沖縄から移転した人気カレー店と欧風カレーの名店の新機軸

満を持して東京に進出。毎日でも食べたい味

8月5日、 市ケ谷にオープンした「スパイス欧風カレー PAIKAJI(パイカジ)」は、石垣島の人気店だった「ビストロ スマイル」が店名を変え、東京に移転したお店です。インスタグラムでご夫妻の移転への思いを読んで気になっていました。場所は昨年『東京最高のレストラン2024』で「今年の注目店」に選ばれたドイツ・オーストリア料理店「ドイツ・オーストリア料理 Blauer Engel(ブラウアーエンゲル)」と同じビルの1階。向かいには有名な「ミートショップうちの」が、窓からは東郷元帥記念公園を借景にしたいいシチュエーションです(今は工事中ですが)。4日間かけて丁寧に作られるフォンをベースに、スパイスを炒めていくので“スパイス欧風カレー”。おすすめの「バーグカツカレー」をいただきましたが、フォンが全体を包み込んで穏やかにスパイスを感じ、毎日でも食べたくなるおいしさ。ハンバーグに衣をつけて揚げたバーグカツのひき肉はもちろん、うちのから。職人肌のシェフと快活なマダムのコンビも良く、応援したくなるお店です。

バーグカツカレー 写真:大木淳夫

やっぱりおいしい、王道の欧風カレー

7月7日、麻布十番にオープンした「ガヴィアルプラス 麻布十番店」は、王道の欧風カレー店のフランチャイズです。神保町の本店は1982年創業で、食べログ カレー TOKYO 百名店の常連。こちらでは本店の人気メニューに加え「まかないライスレス野菜カレー」という糖質制限カレーや、黒毛和牛、黒豚、地鶏の3種の肉を使った「贅沢3種肉のミックスカレー」などもラインアップ。ランチで「有機野菜&国産アサリカレー」をいただきましたが、甘みと辛さのバランスが良く、最近のスパイスカレーの強烈さに慣れた舌には新鮮。欧風カレーの良さを再認識しました。バターと塩でいただく茹でたジャガイモがついてくるのも、うれしいところです。

有機野菜&国産アサリカレー 写真:大木淳夫

名前を変えて復活したあの老舗パスタ店と、閉店した老舗出身のカジュアルイタリアン

ファンが多い「あの店」が復活

7月23日、新宿野村ビルに「SPAGHETTI KAKEHASHI(スパゲッティ カケハシ)」がオープンしました。同ビルが竣工した1978年から46年間営業していたものの、今年6月に閉店した名店「ハシヤ」が店名を変えて復活です。新たに経営を担当するのは、ビルの大家である野村不動産系列の野村不動産コマース。グルメビルとして有名な「GEMS」を展開している会社です。ハシヤの閉店を惜しんで、同じスタッフを迎え入れての復活とのこと。お店は変わらず活況で、常連さんたちが昼からビールを飲んだりしながら、さまざまな和風パスタを頬張っていました。一度食べたらまた食べたくなるあの味と、スタッフの見事な連携プレー。無くすわけにはいかないですよね。

タラコとウニとイカのスパゲッティ 撮影:食べログマガジン編集部

日常使いできる、麻布十番のイタリアン

7月1日、 麻布十番にオープンしたワインダイニング「LA FRAGRANTE(ラ フラグランテ)」のシェフは、1987年にオープンし、この地で一時代を築いたものの昨年末に閉店したイタリアン「プレゴ」出身。「アルマーニ リストランテ」などでの修業を経て十番に戻って来ました。カウンター9席と個室という構成で、ウリはスペイン産生ハムの王様ともいわれる「ハモン・デ・テルエル」。グラスワインは700円からとカジュアルな値段なので、生ハムやペンネ、フリットなどと共に気軽に楽しめる、日常使いにいいお店です。

ハモン・デ・テルエル
ハモン・デ・テルエル   写真:お店から

いよいよ全面開業した渋谷サクラステージの注目店は?

フレンチシェフが本気で作ったピザ

最後は7月25日、ついに開業した渋谷サクラステージです。話題の中心は17店舗が連なる4階のフードホール「FOOD MET(フードメット)」でしょう。3つのエリアがありますが、注目したのは一番奥の「SHIBUYA SAKURAGAOKA BEER HALL」にある「Ciel Pizza(シエルピザ)」です。オーナーは2016年にオープンし、おいしいだけでなく、スタイリッシュなジビエフレンチとして大人気となった「ラチュレ」の室田拓人シェフ。"made in JAPAN"のピザをコンセプトにしていて、生地は小麦粉ではなく米粉を使用。チーズなどの素材も日本産にこだわっています。オーダーしたのは、まさに室田シェフらしい、猪のサルシッチャと鹿のサラミがのったジビエ感溢れる「シエルピザ」。しっかりした重みとうまみを感じられました。子供から大人まで楽しんで欲しいと、トップシェフが本気で取り組んだ新しいピザ。こういう試みはうれしいですね。

シエルピザ
シエルピザ   写真:お店から

渋谷の大人に楽しいエスニック

こちらにはアジア料理の「Stand Pho You」と多国籍スパイス料理専門店「Tipsy Tiger」もあります。どちらも3月、麻布台ヒルズマーケット内に「カム バイ スタンドバインミー」を出店したばかりの(株)ホープナーズの運営。無添加・無化調を貫き大躍進を続けています。「Stand Pho You」のフォーがおいしいのはわかっているし、夜だったのでお酒のお供に「ベトナム式『フィッシュ&チップス』うま味ねぎ油」をオーダー。「Tipsy Tiger」の「麻婆咖喱」も激しく引かれたけれど、同じ理由で「オリエンタル『スパイスピクルス』」と「ちょっぴり辛口なあの子『ウフマヨ』」を。罪悪感なく楽しめるのでお酒も進みます。

ベトナム式「フィッシュ&チップス」うま味ねぎ油 撮影:大木淳夫
オリエンタル「スパイスピクルス」、ちょっぴり辛口なあの子「ウフマヨ」 撮影:大木淳夫

知る人ぞ知る中華が渋谷に進出

永福町の人気店「中華可菜飯店」の五⼗嵐可菜シェフがメニュー監修をした「中華可菜点心」も出店です。永福町のお店はわずか10席で、夜は完全予約制・一斉スタートなので、渋谷でカジュアルに楽しめるのはいいですね。夏季限定の「よだれ鶏と自家製ラー油の冷やし中華麺」は穏やかな辛みと酸味を感じる味でした。

「よだれ鶏と自家製ラー油の冷やし中華麺」 撮影:大木淳夫

ただこちらのフードホール、完全モバイルオーダーでセキュリティは完璧だと思うのですが、その分なかなか手間がかかり、何度も注文すると大変です。まずはワンオーダーでいただけるランチ時に訪れてみることをおすすめします。

文:大木淳夫