〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、年間100店以上の焼肉店に通う焼肉作家、小関尚紀さんが、人気肉料理店出身店主による、レアメニュー揃いな八幡山の焼肉店を紹介。

店名から想像できない!? こだわり強めな焼肉店

肉好きにはたまらない! 外はパリッと中は美しいロゼ色に焼き上げた、あか牛の塊肉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

塊肉のイラストをあしらった白い暖簾が目印

京王線八幡山駅から徒歩1分の場所にある「てるこさんと門脇君」。何のお店かわからない不思議な店名が印象的だが、その正体は予約困難店として知られる肉料理店「肉山」の元店長が独立して始めた小さな焼肉店。肉好きの間では噂がジワジワ広まりつつあるものの、場所が住宅街であることやSNSなどでの情報発信を一切行っていないこともあり、食べログの点数は2025年9月時点で3.33。しかし、近隣住民を中心とした来訪者からは「ここでしか味わえないおいしさ!」という驚きや感動のクチコミが多数。今後名店となる予感たっぷりの一軒だ。

 

小関さん

「てるこさんと門脇君」。この暖簾がかかった店名から何が想像できますか? とても焼肉店とは思えませんが、今やすっかり地元ファンを獲得しています。店主の横関さんは、赤身肉ブームの立役者である吉祥寺「肉山」の店長出身で、実は私、その頃から横関さんの焼く塊肉のファンでした。塊肉を焼かせたらさすがだなと思います。2022年6月オープンで、店名の由来は店主のお母様のお名前「てるこ」さんと、イタリアンの師匠で四谷「オステリア クロチェッタ」のシェフ「門脇」さんから命名したとのこと。

カウンター6席と4~6名用テーブルが2卓で席数は最大14~18席

店内はコンパクトながら、赤いカウンターに色違いで並べたスツールなど、スタイリッシュな雰囲気。
そして何より、肉の種類や食べ方について細かく説明してくれたりと、一人一人に楽しんでもらいたいという気持ちが伝わる丁寧な接客も評判だ。

 

小関さん

駅近! そして横関さんのトーク力。オーダーが入ってからカットする手切り焼肉なので多少時間はかかりますが、手切りでしか味わえない良さがあります。

店主の横関哲也さん。“肉のテーマパーク”がコンセプトということで、常連客からは“園長”と呼ばれている

好きな肉を自由に楽しめる“肉のテーマパーク”

「好きなものを自由に選べて、時間を気にせずに楽しめる地域密着の店を作りたい。そんな思いでこの店を立ち上げました」と語るのは、店主の横関哲也さん。
それゆえメニューはすべてアラカルト、時間制限も設けていない。

また、“肉のテーマパーク”を謳い、一般的な焼肉店では見かけないようなマニアックな部位も多数ラインアップ。一頭買いしている熊本県阿蘇の「あか牛」や宮崎牛のほか、北海道で育てたラム、岩手県の牛ホルモンなど、上質な素材を各地から仕入れ、比較的リーズナブルに提供している。

メニュー板には「かっぱ」など聞きなれない部位のほか、アンティパスト(前菜)やパスタなど、イタリアン風の項目も

さらに「肉の旨みは、脂や血。“お肉をモグモグ”して肉本来の味を感じてほしい」という考えから、焼肉はどれも分厚くカット。
タレより肉が主役の焼肉をしっかりした食べ応えで堪能できるのも特徴だ。

 

小関さん

超絶おすすめするのはやはり“塊肉”。ぜひ食べてほしいです。それと意外に思うかもしれませんが、パスタ推し。塊肉は「肉山」で店長を務めていた実績があるので、火入れはさすが!の一言。パスタはイタリアンでの修業経験があり、焼肉店で出されるレベルを超えています。トリッパ、ドルチェもうまい。

イチオシは外パリッ、中はジューシーな「塊肉」

「カメノコ」100g 1,980円〜(写真は約200g)。薬味は肉専用わさびと大阪鶴橋の辛味噌

看板商品の塊肉は、濃厚な味わいが特徴の熊本県阿蘇産の「あか牛」を使用。仕入れにより部位は変わるものの、常時2種類ほどある部位から選べる。この日は、ももの中心部「シンタマ」の一部で、後ろ足の付け根部分にある「カメノコ」。脂が少ない赤身肉で、ワイルドな歯ごたえと、噛むほどに感じられる旨みの強さが特徴だ。

まろやかな塩気の広島県産の藻塩をふってから、熟練の火入れで表面は香ばしく中を半レアに焼き上げ、厚めにカットして提供。「肉をモグモグしてほしい」という横関さんの思いをよりダイレクトに感じられる一品だ。

強火でしっかり焼き目を付けて香ばしさを出し、肉汁を閉じ込める。焼き時間のマニュアルはなく 、“肉からの合図”を見極めて、その肉ごとに最適なタイミングで焼き上げるそう
 

小関さん

日によって部位は違いますが、この日は「シンタマ」でした。20~30分かけてじっくり焼き上げます。100g単位でのオーダーで、100gごとに4種類ある薬味の中から1種類選べます。「肉専用わさび」「大分の柚子胡椒」「大阪鶴橋の辛味噌」「タスマニア産のチリマスタード」から選べる方式。横関さんが焼く、外はパリッと中は柔らかくジューシーな塊肉を200gは堪能してほしいです。