん

私は8月25日の、ONE-MAN TALK SHOWに出演します。お客さんからお題をいただいて即興でトークをするので、どんな感じになるのか想像もつきませんが、“オチのない話でもいいよ”という人は、ぜひ私の回に来てもらえたらと思います(笑)。また、お芝居の部も、お客さんからお題をもらってその場で話を作っていくのですが、何が起こるかわからないドキドキ感や、何もないところから話ができていく楽しさもあって、すごく面白いです。その時、その場所でしか見られない笑いをぜひ楽しんでください!

期間:8月17日(土)~25日(日)
会場:新宿FACE
チケット:前売/大人3,900円、中学・高校・大学生2,500円、小学生以下2,000円
当日/大人4,300円、中学・高校・大学生2,900円、小学生以下2,400円
※飲食メニューあり(別途1オーダー制)※全席指定席
http://the-empty-stage.jp

「スラバのスノーショー」も絶賛上演中!

ゆりやんさんがスペシャルサポーターを務める、世界35カ国以上で上演されている体感型ファンタジーショー、『スラバのスノーショー』は現在上演中。

 

ゆりやん

セリフがなく、人の動きや表情だけで感情を伝えたり、ストーリーを感じさせたりするので、観に来た人それぞれが、いろいろな感動を得ることができます。劇場に雪みたいな紙吹雪が舞ったり、ボールが飛んできたりして、お客さんと舞台が一体となって楽しめるのも面白いですよ。心に響く感動と、びっくりするような演出を体験してください!

東京公演
期間:8月10日(土)〜8月25日(日)
会場:シアター 1010(センジュ)
料金:SS席(タオル付き)10,000円、S席8,500円、A席6,500円(2階席)

 

大阪公演
期間:上演中〜8月7日(水)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
料金:SS席(タオル付き)10,000円、S席8,500円(1階席)

http://slavasnowshow.jp

 

PROFILE

ゆりやんレトリィバァ

1990年11月1日生まれ。奈良県出身。2013年、NEC大阪校35期生首席卒業。2017年 、第47回NHK上方漫才コンテストで優勝。同年、女芸人No.1決定戦THE Wでも優勝。2018年のR-1ぐらんぷりでは準優勝。劇場などでのライブ活動、テレビやラジオへの出演のほか、秋元康のプロデュースのユニット「吉本坂46」のメンバーとしても活躍中。

取材・文:神山典子