22,000円のコースから4品ご紹介

今回料理は、22,000円(税込、サービス料なし)のコースから4品をご紹介する。

まずは造り。日本一と名高い、明石の水口商店の鯛だ。「食材そのもののおいしさを味わっていただく料理です。水口さんの目利きや、“活け越し”“活締め”といった技術の高さには敬意を抱いています」と酒井さん。

鯛は、まずは塩で。目を閉じていただくと、たこやえびなど様々な海の味が感じられる。次は浜名湖のあおさのりを使った、のり醤油を添えて

“季節や情景が見える”八寸。「八寸は季節感が一番あり、日本料理の系譜も感じられる、今後も守り継ぐべき一皿です」と。

素揚げしたモロコ、タラの芽の天ぷら、穴子の八幡巻、バターで炒めたホタルイカと菜の花、煮蛤の飯蒸し、タケノコの木の芽和え

炊き立てのご飯はエルガー作曲の「威風堂々」とともに。酒井さんが「オープニングセレモニーです。おいしく炊けたお米に感謝!」とお釜を開けるシーンもこの店の名物となっている。米は地元青森県の農家から玄米で届く青天の霹靂。精米仕立てを近所の米屋で精米し、フレッシュな状態で提供している。

インスタでも話題のごはん釜のオープニングセレモニー
「最後のご飯をおいしく食べられるように」と、ご飯のお供のおかずもバラエティ豊か。きゅうりの粕漬け、大根の糠漬け、白菜の浅漬け、自家製海藻佃煮にはバターを添えて。マグロの納豆醤油和え、蕗とレンコンとホタルイカの炒め物

こちらも〆で定番のラーメン。子供の頃に青森で食べていたようなちぢれ麺を自家製の手打ちで作成。スープは清湯。鶏、豚、牛、金華ハムなどをじっくり煮込み、脂を丁寧にとり澄みきっている。

〆にふさわしい、深みがありながらもあっさりしたキレイなスープが見事

“おいしい”だけではなく、“文化”を感じることができる料理を

2025年3月27日付で京都市芸術新人賞も受賞した酒井さん。「おいしいはもちろん大切だけど、文化を感じられる店を目指したい」と語る。

日本各地の郷土料理や生活に根付く家庭料理などからもインスピレーションを得ながら、日本文化のメッカである京都で、伝統と革新が息づく料理をこれからも作り続けていく心構えだ。

酒井さんの次の試みがどう展開するか期待大だ

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取材・文:木佐貫久代 撮影:福森公博