〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、食べロググルメ著名人・山本憲資さんが教えてくれた京都・祇園の「UDON MAIN(うどん メーン)」。“スパイスうどん”という京都うどんの新派を創りだした店の看板メニュー「ペッパー燻製鯖うどん」を紹介する。

教えてくれる人

山本憲資

Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、Sumallyを起業、2023年10月末に代表を退任し顧問に就任。食だけでな、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

スパイス×うどん、斬新な組み合わせの理由

京都・祇園にある新門前通は浄土宗総本山知恩院への参拝道で、骨董品店や古美術商が軒を並べる京都らしい情緒ある通りだ。ここにあるのが「UDON MAIN(うどんメーン)」。間口がとても狭く、見落として通り過ぎてしまいそうなほど街に溶け込んでいるが、箸で持ち上げたうどんをモダンに描いた白い暖簾が目印。オープンは2018年。いわゆる“はんなりした”京都のうどんとは一線を画した、インパクトのある斬新な“スパイスうどん”に出会える一軒だ。

元は建具屋だったという情緒ある古民家

築120年の古民家をリノベーションした店内は、懐かしさを感じる古さとモダンな新しさが混在しつつも独特の世界観がある。テーブル席からは、鉢植えのみを扱う田中美穂植物店がデザインした坪庭が見える。

靴を脱いでゆったり過ごせる店内

店内の古箪笥の上にはガラスポットに入ったクローブやシナモンなどのスパイスが、床の間に置かれた干菓子用の菓子木型の上にもスパイスがさりげなく置かれている。「自分の趣味というよりも、店の空間に合ったものを選んで置くようにしています」と店主の深田周平さんは話す。

テーブル席から見える坪庭
店内にはスパイスが

深田さんの経歴はかなりユニークだ。大阪の印刷会社で営業マンとして働いていたが、自分で商売をしてみたいと仕事を辞める。「京都生まれですが、高校は舞鶴、大学と就職先は大阪で、あまり京都を知らない。そこでまずは京都を知ろうと考えました」。今の店からほど近い古川町商店街で空き家活用を企画&プレゼンし、起業の手伝いをして商店街の活性化に努めたり、綿菓子専門店の立ち上げを行ったりした。その間に自身の店の方向性を考えていた。

1987年生まれの深田さん。「いろんな人に関わっていただいて、今の店があります」

「祖父が長年中国料理店を、親戚もおでん屋を経営していて、飲食の世界に自然とひかれました。元々スパイスが好きだったことと、飲んだ後の〆はラーメンではなくうどん派だったので、スパイス×うどんは面白いんじゃないかと。両方、日常にあるものだけど、掛け合わせで非日常にできると考えました」。特に料理店で経験を積むことはなく「すべて本で学びました。だしなどは自分たちの割合で作っています。工業高校出身でものづくりは慣れているので、根気よく何パターンも試作して今の味にたどりつきました」と話す。今は母と二人で店を切り盛りしている。「僕は感覚でスパイスを合わせたりしていましたが、それではダメだと母がスパイスインストラクターの資格をとって、理論的にスパイスの組み合わせのバランスを図ってくれています」

 

山本さん

スパイスとうどんの組み合わせが面白そうだな、と思い、京都に行くタイミングで寄りました!