フードライターの森脇慶子さんが、オープン間もない新店から「いま訪れるべき良店」を厳選。トレンドに流されない確かな審美眼で、グルメならチェックしておくべき注目店をまとめて紹介します。

森脇慶子が注目する新店

1. とんかつ梛(東京・神泉)

調理風景
調理風景   写真:お店から

ポークビンダルー食べる副大統領」やかつ丼の「瑞兆」等々、話題店が軒を並べる雑居ビルにオープンした新たな注目店、それがここ「とんかつ梛(なぎ)」です。ご主人の石原さんは、老舗とんかつ店の「かつ吉」出身。渋谷をはじめ各店舗で約18年研鑽を積み、後半は店長まで務めた経歴の持ち主です。

定食
定食   写真:お店から

新店では、岩中豚を用いた“上ひれかつ定食”(2,800円〜)や、2週間枝枯らしをした銘柄豚(銘柄は日替わり)のロースを盛り合わせた“上ロースかつ×ひれかつ定食”3,500円を主軸に、カレーあり、カツサンドありと選択肢は豊富。単品メニューもあるので、ひれかつに手ごねかつ(メンチカツ600円)をオプションでつけたり、ひれかつ単品で一杯飲んた後、ロースかつカレーで締めたりなど、さまざまに楽しめそう。

サクッと軽やかに揚がったカツは、物腰柔らかなご主人にも似て、優しい味わいが印象的。1日6食限定の“極上リブ芯×ひれ芯盛り合わせ定食”6,000円もお勧めです。

2. 熾 OKI(東京・広尾)

“焚音料理”がテーマ
“焚音料理”がテーマ   写真:お店から

“焚音料理”をテーマに、この5月、西麻布にオープンしたイタリア料理店。「火によって生まれる香りや温度、音、空気感まで含めて楽しんでいただきたい。そんな思いを込めて“焚音料理”と名付けました」と語るのは徳永翔平シェフ。その言葉通り、カウンター前に設えた焼き場では、炭のほか、藁や枯れ木が食材によって使い分けられ、立ち上る煙や熱気、仕上げの薫香など料理が完成していく過程もご馳走の一つ。巧みな火入れと共に各々の食材の持ち味を最大限に引き立てます。

「炭焼きアオリイカの烏賊墨リゾット 生からすみ添え」
「炭焼きアオリイカの烏賊墨リゾット 生からすみ添え」   写真:お店から

シグネチャーメニューは“炭焼きアオリイカの烏賊墨リゾット 生からすみ添え”(3,300円)。炭火の香ばしさとアオリイカのネットリした旨みが重なり合う佳品です。また、“熾火焼きブロッコリー山利の釜揚げシラスのペペロンチー”(2,420円)は、シラスをぺぺロンチーノ風に仕上げ、炭火で焼いたブロッコリーにたっぷりトッピングした逸品。そのままでは穏やかな塩味の釜揚げしらすも、にんにくのパンチが加わることで炭火焼きにしたブロッコリーの薫香とバランスが取れ、相性も上々です。ライブ感あふれる店内は、シックな大人の空間。深夜までの営業も心強い一軒です。

3. MAISON OLINA(東京・京急蒲田)

sakura007
内観   出典:sakura007さん

2024年、東麻布で産声を上げつつも、僅か8カ月でその幕を閉じたフランス料理店「OLINA」。フランス人シェフのオリヴィエ・ガリシアさんと、パートナーでありディレクターも務める髙遠菜都子さんの2人が繰り広げるこの食のアトリエが、今年の4月9日、約1年半の充電期間を経て再始動しました。

「MAISON OLINA」の名の通り、隠れ家のような一軒家のレストランは、蒲田という人間味あふれる雑踏を忘れさせる静謐な空間。無機質なコンクリートの壁に、一見無造作に置かれた草花が自然の空気を感じさせます。だからでしょうか、料理もイノベーティブでありながら、どこかナチュラルな味わいが印象的です。さまざまな要素を組み合わせつつも、素材感を感じさせる一皿一皿には、南仏に生まれ、オーストラリア、パリ、スウェーデンと数々の国々で研鑽を積んできたオリヴィエシェフの体験が投影されているよう。

sakura007
おまかせコースの一品   出典:sakura007さん

旬の味を取り入れたおまかせコースは全9皿で17,000円。自然派ワインのペアリングと共に味わえば、よりその世界観を楽しめそうです。

4. 肉割烹 喜円(東京・乃木坂)

おまかせコースの一品
おまかせコースの一品   写真:お店から

この夏に「肉割烹 上」が移転。その跡地に誕生したのが、この「肉割烹 喜円」。「上」の流れを汲みつつも、お値段的にはややカジュアルに楽しめるのもうれしい限りです。店を任されたのは、「上」の副料理長として約7年研鑽を積んだ丸子隼人料理長。「上」店主・大久保丈太郎氏の哲学を受け継ぎつつも、独自の味の世界を目指しています。

三田勢戸牛のステーキ
三田勢戸牛のステーキ   写真:お店から

22,000円のおまかせコースでは、三田勢戸牛を使用。従来のステーキのほか、発酵ベルガモット塩でいただくハツ串や牛テールのタレ焼きなど精肉以外の部位も積極的に取り入れ、新たな肉の魅力を表現。多彩な火入れと共に楽しませてくれます。〆のレンコンと実山椒の炊き込みご飯や、すっぽんとテールの煮麺も、一手間かけたおいしさ。日本酒やワインなどアルコールも豊富。ペアリングもぜひ。

5. 月山 西麻布(東京・広尾)

外観
外観   写真:お店から

西麻布の裏通り、かつてビストロ通りとも呼ばれたその一角に、この4月、新たに産声をあげた和食店「月山」。すっぽん鍋と手打ちそばが看板料理の注目店です。

女将自らが打つそばはやや細打ちの手打ちそば。江戸前に倣い二八で打つそばは、コシがありしなやか。一箸手繰れば、つるりと滑らかな喉越しに思わず笑みがこぼれます。定番の“せいろ”(1,000円)のほか、“すっぽんスープせいろ”(3,800円)や“鰻とろろぶっかけ蕎麦“(2,800円)などオリジナルメニューもユニークです。

のうっちゃん
すっぽん鍋   出典:のうっちゃんさん

それも、すっぽん鍋や鰻鍋も名物の同店ならでは。すっぽん養殖のパイオニア「服部中村養鼈場」のすっぽんを丸ごと1匹使った鍋は、酒と水のみで作ったとは思えぬほど滋味に溢れています。どじょう鍋をアレンジした“鰻鉄鍋”も、ありそうで無かった一品です。

いずれも単品でいただけるほか、すっぽんも鰻も鮑もいただける“月山すっぽんと鰻と鮑の贅沢滋養コース”(18,000円)もあり。夏バテ防止にも一役買ってくれそう!

教えてくれた人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

※価格はすべて税込です。
※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額等を掲載しております。 営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。 

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部