【食を制す者、ビジネスを制す】
会社の仲間と六本木の老舗でラーメンを食べてわかったこと
自分の位置を見極める
多くの会社では4月から新年度が始まる。オフィス街では新入社員の姿や担当替えで挨拶回りをしているビジネスパーソンをよく見かけるようになる。春を迎え、自分をリセットする意味でも仕事やプライベートに新たな気持ちで挑もうとする人も少なくないだろう。
新たな気持ちになる――。そんなときこそ、自分自身が今どんな仕事をしていて、どれくらいの実力が身に付いているのか。自分を再点検するための良い機会になるはずだ。
とくに今の自分をもっと飛躍させたいという気持ちがあるのなら、自分が社会の中でどんな位置にいるのかを一度は見極める必要がある。
例えば、自分の働いている業界は今どんな状況にあるのか。成長市場なのか、衰退しつつあるのか、または成熟しているのかをまず知るべきだ。そして、自分の仕事の習熟度は今どれくらいのレベルにあるのか。会社のノウハウをどの程度得ることができたのか。または、自分は社内で今どんな状況にあるのかをじっくり吟味してみるのである。
よく誤解があるのは、大企業に勤務しているから自分も実力があると錯覚してしまうことだ。勤務経験が2~3年程度であれば、まだ自分が思っているほど会社のノウハウを身に付けていないことのほうが多い。大企業という大きなゲタをはかせてもらっていることを自覚しながら、謙虚に自分の実力を評価することが先決だ。
人はやる気次第で成長できる
これまでの仕事で、どんなノウハウを得て、その中で自分の武器となるものは何か。または今の自分に足りないものは何か。それがわかってくれば、これから自分は何をすればいいのか。その方向性がわかってくるはずだ。
意外に思うかもしれないが、仕事の能力は「立場」と「やる気」でつくられることが多い。「立場が人をつくる」というように、責任ある仕事をする立場に立って、やる気をもって真摯に仕事に向かっていれば、能力も次第に向上してくるのだ。
実は仕事ができる人ほど、人間の能力に大差がないと思っている人が多い。仕事は自分ができると思うからできるのであって、できないと思っていてはいつまでたってもできはしない。「できない」という人ほど、実際は「やろうとしない」からできないのだ。やる気を持って、実践でトライ&エラーを繰り返していれば、その時間がその人をできる人に変えていく。さらに言えば、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいれば、これまで見えなかったものが見えてくるときがある。それこそが、自分を向上させていく“気づき”を得るときだ。その段階に辿りつくためにも、目の前の仕事に没頭していくことが大切なのだ。
会社の飲み会も捨てたもんじゃない
4月になれば、新人歓迎会など飲み会も多くなる。最近は飲み会に参加しない人も少なくないと聞くが、参加すると意外とためになることもあるように思う。結局、人が腹を割って話すときは、お酒の場であることが多いからだ。日頃、嫌いな同期や上司でも、お酒を飲んで話し合っているうちに、何かのきっかけで心が通じ合うときがある。そのレベルまでいかなくても、その人が何を考えているのかを理解することができれば、その人に対する対処法を構築することができるはずだ。
そんな飲み会に参加した後は、なぜか小腹が空いてくる。同じような感覚になっている同士たちと「ラーメンが食べたい」という話になってくるのも定番コース。そんなとき、使ってほしい店がある。
それが六本木の中華料理店である「香妃園」だ。こうひえんと読む。深夜営業している珍しい中華料理店で、こちらの店では「特製とり煮込みそば」をぜひ食べてほしい。鍋で供されるこのラーメンはスープがいい。濃厚な白湯スープは胃にもやさしく感じられ、お酒を飲んだあとにホッと一息つけるやさしい味わいとなっている。ほかにもポークカレーライスなどが名物メニューとなっているから、試してみるといい。深夜のラーメンも、ここだとなぜか許されるような気がしてくる。
「香妃園」は六本木の遊び人たちに古くから愛されてきた名店で、私もバーのママから教わった。初めて食べたときは、六本木の名所の一つを制覇したような気分になって、高揚感があった。深夜になって、この店に入って、会社の仲間と瓶ビールを頼んで飲み直し、鳥そばが来るのを待ちながら話していると、闘っているのは自分だけではないという気持ちになったことがある。そのときは少しだけ自分も成長したような気がしたものだ。