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〈食いしん坊が集う店〉
食べることが好きで好きで、四六時中食べ物のことを考えてしまう、愛すべき「食いしん坊」たち。おいしいものが食べたければ彼らに聞くのが間違いなし! 今お気に入りの、“とっておきのお店”を教えてもらった。
フルアテンドスタイルで高級感アップ! 忍べる個室も増設し、より大人向けにリニューアル

「もっと気軽に、ちゃんとおいしいお肉を食べてほしい」との思いで2023年8月にオープンした「焼肉もちお」。2年が過ぎ、常連客から「プロに焼いてもらうお肉を食べたい」「南青山という場所だからハレの日デートやビジネスディナーに使いたい」などの要望が多くなり、リニューアルを決意。昨年末で一旦クローズし、2月2日にリニューアルオープンしました。早速どう変化したかをご紹介しましょう。

まずは空間。カウンターはゲストの前からサーブできるように厨房との間に通路を作り、ゆとりを持たせた6席にしました。テーブル席は外しましたが既存の2つの個室はそのままに、新たにエントランスから直接入れる秘密の個室を作り、プライベート感がぐっと増しました。赤が強調された空間は、焦げ茶をベースにした落ち着きのある色調に変え、照明もやわらかく、シックでモダンな雰囲気に。

次に自分で焼くスタイルからフルアテンドスタイルに変えました。「お客様からの要望で一番多かったのが、『せっかくのおいしいお肉はプロに焼いてもらってベストな状態で食べたい』だったのです。言われてみれば会社理念の“きっかけはテーブルから”で掲げている中に『食材を通して、産地、生産者のストーリーを知る』がありながら、扱っている『神戸牛』の肉質の良さや、生産者さんの努力や背景を十分に伝えられていなかったと気づきました。また料理人が焼くことで火入れが難しい部位もおいしく食べていただけるのではと考え、すべてこちらで焼くことにしました」と話すのは料理人であり、店長の吉田光太郎さん。

ワインも一新! 立ち上げメンバーの料理人でもあるソムリエ、山内菜那さんが新たに厳選し、お手軽なものからグランヴァンまで幅広く揃えています。その中には醸造家、江花亮央さんと造るオリジナルワイン「Maison AKI TOURNANT」も。迷ったら「焼肉もちお」と共に歩んできた山内さんにお任せあれ!
トップレベルの食材×切り手×焼き手による焼肉に陶酔

「Cut to order」のこちら、オーダーが入ってからそれぞれの部位を最適な厚さに切っていきます。本日の肉は競りで購入した仔牛を2年かけて山崎牧場が育てた「もちお号」。リニューアルを祝う最高の肉です。

まずはタン元とハラミから。「肉がおいしいから余計なものは入れません」と味付けは特製塩ダレのみ。鉄板に引く油も神戸牛の牛脂を使います。四角く揃えて切った肉の美しさにうっとり。

メイラード反応を起こすようにしっかり焼き上げるとカリッと香ばしく、歯切れも良く仕上がります。一口だけ肉のうまみを堪能したらレモンを数滴搾って後味を爽やかに。

ハラミは脂が少ないとされていますが、さすが神戸牛、塩ダレコーティングで閉じ込めていたはずの肉汁が我慢しきれず溢れ出します。“ハラミなのにハラミではない”と思わせるジューシーさに大満足。味変にはバルサミコ酢を合わせた黒ニンニクのピューレをどうぞ。

次の醤油ダレを焼く前に網も皿もチェンジ! こういう配慮はフルアテンドスタイルだからできること。気分もアガリます!

「タレ焼きは肉に塩をうって寝かせて、うまみを引き出してからもみダレに漬けるというイタリア料理の技法を取り入れています」と吉田さん。肉に“準備”させてタレの味を浸透させるとは。もはや焼肉というより“料理”です。

見事な霜降りの「トモサンカク」は、はじめにモモ肉らしいうまみを感じ、追いかけるようにじんわりと脂が広がってきます。「トモサンカク」を食べればその店のレベルがわかると言う人もいますが、これを食べれば太鼓判を押すに違いありません。
「焼きすき」でシャトーブリアンとサーロインを食べ比べ!

