おしゃれフードトレンドを追え! Vol.32

意外とハードルは高くない!フレンチは巨匠のレストランに行きたい

おしゃれ業界人は、フランス人シェフが大好きだ。誰もが知る有名シェフ、ポール・ボキューズ、ジョエル・ロブション、アラン・デュカス。彼らの名前を聞けば「わあ、いいなあ」と心躍り、特に女性編集者やファッションブランドPRの皆さんはワクワクしながら新年フレンチを楽しんでいるようだ。有名シェフの名前は、言うならばブランド。ブランド店での食事は特別な日の記念になるし、映えるし、ステイタスにもなる。恐縮ながら私、昨年末にマカオのホテルでアラン・デュカス氏と食事する機会をいただいたのだが、周囲のおしゃれ業界人たちから「えっ! アラン・デュカスと!?」「羨ましい!」「私も行きたい」と過去最高に羨ましがられた。パリコレでトム・フォードに会った時も、エディ・スリマンに会った時にもこんなに羨ましがられなかったのに、おしゃれ業界人たちのシェフへの憧れって何だろう?

「ベージュ アラン・デュカス 東京」店内(写真:お店から)

 

ファッション関連の仕事をする人にとって、「どこのブランドの服を着るか」はかなり重要な問題だ。ブランドといってもルイ・ヴィトンやシャネルなど超有名ラグジュアリーブランドを身につければいいというわけではない。行列必至のNY発スケーターブランド、知る人ぞ知る日本人デザイナー、VERY族などきれいめママに人気のブランド、イタリアンクラシコなメンズ服……と着る人の属性を体現するブランドが無数にある。オシャレを生業にしているのだから、某ファストファッションやセレクトショップのオリジナルで全身まとめた、と公表するのはさすがに憚られる(実際は着ているのだが)。玄人好みのレアブランドを取り入れたり、ヴィンテージを掘り出したりとセンス勝負でコーディネートを楽しんでいるわけだ。

 

しかしファッション以外の分野になると、有名ブランドに頼りたくなるのが私たち。その道のプロではないのでやっぱりブランドが安心というわけだ。電化製品はメーカーで選び、車はもちろんブランド買い、住宅だって〇〇不動産×〇〇建設で安心を買う。食の分野でも、店選びにシェフの名前は大切なのだ。「〇〇さんのところにいた人が独立したらしい」とか「青山の〇〇さんのところにいた人がパリに店出したんだって。パリコレの時行ってみて」など有名シェフの店から独立した若手の話題でも盛り上がっている。

 

そんなおしゃれ人たちだから、レストラン界でのシェフヒエラルキーにも敏感だ。憧れジャンルは当然フレンチ! ファッション界のTOPもフランス(パリ)ですからね。2019年のごちそうはじめは、ぜひ有名シェフのレストランで。行ってみるとゆったり寛げる空間と質の高いサービス、そこでしか味わえないクリエイティブな一皿と、トータルで考えると実はコスパが高いことを実感できるはずだ。フレンチの巨匠たちのエスプリを感じる味を、ハードル低めなランチからスタートして、気持ちも新たに1年を頑張りたいものだ。

料理のクオリティも、サービスも高くて間違いなし!信頼の有名シェフがいる名店

1. 気軽に楽しむカウンターフレンチ:ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション(六本木)

写真:お店から

 

昨年この世を去ったジョエル・ロブション氏。亡くなる半年ほど前に親子向けの料理ワークショップを取材した際に彼が言った「料理で一番大切なのは愛情です。心を込めて料理すれば必ずおいしい料理ができます。あなたのお母さんも、いつも愛情を込めて料理してくれているんですよ」という温かい言葉が今でも心に残っている。そんなロブション氏のことを思い出しながら新年最初のフレンチはおしゃれ業界人御用達の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」に決めた。フランス料理はコース料理の注文が主流だが、この店ではその日の気分で自由にアラカルト料理を選ぶことができ、「グラスワインとお勧めの1ディッシュで軽めに」という風にリラックスして楽しむことができるのがポイント。店内はオープンキッチンの周囲をぐるりと囲む44席のカウンターがメインで、これまでのフランス料理店にはなかった気軽なスタイル。カウンター越しに「今日のおすすめは何?」とシェフと会話を交わしながら食事ができる、という普段使い感覚(価格は普段使いではないけれど)がおしゃれだ。気取らずラフな格好で仕事の合間に仲間と寄れる。おしゃれ要素が満載のラトリエファンは多い。

シャンパンカクテル付 クイックランチプラン5,000円(税・サ込、平日限定)より、真鯛をシトロネルの香りで トマトコンフィーと共に

鴨もも肉のコンフィ シャンピニオンのマリネとジャガイモのエクラゼを添えて

絶品自家製パンはおかわり自由

 

2. シャネルビル最上階で過ごす優雅な時間:ベージュ アラン・デュカス(銀座)

写真:お店から

写真:お店から

写真:お店から

 

昨年1月にポール・ボキューズ、8月にジョエル・ロブションが世を去った今、名実ともに文句なしのNo.1シェフに君臨するのがアラン・デュカスだ。シャネルとデュカス パリのコラボレーションによるレストランは、シャネルビルの最上階というだけで女子たちのテンションが上がるお店だ。銀座の絶景を眺めながら、天井が高く開放的な雰囲気の中で都会的かつ優雅な時間を過ごすのも良い。シャネルのトレードマークでもあるカメリア形のデザートをオーダーすれば、さらにモード気分に浸ることができる。平日限定ベージュのランチコースはアミューズ、好みの2皿(アントレ1皿、メインディッシュ1皿)、小菓子、デザート、食後の飲物で5,900円。週末は好みの皿が3皿に増えて(アントレ1皿、メインディッシュ2皿)9,000円だ(価格は税込、サービス料別12%)。

3. ロブションの愛弟子がオープンした早くも話題の新店:アサヒナガストロノーム(日本橋)

写真:お店から

出典:ガレットブルトンヌさん

出典:きゅいそんさん

 

ジョエル・ロブションの愛弟子として13年間仕事を共にし、「シャトーレストラン ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション」の料理長 だった朝比奈 悟さんが独立し、昨年末に自身の店をオープンした。場所は日本橋兜町、東京証券取引所の東側目の前。値段も抑えめにして近隣のビジネスマンたちに話題の場所になっている。約32席の店内はディテールまでセンスの良いインテリアで 、ふかふかカーペットのフロア、柔らかなライティングや丸テーブルが安らぎを与えてくれる。アミューズ、前菜2皿、肉料理、デザート、小菓子、コーヒーまたは紅茶のコースランチが4,800円(税別・サービス料 別10%)と手が届きやすい。テーマは「伝統の継承と現代の革新」。故ロブションへのオマージュが息づく新鮮なフレンチを体験してみたい。

 

日本人にとって、フレンチは非日常。贅沢な時間を普段の生活に少し取り込むだけで、一気に華やぐ。有名シェフのオーラを借りて、実は美食オンチなおしゃれ業界人でもグルメを気取りたいのだ。