Best New Entry受賞店をご紹介

2025年1月29日に発表された「The Tabelog Award 2025」。初めてノミネートされた店舗の中でも特に「食べログユーザーから注目されている店」に贈られる「Best New Entry」を受賞したお店を紹介していく本連載。今回は2023年に大阪・京橋にオープンした「田中圭英」をご紹介。

日本の高級食材を中国料理の技法で

カジュアルな飲食店がひしめく京橋東商店街を数分歩くと、他とは異なる重厚な雰囲気の一軒に出会う。ここが2023年にオープンした、多くのグルマンが一度は行ってみたいと口をそろえる中国料理店「田中圭英」だ。

中国料理店とは思えないシンプルな外観。店名「田中圭英」は店主の名前。美しい鏡文字が店名に相応しい

店主の田中圭英さんは、1991年生まれで、大阪狭山市出身。TV番組「嗚呼!花の料理人」を見て、「料理人って、カッコいいな」と思い、その道を志す。大阪あべの辻調理師専門学校に入学し、洋食、和食、中国料理を経験する中で、麻婆豆腐のおいしさとコスパの良さに感動し、辻調理技術研究所 中国料理研究課程へ。同校で講師を9年務める。「生徒たちに調理技術を教えることはもちろん、料理番組のアシスタントを務めたり、教科書の編集を担当したりするなど、多くの経験をしました」。その後、天満の立ち飲み居酒屋「さんま黒焦げ食堂」でシェフを務め、一躍人気店へ。「最初、料理はアラカルトでしたが、コロナ禍で貸し切り営業となり、コース料理へ変更。今の店のスタイルへとつながりました」

「毎日料理するのが楽しみで、日々の積み重ねが今につながっています」と話す田中さん

2023年に独立し、選んだ街は京橋。「賑やかで、人同士が近しいところが気に入りました」と話す。料理は日本のおいしい食材を中国料理の技法で仕上げることを軸としている。「多くの中国料理は食べ疲れしてしまい、食後感が重いことも。だからこそ、自分の店は他との差別化を図るためにも、高級食材と言われる、とことんよいものを全国から集めています。東京では高級寿司店で使うようなネタで中国料理を作っていますよ。もっと言えば、イタリア料理のソースを使うこともあるので、もはや中国料理ではないですよね」と笑う。だからこそ、店名にはジャンルを掲げず自身の名前を選択したのだろう。加えて「何よりもお酒に合う料理をお出ししています。凛とした高級店であることよりも、わいわいがやがや飲みながら食べてみんなで楽しむこと、居心地のよさを大切にしています」と田中さんは話す。

繊細な味付けの前菜にはワインや日本酒、ザ・中国料理の炒飯、麻婆には紹興酒がおすすめ。中国では最高級のお酒とされる茅台酒やレアなお酒も多数揃う

「Best New Entry」は驚き&喜び

「Best New Entry」受賞に関しては「本当に、びっくりしましたね」とのこと。「賞がいただけるのはうれしいことです。テレビで見ていたようなトップシェフたちにお会いできてテンションがあがりました。10年後、20年後には業界の中で、アピールができればよいですよね。お客様には“田中に会いに行こう!” “友達の家でご飯を食べよう!”というくらい気楽に食事を楽しんでもらえると嬉しいです」

店はカウンターのみ。「料理はエンタメ。目の前で作って出てくるライブ感を大事にしています」