「シャトーブリアンとサーロインを『焼きすき』で食べ比べしてみませんか?」の言葉に飛びつきました。まずはシャトーブリアンから。表面は強火で焼き色をつけ、中はしっとりとレアに仕上げます。

「厚みがあっても噛み切れるのでそのまま召し上がってください」と促されガブリ。この分厚さなのにあっという間に溶けてなくなります。代わりに香りとうまみの余韻は長く、口福感は満載!

ここで登場したのが“スライサーのフェラーリ”と呼ばれるイタリア製スライサー「ベルケル」。生ハムのようにサーロインを薄切りにします。

薄切りにしたサーロインは片面ずつサッと炙り焼きに。返すたびに上がる炎に食欲は最高潮!

「焼きすき」は大分県産の卵「蘭王」の黄身を絡めます。薄切りのサーロインはくるくると丸めることで食感が激変! 熱さ×焦げ香×うまみの三位一体の破壊力たるや! 同じ牛で同じ味付けで同じ卵で食べ比べ、おすすめです!
焼肉店でしゃぶしゃぶ?!

「とっておきのメニューがあるんです」と、出汁の入った鍋がロースターの上に置かれ、用意されたのがまさかのしゃぶしゃぶセット。

鮪節と鶏節との合わせ出汁にタンと秋田県産のせりを泳がせます。「味の濃厚なタン先やタン下を使い、食感よく食べられるように削ぎ切りにしました。」と吉田さん。

タンは歯応えがあるのにやわらかく、出汁を吸ってうまみもしっかりと感じます。こんな専門店も羨む味が焼肉店で食べられるとは! しゃぶしゃぶのリピート確定です。

あまりにど迫力なビジュアルで思わず笑ってしまいます。「蘭王」を出汁で炊き上げた中に青唐辛子を忍ばせ、上には釜揚げしらすをてんこ盛り。仕上げにオリーブオイルをたっぷりかけ、ゼストした柚子を散らします。見た目とは逆に上品で繊細な味わい。これは箸休めに食べたい!

リニューアルでデビューしたのが「もちお冷やし担々麺」。和風出汁に胡麻ペーストを合わせたスープには贅沢にも神戸牛で作った肉味噌をドンと真ん中に。黒胡椒と五香粉と花椒をたっぷり振りかけ、コッテリに見えてさっぱりした味わいです。スパイシーな辛さもベスト!

麺は姉妹店から学んだ、塩水で茹でて塩水で洗うパスタの茹で方を継承しています。こうすると麺から水分が出ないので最後までスープが薄まることがありません。器もキンキンに冷やすことを忘れない。目に見えない配慮が抜群においしい料理にするのです。
新生「焼肉もちお」にワクワクが止まらない!

とっておきの部位を提供できるのは一頭買いだからこそですが、ここまで上質なのは生産者と深い絆があればこそ。山崎牧場をはじめとする生産者と求める肉質、目指す味、その背景にある考えた方までを、膝を突き合わせて話し合い牛作りと料理をつなげてきたから、生産者が“もちおに行く牛”と大切に育ててくれます。

おいしく焼く秘訣は“肉の音を聞くこと”。営業前に、その日に提供するすべての部位を焼いて試食し、切る厚さ、もみダレの味、焼き方、焼き時間、火力を決め、スタッフ全員で共有する徹底ぶり。ここまでしている店は類を見ません。生産者が最高品質の神戸牛を育て、その肉を最も理解する料理人が焼くことで“至高の一切れ”が完成するのです。

表参道駅を中心に店を点在させているのは“街をおもしろくしたい”から。「フルアテンドスタイルにして一番良かったのはお客さまとコミュニケーションが取れることです。何をどのくらいの量で、こんな調理法でと、お客さまの要望を叶えられるのです。中には料理人としてはNGと思う要望もあるでしょう。でもお客さまが食べたいと言うなら技術と経験を駆使しておいしくします。それが新しいメニューになったり…」と聞くと、ここに行けば何が食べられるのかとワクワクが止まりません。新生「焼肉もちお」には通う理由があるのです。
教えてくれた人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
※価格は税込


