【噂の新店】istaz

話題店が増殖中の築地にアットホームで居心地が良く、本来のイタリア料理を再現した店がオープンしました。店主は食べログTOP5000に名を連ねる「自家製麺ロビンソン」を立ち上げたとあって手打ちパスタは絶品! 21時以降はアラカルトで楽しめるバータイムとなるそう。これは行きつけにするしかない!

築地にオープンした隠れ家イタリアンにリピーター続出!

「知る人ぞ知る」の言葉がぴったり!

市場が豊洲に移転してもなお賑わいを見せる築地。観光スポットとは一線を画し、食通たちを唸らす店が次々と誕生しているのはご存じでしょうか。8月にオープンした「istaz(イスタス)」もその一つ。“秘密の場所感”満載の階段を上り、扉を開けるとそこには食べた人を笑顔にさせる空間があるのです。

伊藤浩二オーナーシェフ

伊藤さんは西麻布「IL MEL」「ENZOpasteria」、横浜「Living」、元麻布「然sabi」と、若い頃からなぜか立ち上げや店を任されることが多く、メニュー開発やコンサルタントを依頼されるようになったことから食とともに成長し続けていく会社を設立。裏方としても飲食業界を支えてきたイタリア料理一筋の料理人です。その伊藤さんを一躍表舞台に戻すきっかけとなったのが友人であり和食の料理人、田中恵大氏とともに開いたラーメン店「自家製麺ロビンソン」。コロナ禍真っ只中ということもあり、昼はラーメン店、夜は和食とイタリア料理をコース仕立てにした完全予約制の「小三治」という“二毛作店”にするとこれが大当たり! 「ロビンソン」は食べログTOP5000にランクインするほどの人気店となりました。

家族や友人と食卓を囲んでいるような趣

このように内側からも外側からもイタリア料理と共に生きていた伊藤さんが「もう一度、イタリア料理の本質と向き合いたい」と作ったのがこの店。素材の持ち味を活かした調理法で日常に根ざした料理を、アットホームな雰囲気の中で楽しめます。

得意なのはパスタ料理

こちらで供するのは9品からなる「おまかせコース」(8,920円)です。「最初はいろいろ食べてもらいたくてアラカルトを用意していたのですが『お任せするからおいしいもの出してよ』と言われることが多くて。だから早い時間はコース、21時以降はおつまみ1品、ワイン1杯から気軽に立ち寄っていただけるアラカルトにしました」と伊藤さん。

家庭料理に宿る本来のイタリア料理を再構築

思わず「すごい!」と叫んでしまったほど立派な吸盤

まず調理にかかったのが大きな吸盤を持つ水蛸。軽く炙ってから薄くスライスしてカルパッチョ仕立てにするそう。

「岩手産水蛸の温かいカルパッチョ」

すると厨房から何やらとってもいい香りが! タイム、マジョラム、セージなどのハーブにニンニクを加えたオリーブオイルをフライパンでカンカンに熱しています。レモンを搾って乳化させてから水蛸にかければ、ジュジュジュッと良い音をさせて温かいカルパッチョの完成です。水蛸はクニュッとしていますが、吸盤はコリッとして食感が楽しい。冷製のイメージがあるカルパッチョ、これはうれしい誤算です。

コースではショートとロングの2種類を提供します

「『ロビンソン』でも麺を手打ちしていたので小麦との付き合いが長いんです」と笑って話す伊藤さん。麺打ちはその日の気温や湿度によってタンパク質量と水分量を変えて硬さを調整します。データはありますがやはり手の感触がものを言うそう。

コルツェッティ

続いては自慢のパスタ料理を。まずはショートパスタから。こちらはリグーリア州が発祥とされる「コルツェッティ」。伸ばした生地を丸くくり抜き、家紋などがデザインされた2つの木製スタンプで挟んでソースが絡みやすいように模様をつけます。

「コルツェッティ ハマグリとフレッシュトマトのアーリオオーリオ」

ムチッとしたコルツェッティにハマグリから出るだしが利いたソースが合うこと! ニンニクと塩で味をバチッと決めてカラスミでまろやかにする。本場さながらの味わいです。

タヤリン

もう1種類はロングパスタの「タヤリン」です。秋が深まりフレッシュトリュフが出回ると、ピエモンテ州ではタヤリンにバターソースとパルミジャーノレッジャーノを和え、仕上げにトリュフを削りかける「タヤリン トリュフソース」をめがけてレストランに訪れます。シンプルな組み合わせだけにパスタの食感が要となる料理です。

「タヤリン トリュフソース」

パスタは硬さにこだわると言う伊藤さん。タヤリンはセモリナ粉を少なめ、強力粉を多めにして、弾力とコシがありながら舌触りはシルキーに仕立てます。タヤリンは少し柔らかめに仕上げる店が多い中、こちらはパシッと歯切れがいい。

最高傑作!

マッシュルームは食感を、トリュフは香りを楽しませ、ニンニクもしっかり利かせています。食材それぞれの存在感があり、飽きさせることがありません。どこでも食べられるだけにパスタが要、実感します。

「岩手県産 岩中豚のコンフィ 天然舞茸のロースト」

メインの肉料理に伊藤さんが選んだのはやわらかくジューシーでまろやかなうまみとコクが特徴の岩手県産の岩中豚。時間をかけてゆっくりと火入れします。

素材の持ち味以上の仕上がり

身の部分はナイフを必要としないほどホロリと崩れ、脂の部分は表面がカリッと、内側はプルプル。クセがなくうまみ十分な味わいに甘みと酸味のあるヴィンコットソースがよく合います。華やかでなくとも食いしん坊が待ち望む味がここにあります。

素材、文化、人、イタリア料理の真髄に浸る

思いを込めた店名とロゴ

「イタリアへの思いを馳せてメニュー作りをしています。例えば本日お出ししたコルツェッティの皿にはリグーリアに存在するものしか使いません。それぞれの土地に根ざした食材を生かすのがイタリア料理だと思うので、自分なりにイタリアという国や郷土料理を理解して反映したい」と言うように伊藤さんの料理を食べるとイタリアの情景が浮かんでくるのです。

店内に飾られているカール・ゴッチを描いたアート

店名の「イスタス」はロゴが椅子の形をしているところから椅子を足す=腰を据えてゆっくりしてほしいという思いを込めていますが、実はプロの格闘技の選手であった伊藤さんは大のプロレス好き。プロレス界のレジェンド、憧れのカール・ゴッチ選手の本名(Charles Karel Istaz)から取ったとも。そんな会話も味のうち、と心地よい時の流れを感じながら、マンマ(母)の味が原点と言われるイタリア料理の真髄を味わってみてはいかがでしょう。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格は全て税込。
文:高橋綾子 撮影:溝口智彦