【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

短期集中で関西編を全3回にてお届け。関西編最後の第3回は、稀少部位専門の焼肉店が登場。脂の質、肉の柔らかさも桁違いの肉が揃う、大阪の名店に迫る。

 

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トンビ、ホソ、カワラ…。これらが肉の部位名だと気づいた人はかなりの肉マニアだ。東京で稀少部位を提供する店が増えだしたのは、15年ほど前。牛一頭買いを謳い、当時はまだめずらしかったイチボやミスジなどをいち早くメニューに載せたのが「ぱっぷHOUSE」や「焼肉チャンピオン」だった。

 

稀少部位とは読んで字のごとく、1頭からごくわずかしか取れないレアな部位のこと。牛肉の部位は主に肩、肩ロース、リブロース、サーロイン、ヒレ、バラ、もも、外もも、ランプの9種に分かれており(東京都中央卸売市場食肉市場、食肉小売品質基準による)、その塊からさらに分類されるのだ。

大阪の天神橋に店を構える「稀少部位専門店 やまむら」は、店名に違わず、店主のお眼鏡にかなった稀少部位だけを提供する焼肉店。肩ロースのなかでも首に一番近く、美しいサシが入ったクラシタや、牛一頭からわずか2kgしか取れないヒウチ、関西では“ヘレ”の名称で親しまれているヒレなど、脂の質も肉の柔らかさも桁違いの肉だけを揃えている。

アメリカ牛の輸入規制緩和以降、市場では赤身の肉が圧倒的な人気を集めているが、やまむらが一貫して追求するのは霜降り肉。

 

「サシが入った肉は脂がこってりしていて量を食べられないという人もいますが、脂と赤身のバランスこそが肉の個性。脂の甘さやとろけるような食感を楽しめるのは霜降り肉ならでは。最近、牛は銘柄で選ぶ時代とよく言われますが、有名無名問わず日本のブランド牛が増えているいまだからこそ、部位で選ぶのが新しい潮流になりそうです」と店主の山村 寛さん。

やまむらでも安定して指定部位を仕入れられるようになったのは10年ほど前からのことで「部位指定ができるのは卸業者との密な関係性がある証拠」と胸を張る。

 

ひと昔前は焼肉店でのメニューは、カルビ、ロース、タン塩、ホルモンとシンプルだったが、いまは選択の幅もグッと増えた。それも焼肉人気が再燃した理由のひとつと言えるが、部位で店を選ぶのも、なかなかツウな楽しみ方だ。

ちなみに、やまむらでは7種前後の肉を盛り合わせにした食べくらべコースを推奨。サシの入り具合や肉の柔らかさ、歯ごたえ、香りなど個性が異なる稀少部位を5,000円(1人前)で堪能できるとは、さすが食い道楽の大阪だ。

 

関西焼肉のメッカとして知られる鶴橋もいいが、せっかくならばさらに“稀少”な肉を目指してみてはいかがだろうか?

 

写真:富澤 元

取材・文:小寺慶子